ハドソン トカレフ T-33
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
トカレフのトイガンが最初に製品化されたのは、昭和40年代前半、中田商店の金属製モデルガンがそのルーツである。実に半世紀年以上も昔の話だが、上野アメ横のミリタリーショップとして有名なあの中田商店が、かつてはモデルガンメーカーでもあったのだ。
その後、ハドソンがプラスチック製のモデルガンを発売したのが1990年代前半頃、さらにそれをガスブローバックのエアガンとしてリメイクしたのが本銃、ということになる。
ハドソンの倒産後、トカレフはKSCが内部機構を大幅に改良してリメイク、正確な作動を誇る製品に生まれ変わったのは読者のみなさんもご存知の通り。しかし、ハドソン時代のトカレフは残念ながら調子がいまひとつだった。
ブローバックエンジンはマルゼンとの技術提携をおこない、アドバンスシュートシステムを基にしたものだが、量産品を調子良く作動させるためにはやはりノウハウが必要だ。ガスブローバックハンドガンの製造が初めてのハドソンにとって、完全な製品を作ることはかなり難しかったのだろう。このトカレフのオーナーで本企画の協力者でもあるサタデーナイトスペシャル氏によると、「当時、新宿にあったハドソン本社で修理された製品が、早稲田のショップに戻ってくるまでの間に壊れていた」なんていうエピソードまであるほどだ。
販売店としては笑えない話だろうが、モデルガン時代から、ハドソンの製品はまともに動かないのが当たり前だった。たとえ商品名にブローバックと冠されていたとしても、それはあくまでも「ブローバックする可能性がある」ということであって、箱出しでいきなり調子良く動くなんて思ってはいけなかったのだ。
そんなバカな、と若い読者は思うだろうが、それでもなお、ハドソンには熱狂的なファンが多かったのも事実だ。なぜなら、以前紹介したジェリコ941のように、他のメーカーならまず選ばないマイナーな銃を積極的にモデルアップし続けて来たからだ。
このトカレフも、ハドソンだからこそ製品化できたと言えるわけで、ボクのようなオールドガンァンとしては、まず先に感謝の気持ちが来てしまう。まともに動かないことなどどうでもよく…、は、ないのだが、KSCのシステム7による快調なトカレフが手にできるのも、ハドソンの大英断とこの失敗作があったからこそ、なのである。
きわめてシンプルなデザインのトカレフ TT-33。基本的なメカニズムはコルトM1911のコピーだが、旧ソ連らしい簡素化が随所に見て取れる。ハドソンは実銃の持つその素っ気なさを見事に再現している。
ボディはハイパープラスチックと呼ばれるHWとABSの中間比重の樹脂製で、作動させると金属っぽい音がするというのがウリだった。ABSのシルバーモデルやHWモデルもその後発売された。
マズルブッシングとフロントサイトは金属製。アウターバレルには4条のライフリングがモールドされている。
リアサイトも金属製で実銃通りアリ溝にはめ込まれている。スライドのセレーションが独特。
フィーディングランプとマガジンリップの関係性は装填性能の良さそうなデザインだ。
チャンバー上にトリムスクリューがあり、分解せずに付属の六角レンチで回してホップアップ調節できる。
トカレフにはセフティが存在しないが、エアガンオリジナルのセフティとして左グリップパネル上にステンレスのパーツがあり、押し下げるとセフティが掛かる仕組み。
スライドストッププレートがステンレス製というのはかなり不評だった。マガジンキャッチのネジもなぜかメッキのプラスネジで、このあたりのディティールはかなり甘い。
亜鉛ダイキャスト製のマガジン。ガスはボトムプレートをずらして注入する。リップ部が別パーツになっており、バルブまわりのデザインはマルゼンのものだ。
シンプルなトカレフのパッケージ。文字のフォントがロシアっぽい雰囲気でなかなか良いではないか。
この頃になると、ハドソンのマニュアルもかなり詳細で親切な物になっていた。モデルガン時代から比べれば雲泥の差である。manual.pdf (5MB)
DATA
発売年 | 1999年夏 (HPブラックモデル) 2002年夏 (HWモデル) |
発売時価格 | ¥16,800 (HPブラックモデル) ¥18,600 (ABSシルバーモデル) ¥18,000 (HWモデル) |
全長 | 実測 193mm |
重量 | 実測 562g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | ガスブローバック |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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