田村トレーニング・センターで本気の戦術訓練を体験

田村トレーニング・センターで本気の戦術訓練を体験

「YAS隊長、ショージです。丸さんとTTCでフルボッコされて喜んでおります!!」

ある日、YASのケータイにサバゲーのチームメイトからこんなメールが届いた。
40を超えた良いおっさん達がCQBで完膚なきまでに叩きのめされて喜んでいると言う。
なんというドMな心理状態か? メールを受け取った直後はそんな思いだった。

TTC=田村トレーニングセンター。田村装備開発の田村氏とは2010年の新春ブラックホールでご挨拶をさせていただき知っていた。その元警察特殊部隊に所属していた田村氏が埼玉県東松山にCQBのタクティカルトレーニングセンターを立ち上げたと言う。

"初級"と書かれたパッチチームメイトに「YAS隊長もぜひ!!」なんて言われて、実際問題、どうなのよ? というのが正直なところだった。サバゲはサバゲ。その内容はどちらかと言うとレジャーに近い。
なので、訓練なんか楽しいのかぁ?、なんて漠然とした疑問を持っていたのだが、チームメイトが次々とTTCの訓練に参加し、"初級"と書かれたパッチを付け始めた。田村装備開発独特の黒いワッペンを付けているメンバーもやたらと増えた。うーむ...。

TTC ラペリングタワーここまでくると何かあるに違いない、と思っていたところに乙夜さんからトドメのメール。
「今度の土曜日TTCで戦術訓練、一緒に受けませんか?」
この絶妙なタイミング、チームメイトに連絡したらやはり同日に訓練参加するようだし、ここで参加するしかないと決断し、TTC戦術訓練に参加することにした。

関越道、東松山インターから15分。敷地内に入ると、すぐさま特徴的なラペリングタワーがお出迎え。
このラペリングタワー(=ラペ塔)でおこなう訓練を「潜入訓練」と呼んでいる。

この日はラペ塔は使用せず、併設されたCQBハウスにて「戦術訓練」と呼ばれるCQBトレーニングが実施された。
代表取締役の田村氏(左)と、長田教官(右)田村装備開発株式会社の代表取締役の田村氏(左)と、長田教官(右)。
田村氏は埼玉県警特殊部隊の出身、また長田教官は陸上自衛隊特殊作...もとい特殊部隊の出身。
さらにこの日、このお二人以外にも二名の現職の自衛隊教官が指導にあたった。
なんという贅沢な訓練。たしかにこんな豪華な講師陣に教えてもらうことはなかなかない。
田村教官から心構えも含めて、各種説明訓練開始前に田村教官から心構えも含めて、各種説明がある。
この日は全員で9名の参加となった。
参加メンバーはサバゲーをするユーザーもいるし、現職自衛官も混じっていたりする。
ここらへんから結構みんな本気モードで緊張感が漂う。
解説ビデオを観るその後、参加者みんなで本日やる戦術訓練の解説ビデオを観る。
エアガンのゼロインその後、使用するエアガンのゼロインを各自黙々と行う。
チームメイトが普段のサバゲよりも真剣なのが観ていて面白い。決して私語を禁止されているとか、そういうのではないが、なんか真剣なんだよね。
CQBハウス
CQBハウス。それほど広いと言うわけではないが、一般的なインドアフィールドといった感じ。

マズルコンシャスを徹底的に学ぶさてさて、訓練開始。
午前中の訓練は9名を初心者チームと経験者チームに分けて実施された。
YASはもちろん初心者チーム。まずは銃器の取り扱い、銃口の向きに注意を払うと言うこと、つまりマズルコンシャスを徹底的に学ぶ。実銃を取り扱うがごとく、ロード、アンロード(弾薬の装填)をバディ同士で確認しながら行い、レディならば手を上げる。
7m先のスチールプレート射撃訓練をする。
ターゲットは7m先のスチールプレート。
バイタルゾーンを模した長方形のプレートと、頭部を意識した丸いプレート。
身長178cmの人物を想定している高さ。
ボディに2発のダブルタップ、ヘッドに1発メインウエポンとサイドアームでスタンディング、ボディに2発のダブルタップ、ヘッドに1発の順で射撃を行う。

射撃はすべてセミオートで撃つ。
ハイサイクルで弾幕を張りたい、とかいうのは無しみたい。
ハイ、ミドル、ローの3ポジション射撃
次にハイ、ミドル、ローの3ポジションで射撃を行う。射撃姿勢は任意だが、教官の掛け声で例えばローならば腰から下で撃たなくてはならない。7mとはいえ、しっかり狙わないと、ヘッドショットを外すこともある。

