JAC AR15A2ショーティ
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
1993年、JAC初のガスブローバックとして発売されたブローニングハイパワーMkⅢの第二弾となる製品に、JACはAR15A2ショーティという人気モデルをチョイス。JACのお家芸ともいえるM16シリーズを展開することで、拡大する電動ガン市場に対抗しようとしていた。
本製品の仕様そのものは、なかなか豪華なものだ。アルミダイキャスト製のリアルな上下レシーバーにスチール製のアウターバレル、ハイパワーのメカを継承した大型化されたブローバックユニットは真鍮の削り出し。飛距離約100mを謳うスーパーシュート(SS)システムによるホップアップ機構を搭載、リキッドチャージ式マガジンの採用によりホースレスを実現していた。
しかし、鳴り物入りで発売され、エアガンファンたちが求めていた要素がビッシリと詰まっていたはずなのに、商業的には成功しなかった。
そこには、サバイバルゲーマーを主体とする多くのガンファンが求めるものと、メーカー側が日々開発を続ける目標との間に、大きなズレが垣間見える。
当時、長物ガスガンといえばフルオートのBV式が一般的だったが、本製品はセミオート射撃のみ。
しかも、装弾数は40発と少なく、マガジンの価格もBV式の数倍、1本500g以上もあるこの重いリキッドチャージマガジンを何本も携帯することは、当時のサバイバルゲーマーにとって、なにもメリットが感じられなかったとしても不思議ではない。(BV式ではマガジンを数百発の改造仕様にするゲーマーが多かった)
結局、長物でガスブローバックを実現する、というメーカーの強い思いだけが先走りし、ユーザーが置き去りにされてまった。電動ガンが一般化しつつあった過渡期には、こうした製品もあったのだ。
フルアジャスタブルリアサイト、ケースディフレクター、ヘビーバレル、リブ付きリトラクタブルストック、フィンガーチャンネル付きグリップなど、M16A2カービンの特徴があますところなく再現されている。上下レシーバーはアルミダイキャスト製で、当時としては最高級クラスのエアガンだった。
刻印は民間用のスポーターモデルを再現。セレクターモードはSAFE/FIREで、実際の射撃もセミオートオンリーだった。当時はまだガスブローバックユニットの燃費効率が悪く、リキッドチャージ式でフルオートを実現するには冷えの問題など、多くの技術的課題があったのだろう。
その後、本シリーズで発売されたM16A1ではセミ・フルオート射撃となった。
ヘビーアウターバレルはスチール製のため、この個体では真っ赤にサビてしまっているが、それがかえって迫力を増している。
リアサイトは上下左右のフルアジャスタブル。もっともM16A2らしい部分でもあるため、ここがしっかりと再現されているのはうれしいポイントだ。
グリップ内は実銃通り空洞、ストックチューブ下部にホースジョイント穴の名残があるが、外部ソースとどこにも連結しない、完全ホースレスが実現された。
ハンドガード内にはアルミライナーこそないが、ダミーのガスチューブも配置されてかなりリアルな雰囲気。
ブローバック時、ボルトはカバーのみが後退し、真鍮製のユニットはそのままの位置に残ってしまう。現代の感覚からしたら中途半端な感じだが、撃ち終えたらホールドオープンするだけでも、当時は衝撃的だったのだ。
チャージングハンドルを引いて装填する、という実銃通りの操作が体感できる。
約530gもある重いマガジン。内部スペースのほとんどがガスタンクのため、装弾数は40発とサバゲー用としては物足りなかった。グリーンガスレギュレーターをマガジンサイドに連結するGマガジンホルダーが発売され外部ソース化するという本末転倒な展開もあった。
マガジン背面のバルブと、上面ガス放出口のレイアウト。リップまで金属製で頑丈だったが、予備マガジンを揃えてまでサバゲーに使うユーザーは少なかったはずだ。
DATA
発売年 | 1993年6月19日 (AR15A2ショーティー) 1993年秋 (M655バーンズ、XM177E1、M16A1ベトナム) 限定発売 1993年秋 (AR15A2 H-BAR フロントライン特別モデル) 1993年12月中旬 (M16A1先行発売) 1994年4月 (M16A1) |
発売時価格 | ¥49,800 (AR15A2ショーティー) ¥49,800 (M655バーンズ、XM177E1、M16A1ベトナム) ¥69,800 (AR15A2 H-BAR フロントライン特別モデル) ¥49,800 (M16A1) |
全長 | 実測 758mm/843mm(ストック伸長時) |
重量 | 実測 2,998g |
バレル長 | スペック値 300mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガスブローバックセミオート |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 40発 |
平均初速 | - |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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