ストーリー No.15
タイトル:LUCKY COLOR
投稿者:JON・C・ANDERSON
ストーリー:
「下村さんって、いつも赤いネクタイしてません?」取引先の女性から唐突に言われた。俺はすぐに「自分のラッキーカラーなんですよ。身に着けていると、金運がとても上がるんですよ。」と答える。
「ふーん。もっとお洒落な色にすればいいんじゃないですか?」という言葉に、笑い声で返す。
ネクタイは常に『赤色』でなくてはならない。なぜならば、いつでも『もう一つの仕事を受ける準備』をしているからだ。
この手の仕事をする時に、ネクタイほど便利な道具はない。絞め・手に巻いて拳を守るなど、用途は様々だ。赤ければ仮に返り血を浴びたとしても、目立たないのが最大の理由だ。常に身に着けておけば、仕事の話を受けてすぐに依頼をこなして金を貰える。
俺の流儀はあくまで『日常に溶け込む』ことで、派手なやり方は好まない。静かに・何も無かったかのように日々に戻る、まるでランチを食べる程度の時間で片を付けて戻ってくる必要がある。その部分においては、接近戦に持ち込むのは俺の流儀と見事に合っている。
しかしすべての仕事が、それで済む訳はない。こういった仕事に予想外は付きものだ、計画通りに進むことなど半分も無かった。そういった時に飛び道具無しで挑むのは、経験豊富な自分としても流石に自惚れ過ぎというものだ。常に最悪に備えるのは、こういった仕事をする人間の流儀というものだ。
こういった時に役に立つ銃、それは【GLOCK19】だ。非常にコンパクトで、取り扱いに困らないヤツだ。
今までトラブルが来た時に、こいつに助けられことは数知れずだ。上着の下に隠していても目立ちにくい形状と大きさ、何より銃をホルスターから引き抜いた時にジャケットに引っ掛かり難い部分に魅力を感じる。セーフティはトリガーのみで不安に思えるが、いざ使ってみると暴発は今までゼロ。見事な出来だ。
ただ一つ気に入らないことがあるとすれば、それは純正のサイトだ。こればかりは本当に気に入らない、まるでこちらの視覚を減らして困らせたいとしか思えない。ここだけは自分が唯一手を加えた部分だ。他に関しては申し分のない銃だと言える。
こいつのお陰でいくつもの修羅場を、潜り抜けることができた。とはいえ、こいつで何丁目だか自分も覚えていない。逃げる時にあっさりと放ってしまう時もある。こういった時にすぐに新しいものが手に入るのも魅力の1つだ。世の中には個性を出したいのか、やたらに銃をカスタムする同業者が多くいる。しかし俺に言わせれば、俺がやったと吹聴しているようなもんだ。この仕事では、いかに目立たなく手早く片付けるか、これこそがこの仕事の醍醐味だと俺は信じている。
…突然俺の携帯が突然鳴った。連絡先はいつもの依頼人からだった。俺は女性社員に断りを入れて、電話を取った。いつものように気味の悪いくらい、抑揚のない声で話しかけてくる。
依頼主の話によれば、とある殺し屋に1400万円もの賞金がかけられたとのことだった。どうやらこちらの業界では有名な人間だったようだが、どうもヘマをしでかしたようだ。依頼主はこいつを殺して名前を上げたいようで、成功の暁には金はすべて俺にくれるそうだ。功名心や権力に取りつかれればどんな奴でもこのザマだ。しかし金を得るにはいいチャンスだ。2つ返事で仕事を受けることにした。
席に戻ると「何か良いことでもあったんですか?」と取引先の女性に聞かれた。どうやら口元がゆがんでいたのだろう。俺はこういった。
「やはりラッキーアイテムを身に着けていると、幸運が舞い込みますよ。」
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