歩きながらの射撃訓練続いて歩きながらの射撃訓練。
教官の掛け声で前へ後へ移動しながら撃つ。
簡単そうに見えて意外と難しい。こうやってターゲットを狙う分には自分のタイミングで撃てるが、実戦において敵が反撃してくる中、下半身の状態にかかわらず常に動きながら正確な射撃を行うのはかなり難しい。
S字に歩きながら中央のターゲットにヘッドショット
さらに、次はドアを開けて侵入し、S字に歩きながら中央のターゲットにヘッドショットを繰り返すという射撃訓練。プレッシャーを与えるためにタイムを計測される。これが緊張して外しまくるのだが...。
また、訓練生に見えないように教官が障害物を配し、そこへ1名づつ突入し、どこに設置されているかわからないターゲットプレートに臨機応変に射撃を行うという訓練も実施した。



ドアロックやドアエントリー経験者チームはドアロックやドアエントリーのテクニックを学んでいた。

さすが経験者、皆メモを取っている。
TTCで戦術訓練をするならばペンと手帳は持っていったほうが良い。
敵に銃を振らせる事がポイント
「敵に銃を振らせる事がポイント」という田村教官。高低差のある二名によるカッティングパイを実演する。
円弧を描くようにドアの死角を確認していく。

元警察特殊部隊の田村教官4年間在籍していたと言う、元警察特殊部隊の田村教官の言葉には説得力がある。
CQBハウス 上から
CQBハウスはこんな感じ。ハシゴに登って教官が状況を確認したりする。

インドアサバゲーフィールドと同様
CQBハウスの中はいわゆるインドアサバゲーフィールドと同様。ただし、障害物が結構自由に配置されていて、それを任意に動かすこともできる。


CQBハウスの裏口からはトンネルが続いており、この中も訓練に使用する。


中はこんな感じ、超絶に埃っぽく天井も低いので大人が進むのは結構大変。
また、ここで敵に遭遇する場合もあり、その際の対応も求められる。
ライトは必須装備だ。ウエポンライトとハンディライト両方あったほうがよい。
また、今回教えられたのは味方の背後からシルエットになるようにライトで照らしてはいけないということ。納得。

こんな感じでテーブルを囲んで卓上の地図でブリーフィングを皆で行う。
教官からミッションの内容について説明がある。
多くの参加者がヘルメットを着用している。
また各員との連絡を取るために特小無線、突入時間を正確に合わせるためにGショックなどの電波時計もあったほうがよい。

第一想定訓練のブリーフィング内容はこんな感じ。

MISSION1:
4月17日、埼玉県東松山市郵便局に2人組の強盗が押し入った。被疑者は二人組みで日本語を話し、拳銃とライフルのようなもので職員を脅し、現金50万円を奪い逃走。銃は発砲されていないので、それがモデルガンなのか実銃なのかは不明。
同日、東松山市の民家空き家(TTC)に不法侵入したところを所轄警察が発見するも手に負えず、我々部隊に出動命令が下った。
周囲1kmは封鎖されているが、報道規制が敷かれており、近隣住民はこの事件の状況を知らない。
武器の使用は本部統制下にある。無線で本部から指示あるまで発砲は許可されない。警察法に基づいて被疑者の身柄を確保せよ。


この状況において、チームリーダーを決めてチームを2つに分け、皆で作戦を立案する。
初めてだと専門用語がわからなかったりして、ついていけないのでとりあえずみんなの話を聞く。
決めた作戦内容を教官にブリーフバックして指定時間に作戦を開始。

被疑者の潜むCQBハウスに突入。とはいえ、銃器の使用を許可されていない。ええーっ!! 撃っちゃいけないのに銃を持っているかもしれない相手を取り押さえるってどうやるのさ!?

とにかく発砲許可のないまま突入。
もちろん事前に犯人と交渉をするのもOK。
ドアの向こうには障害物が無造作に積み上げられており、それを越えるのに苦労しているうちにポイントマンが足に被弾。
げーっ!! 撃たれちゃうの?
サバゲと違って、被弾しても致命傷のバイタルゾーンでない限りは各自の判断でミッションが継続する。
負傷者を後方に下げて救急処置を施す(想定)。とまあ、こんな感じでグタグダしているうちに一人、また一人と負傷者続出。
ああーっ、もう、埒あかない。
そういや、発砲許可ってでたの!?
本部、本部ーっ!! チームリーダーが無線で状況を報告、ようやく本部より無線で発砲許可が下りる。現場では血が流れてるのに!!
被弾したら、被弾状況に応じてその場に留まる。そこらじゅうに負傷者が転がっている。
コレが現実だとしたら、床には薬莢と血だまりが広がり、阿鼻叫喚の地獄絵図なハズ。

