ストーリー No.16
タイトル:俺の仕事について聞きたい?
投稿者:アルカトラズ
ストーリー:
えっと...もう喋ってもいいのか?これって取材なんだよな、仕事についてのインタビューだったか?
俺の仕事は...まあ、色んな呼び方があるけど、一番分かりやすいのは「殺し屋」ってやつだ。...ハハ、その引いた顔は少し傷つくな。ああ、俺の格好がそれっぽく見えないって?なら良かった。この日本って国は朝から晩まで働く人間がたくさんいるから、仕事着にスーツを選んだ。あまり高いやつじゃない、新人の営業マンのイメージだな。
えー...まずは何の質問だ?「あなたの仕事に欠かせないものは?」か。まあ、あんたの想像の通り、人を殺して金をもらってるわけだから、銃にはこだわりがある。「スプリングフィールド・アーモリー製 M1911A1オペレーター」、コイツで色んな仕事をこなしてきた。ホラ、見てみるか?そうビビるなよ、この席は店の中じゃ死角だ。
当時のガンスミスに依頼したのは高い威力と信頼性だった。装弾数は8発。現代の銃のレベルで言えば少ないほうだ。だが、この銃の弾は45ACPといって...まぁ当たれば死ぬほど痛むんだ。着弾の衝撃が大きく、弾数は少なくても、体のどこかにヒットすれば一発で相手を行動不能に出来る。それに名銃をコピーした基本構造は、シンプルで堅牢な作りだから誤作動を防ぐ。どんな環境でも、構えて確実に発射出来る信頼性、一撃で相手を倒す威力。この二つが揃えば、後は持ち手の腕次第だ。サプレッサーを取り付けて発射音を抑えることで、先手を取ることも出来る。大事に使えば一生モノだ。見てみろ、この洗練されたフォルム。がっしりして、かつ優雅な、女優で言うシャーリーズ・セロンのような?...ピンと来ないか。だよな、俺も今思いついた。
で、次は?「仕事に対するこだわりは?」か。実行する時は、こだわりは持たないようにしてる。狙撃、ナイフ、毒、背後から撃つ、事故を装う。これだけ柔軟にやっても不測の事態ってのは起こるんだからな。どんな卑怯な手段でも成功のためなら...っていう意識がこだわりなのかも。ああ、あと銃の手入れをマメにしてる。もちろん命を預ける武器だからってのもあるが、手入れをしていると集中力が高まるのが分かるんだ。実行のための手順が頭の中で組み立てられて、自分がどう動くのが最善かをシュミレーション出来る。その通りに動いて、こうして生き残ってきた。
えっと、お次は「この仕事をしていて良かっとことは?」か。そりゃ「金」だろう。危険な仕事なんだからそれなりに貰ってるよ。でも、準備費用は自腹だから、いかに低コストで報酬の利益率をあげるか、それが問題だ。悩みはどんな仕事でも一緒だな。敵状視察のために派遣やアルバイトもするが、全く割に合わないな、この仕事を憶えちまった後じゃ。でも、こう考えろ。安い賃金なのは、その分を安全な暮らしに支払ってると思え。将来は何になりたい?なんて考えるのは十年、二十年先に生きてることが保証されているからさ。保険に入れるあんたが羨ましいね。
結構時間が経ったな...そろそろ飛行機の時間なんだが。最後に「なぜ答えてくれたのか?」。まあ、普段は答えないが最近、事情が変わってな。この業界全体の事情だ。
...ある男が世界中で狙われてる。「ジョン・ウィック」、かつて2つの巨大マフィア組織を潰した、たった一人で。だが、業界全体のルールを破った。世界の殺し屋は彼を血眼で探し、彼の行く先々で戦争が起こるだろう。そうなれば世界は、俺のような「裏世界」の人間達に気付き始めるだろう。俺達が気軽に自己紹介できる日が来るかもな。あんたも、記事を出すなら気を付けな。もう世界のどこにも安全な場所は無いからな。さて、俺はもう行くよ。装備も増やしたいし、スーツも仕立てないと。何より、大きな獲物を誰かに獲られちまう。
...ん?俺の名前と連絡先か?心配するな、俺があんたを見つけ出す。
生きて帰れたらな
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