マルコシ SIG P210
写真&解説 YAS
解説
スイスで誕生した銃器メーカーSIGはその後ドイツ資本と合併、現在では米国にも現地法人を置くSIG SAUERとして知られるグローバル企業だ。米軍の拳銃トライアルにも参加しており、一度はベレッタに敗れたものの、2017年には米軍の新拳銃トライアルを勝ち取ってSIG P320がM17/M18として制式採用された。
P210は1940年代にSIGによって開発された拳銃で、P49としてスイス軍に制式採用もされている。その工作精度は高く評価されるも価格が高く、多くは売れなかったようだが、その後各国の自動拳銃や後継モデルのP220に多大な影響を与えた。
マルコシのSIG P210は1988年に発売された。このときすでに東京マルイから1900円シリーズのエアコッキングハンドガンが発売されており、その高性能さはエアガン市場に大きなインパクトを与えていた。これを意識しての同価格1900円ではあるが、プルコッキング式のマルイに対して、マルコシはプッシュコッキング式を採用している。
本シリーズは翌年にCz75スーパー、コルトガバメントM1911A1、ベレッタM93Rといったモデルが各1900円で発売され、タカトクから引き継いだUX スーパー9とともにマルコシ製品の一角を支えた。
レトロな雰囲気のあるスタイリング。スライドがフレームに包み込まれるようなデザインはCz75にも影響を与えたといわれている。本シリーズの第二弾はCz75だったが、やはりモデルチョイスがマイナーすぎたのか、ガバやM93Rといった当時の人気モデルも発売することになる。
インナーバレルはアルミ製。スライドとフレームは樹脂製で、レフ版が写り込むほどの艶やかな黒だ。
リアサイトはUノッチの固定式。リアサイトベースにスイス国章の刻印がある。ハンマーはスライドの後退にあわせ可動はするがコックされないダミー。プッシュコッキング式なので、スライドセレーションが小さくても操作に問題なし。
スラっと伸びたスライド上面にはチャンバーより前側だけ反射防止グルーブがある。
アルミプレートのエジェクションポートはいかにも動きそうなリアルさだが、スライドに貼られて一体となっている。刻印は9mmパラベラム弾仕様。
左側グリップ横にセーフティレバーがある。レバーを上にスイッチすればトリガーロックとなる。
トリガーは樹脂製でトリガープルは3.4kg。スライドキャッチはモールドのダミー。
トリガーを引くとパコンッと音を立ててBB弾を発射し、同時にスライドが後退する。疑似ブローバックともいえるプッシュコッキング式は撃っていて楽しい。ここからスライドを押して戻すが、片手よりも両手の親指で押し込むのが楽だ。
マガジンは装弾数12発。フォロアーを下げきるとロックする。BB弾を入れて本体にセットし、マグバンパー下の突起を押せばフォロアーが解除されてBB弾がサブマガジンへと流れ込む。
グリップは艶のある飴色の樹脂製で左側にはランヤードリングがある。マグキャッチはグリップ底部にあり、実際にマグバンパーをロックする機能がある。
サブマガジンには常にBB弾が入った状態になる。エアポンプとチャンバー、マガジンの位置関係上、エアガンならではの構造となっている。マルイのM40A5など、現在のモデルでも稀に見かける仕組みだ。
0.2g弾にて実射してみたところ、距離5mで山なりに飛んで10cm程度にまとまる。パワーは0.135Jとギリギリ18歳以上対象だ。ホップなしなので、もう少し軽い弾を使用するのが実用的だろうが、マルイの1900円シリーズに対抗できるほどの精度はある。
ただ、サブマガジン構造とリップの無いマガジンは相性が悪く、撃ち終わってマガジンを抜くと劣化からかサブマガジンから弾がこぼれてくるし、かといって銃を逆さにしてマガジンを下向きリロードしようとするとリップがないので弾がこぼれてしまう。
総合性能で勝るマルイのマガジンは後にリップ付きに改良されたが、マルコシは改良されないままメーカーが廃業してしまったのは残念だ。
実に魅力的なパッケージ写真。SIGとデカデカと謳っているのは80年代ならでは。
付属のBB弾は同社つづみ弾をほうふつとさせるマットホワイトで重量は約0.12gだ。
マニュアル.PDF (4.6MB)
DATA
発売年 | 1988年秋 |
発売時価格 | ¥1,900 |
全長 | 実測 220mm |
重量 | 実測 243g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プッシュコッキング式 |
使用弾 | 6mm弾 |
装弾数 | 約12発 |
平均初速 | 36.73m/s (0.2g、0.135J、25.7度) |
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