突入後の廊下。被疑者役の田村教官がバイタルに被弾して倒れている。ついでにチームの仲間も倒れている。

廊下を進み部屋の中へさらに突入。

するも、犯人は二人組みだと思ったら、もう一人いて3人だった。
こんな想定外のことにも対処しなくてはならない。この後、部隊は全滅。
第一想定の状況終了となった。



このあとAARと呼ばれるアフターアクションレビューが実施される。
各自の感想や反省点、こうしたらよかったんじゃないかとか、自分はこう感じたということを述べていく。
教官から叱られるわけではなく、あくまで淡々とテクニックを解説してもらう。
これが意外と勉強になり面白いのだ。
さて、第二想定からは乙夜さんも合流し訓練を続ける。

第二想定の任務内容は以下のような感じ。

» 乙夜さんのブログはこちら

MISSION2:
某国へ我が国の諜報機関職員3名が亡命した。うち1名は他の2名に利用されており、本人は亡命の意思はない。この3名が某国内のTTC建物内に潜伏している。
亡命した職員2名を秘密裏に処理し、可能であれば亡命の意思がない1名の身柄を拘束し、某国に漏洩した情報を収集せよ。進入ポイントはトンネルから。
なお、某国への空挺降下後は周囲はすべて敵国の地であるため、無線を使用はおこなわない。


この日の午後は全部で3回の想定訓練を実施できた。しかもその一つ一つが非常に熱く、濃い。
とくに第3想定訓練は、なんと初参加にして指揮まで執らしていただいた。自分の指揮下で隊員が被弾したりすると激緊張なのだっ!!
そして訓練終了後、戦術初級のワッペンをもらえた!! これは貼るしかないでしょう!!

何度か訓練に参加しているメンバーにこんな話も聞けた。CQBの想定訓練で3人で突入したら飛び掛ってきた教官にゴムナイフでポイントマンが羽交い絞めにされた。教官は背が小さく、ポイントマンの背後に見事に隠れている。あっけにとられている二番手に「銃を捨てろっ!!」と威嚇。驚いて二番手が銃を下ろすやいなや教官は二番手に飛び移り、3番手までナイフ1本で全滅させてしまったと言う。訓練前は「んなことできるわけないでしょ~」と思っていたが訓練を受けてみると本当に思えてきた。それほど本職の現場で訓練を積んできた人たちに教えられていると凄さが伝わってくる。



潜入訓練で使用する約20mのラペリングタワー。訓練終了後にさっそく昇ってみた。

15m地点から下を覗く。
ギャー高い!!
ここからロープで降りるのだ。
さらに階段を上がって、頂上の20m地点へ。
それはそれはもうお尻の穴がムズムズするくらいの高さ。
乙夜さんこんなところでも笑顔ですね。
ラペ塔の上で記念撮影!!

この日は午前中射撃訓練を行い、昼食を取り、午後から想定訓練を3回おこなった。サバイバルゲームのローテーションと違って、ブリーフィングやAARなど、考える時間が多く取られている。そこで、自分やチームの行動を振り返り次のミッションに生かしていくという感じだ。
実際に戦術訓練を体験してみて、大変楽しく感じた。本物の教官が教えるのだからちょっと怖いかなぁ、なんて思っていたが、皆さん気さくで楽しく訓練できた。実戦を想定しているので、すべてがサバゲーに通じるわけではないが、サバゲーに活かせるテクニックもたくさんあった。

午後3回のミッションだとちょっと物足りなく感じるが内容は大変充実している。できれば1泊2日くらいで泊りがけで10回くらいの想定ミッションをこなしたいくらいだ。疲れるだろうけど...。
サバゲーに比べて料金は高いけど、それに見合ったテクニックを磨くことができる。場所が埼玉の東松山って言うのが少々遠いけど、また訓練しに行きたい気持ちが沸々と湧いてくる。
あれ? 最初とずいぶん印象が変わったなぁ。

不思議とみんな規律正しく、真剣にそれぞれの役割を演じているのも面白かった。
撃たれたときの演技なんかもリアルに再現する人もいたりしてね。
無線のしゃべり方、学び方、反省の仕方。訓練なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、いつものサバゲのノリでいくと少々戸惑うかもしれない。

訓練に参加したチームメンバーがこんな面白いことを言っていた。
「子供のためのキッザニアがあるならば、TTCはまさにオッサニアですよ。」
確かに。大人のための本気のタクティカル疑似体験プログラム、それがTTCなのかもしれない。

 

» 田村装備開発 オフィシャルサイト


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2011/04/20


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