MGC ボランド・ロング・コンプ
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
当時、アメリカのガンスミスであるジム・ボランドを日本に紹介したのは、イチローナガタ氏だった。モデルガンチャレンジャーという雑誌の中でたびたび特集が組まれ、むさぼるように読んだというオールドガンファンも少なくないはずだ。
なにを隠そうボクもその一人なのだが、特に、フルチェッカリングのスチールグリップが装着されたボランドスーパーカスタムには、ジムボランドカスタムの中でも特に鮮烈な印象を受けたものだ。
MGCとしても、ジムボランドカスタムをモデルアップするなら、ボランドスーパーカスタムを作りたかったのかもしれない。しかし、ご存知の方ならお分かりの通り、アレを量産品として製造するのはかなり難しかったのだろう。結果的に、フレームを他の1911系と共用できる、ボランドロングコンプに落ち着いたのだとすれば納得がいく。
本ガスガンの機構は、ウィルソンLEから続く、ハレットアクションのスライド固定式ガスガンだ。いわゆるGM6と呼ばれるシリーズだが、この一連のモデルが、ジャパンビアンキカップやジャパンスチールチャレンジなど、エアガンのシューティングマッチに多く使われていた時期もあった。
競技用として考えた場合、本モデルのキモであるロングコンプは、文字通り無用の長物になってしまう。全長があるぶん、ホルスターからのドロウが遅れるし、ロングバレルにするメリットもあまりない。唯一挙げるとするならばサイトレディアスが長くなることだろうか。
かといって、プリンキング用にしては高価すぎ、観賞用として考えると、スライドが引けないのはいまひとつ魅力に欠ける。なんといっても、ボランドカスタムに憧れを抱いていたのは、熟年層のモデルガン世代が多かったのだ。
エアガンとしては中途半端なイメージがついてしまったが、豊富なバリエーション展開、というのはMGCのお家芸。その後、限定生産ではあったがモデルガン化もされ、最終的には、オールドガンファンの溜飲をも下げる結果となったのである。
ショートスライドにロングコンペンセイターという、実銃が持つ速射型コンセプトがよくわかるデザイン。スライドの独特な造形や、各パーツの仕上げの良さなど、MGCカスタムの熟成期を感じさせる1丁だ。インナーバレルにはサイクロンバレルが採用されていた。
特徴的で複雑なコンペンセイターの形状を、様々な角度からよくご覧いただこう。これを再現するのはかなり難儀だったと思われるが、惜しむらくはプラスチック製だということだ。つい、アルミ製だったなら、などと思ってしまうが、コストを考えると仕方ないのかもしれない。
エッジの立ったトリガーのグルーブ、丸く削られたスライドストップなど、ボランドカスタムのディテールがうまく再現されている。
リアサイトはボーマーではなくウイチタ。ファイアリングピン周りの再現性もなかなかのものだ。
特徴的なホーンのハンマーと、それを収めるグリップセフティ。このモデルのためだけに金型を起こしたと思われる部分。ハンマーの軸にはベアリングを内蔵している。
MGCはマガジンのリアルさにもこだわっていた。38スーパーならではの絞りのラインもしっかりと再現されている。マグバンパーは青と黒のふたつが同梱されていた。
GM6のシリーズは明るいイメージのパッケージが多かったが、本モデルではかなりシックなデザインになっていた。ちなみにBOLANDの呼称だが、当時のMGCの広告ではボウランド・ロングコンプ、マニュアルではボランド・ロング・コンプと表記されている。
MGCらしい、丁寧でわかりやすいマニュアル。この当時はまだ全国に7店舗もの直営店があった。
マニュアル.PDF (11MB)
DATA
発売年 | 1990年12月下旬 |
発売時価格 | ¥21,500 |
全長 | 実測 273mm |
重量 | 実測 841g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
■関連リンク
ビンテージ エアガン レビュー TOP
トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 -
モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史
考察 ブローバック・ガスガン