マルシン S&W M439 シューティング・ディバイス マークI
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
最初にお断りしておかなければならないが、今回紹介するのはエアガンではない。マルシンのS&W M439は、プラグファイヤーカートリッジに7mmキャップ火薬を装填して発火ブローバックさせる、れっきとしたモデルガンである。ではどうやってBB弾を発射するのかというと、スコープマウントのような造形でグリップ側面に装着されたBB弾発射ユニットを使う。つまりはこれが「シューティング・ディバイス」というわけだ。
メカとしては、スプリングによってBB弾を弾き飛ばす、言わば銀玉鉄砲のような仕組みだが、そのオペレーションをモデルガンの発火ブローバック作動によってまかなうというのがポイントだ。だが残念なことに、このシューティング・ディバイスなる物はほとんどまともに作動しない。ストライカースプリングが強すぎるため、キャップ火薬のパワーでスライドを動かすことが出来ないのだ。どうしてこんな不完全な製品を売り出してしまったのか、いま思うと首をひねるばかりだが、同じくモデルガンのブローバック作動とBB弾の発射を併用した、コクサイのスーパーウエポンM16A1を思い出さずにはいられない。あれも本当に困った製品だったが、逆に言えば、各モデルガンメーカーが必死になってBB弾が撃てるトイガンを開発していたという事になる。当時はまさにエアガンブームが大きくふくれ上がってゆく過程だったのである。
ただしひとつ言えるのは、モデルガン時代からマルシンは常に先進的かつ革新的なメーカーだったという事だ。このシューティングディバイス以降も、ライブカート式ガスブローバック、電動ハンドガン、8mmBB弾と、他のメーカーに先駆けて新しいシステムを開発するのはいつもマルシンだった。その歴史の中にこうした迷作が存在したというのは、実に興味深い事なのである。
何と言うか、少し古い時代のレーザーサイトのような、旧式光学照準器っぽい雰囲気のシューティング・ディバイス。上にマウントされているのがドットサイトではなく、スコープ(ダミー)というところが時代を感じさせる。
筒状のパーツが3つ並んでいるが、真ん中がBB弾発射用のバレル。内部に真鍮パイプが入っており、スプリングで弾き飛ばすだけなので抵抗にならないよう内径は7mmほどもある。モデルガンとしてのバレルには板状のインサートが見える。
ダミーのスコープには素通しの透明プラ板が入っているが、これが曇りガラスのようでほとんど前が見えない。
取り外されたシューティングディバイス本体。チューブラーマガジンに8発のBB弾が装填出来る。プラグファイヤーカートリッジの装弾数も同じく8発。
裏側を見るとシューティング・ディバイスのBB弾発射機構が現れる。この松葉バネで直接(!)BB弾を弾き飛ばすのだ。撃つ、という感覚からはほど遠いということがお分かり頂けるだろう。
その松葉バネを引っ掛けて押し下げるのがスライド上のこのパーツで、スライドが後退しきる直前にバネが外れBB弾を弾き飛ばす。しかし松葉バネが強すぎてキャップ火薬のパワーではブローバックせず、このままの状態で作動するという事はほとんどなかった。
エジェクションポートから真鍮製カートリッジが見える。マルシンの名誉のために記しておくと、モデルガンとしてのM439自体の出来は素晴らしく、ダミーながら実銃通りのショートリコイル機構を再現したメカは今もって伝説的とも言える名作である。
スチールプレス製のマガジンと真鍮製のプラグファイヤーカートリッジ(P.F.C)。後のモデルガンでは当たり前となった閉鎖系カートリッジはこのP.F.Cが元祖なのだ。
当時のコンバットシューティングを彷彿とさせるパッケージ。後に安価なキット版も発売され、さらに第二弾のMARK IIはワルサーP38だったが、進化し続けるエアガンに敵うはずがなく、残念ながら生産中止となってしまった。
モデルガンとしての取り扱いとBB弾発射に関する解説が同時に進行するマニュアル。パーツリストを見ると、シューティングディバイス単体の価格は1,000円とかなり安い。
manual.pdf
(3MB)
DATA
発売年 | 1984年初頭 |
発売時価格 | ¥7,500 ¥4,900 (キット) |
全長 | 実測 194mm |
重量 | 実測 610g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | スプリング式ストライカー |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 8発(BB弾、P.F.C.共) |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
■関連リンク
ビンテージ エアガン レビュー TOP
トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 -
モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史
考察 ブローバック・ガスガン