MGC Cz75
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
トイガンの世界では、実銃の人気が高く、たとえガンファンから製品化を熱望される機種だとしても、そう簡単に実現できないというケースがまれにある。
今回紹介するCz75がまさにそれで、1981年に月刊Gunとコンバットマガジンの両誌で実銃が紹介され、さらにとどめは1983年のコンバットマガジン、永田イチロー氏の鮮烈なレポートでその虜になった、というガンファンも多いはずだ。
当然、遠からずトイガンとして発売されるだろう、と思われていたわけだが、そこから実に約5年間、どこのメーカーも手を出さなかった。
もちろんそれには理由があり、極限までぜい肉を削り落としたCz75の形状、つまりは「薄さ」がネックだったのだ。ましてや1980年代前半はモデルガンの全盛期。キャップ火薬のブローバックに耐えられるようなフレームやスライドをABS素材で量産するというのは、技術的に難しかったのだろう。
追い風が吹いたのはモデルガンブームが去った後。MGCベレッタM93Rの爆発的ヒットにより、「スライド固定式ガスガン」というジャンルが定着したことで、やっと日の目を見ることができた。スライドが動かなければ、実銃通りのサイズで薄く作ることができる。
かくして固定スライド式Cz75はヒット作となったが、発売から1年後には、タナカがガスブローバックのコルトガバメントを発売。MGCはそれを追うように名作グロック17を世に送り出すわけだが、その後のガスブロブームに、Cz75はまたも取り残されてしまう。
Cz75はいつブローバックするのか、という期待が高まる中、MGCはなかば見切り発車でガスブロ化に踏み切った。しかし初期の製品はあまり快調とは言い難く、作動にじゅうぶんな容量のブローバックエンジンを内包するには、やはりCz75のスライドは不向きだったのかもしれない。
その後、MGCの倒産により、KSCが製造販売を引き継いだのは周知の通り。だが結局、Cz75が完璧な作動性能を手に入れるには、システム7の搭載まで待たなければならなかった。
この固定スライド式Cz75を見ていると、「遅咲きの名銃」という文句が頭に浮かぶ。改良を重ねながら長きにわたりトイガン界に残り続けたというのは、名銃の証しともいえるのだ。
初期の製品はABS製でよく磨かれたグロスブラックだったのだが、この個体は1993年にリメイクされたヘビーウェイト樹脂製のためサテンフィニッシュ。実銃における初期型のショートレールモデルもMGCはツヤ消しで再現しており、一部のガンファンには評判が良くなかったようだ。
アウターバレルはメッキ仕上げで、このHWモデルのインナーバレルにはサイクロインバレルが搭載された。これについては過去にも触れたが、命中精度が高いというメーカーの説明を信じる者はほとんどいなかった。
大型のリアサイトと、特徴的なスライドとフレームの噛み合わせがよく再現されている。バルブのストライカーユニットが刷新され従来より作動性が高まったが、ファイアリングブロックが亜鉛地肌のままというのはいただけない。
美しい曲線を描くエジェクションポートと、ダミーとは思えないエキストラクターのモールドが素晴らしい。このへんの仕上がりはさすがMGC、といったところだ。
実銃としては後期型にあたる、スライドの噛み合わせ部分が長いセカンドモデル。刻印されているのは通し番号ではない。
外周のパーティングラインが消されたトリガーガード周辺の形状も実に独特だ。実銃をしっかりと取材したことがよくわかる部分。
Cz75はダブルアクションでありながらコック&ロック。軍用銃としてはこの当時でも時代遅れの機構だったが、コンバットシューティングの第一人者であるジェフ・クーパー氏が絶賛したことで、一躍人気に火がついた。
マガジンはスチールプレス製で、内部にはアルミ製の軽量化タンクが採用されている。この頃すでにMGCはリキッドチャージマガジンの安定性能を確立していた。
DATA
発売年 | 1988年2月25日 (Cz75) 1988年5月27日 (Cz75 コンセントレーター) 1993年4月中旬 (ヘヴィーウェイト&スーパーブラックモデル) |
発売時価格 | ¥11,000 (Cz75) ¥24,000 (Cz75 コンセントレーター) ¥4,300 (木製グリップ) ¥14,000 (ヘヴィーウェイト&スーパーブラックモデル) |
全長 | 実測 205mm |
重量 | 実測 587g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 22発 |
平均初速 | 56.8m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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