海上保安資料館 横浜館 北朝鮮工作船展示
神奈川県中区の陸海上保安資料館 横浜館にて展示されている北朝鮮工作船展示を紹介しよう。
九州南西海域工作船事件とは
2001年12月22日に九州南西海域において海上保安庁が国籍不明の不審船を発見。不審船は停船指示に従わず逃走、追跡および交戦に発展した事件。不審船は爆発して沈没。のちに海保によって不審船は引き揚げられ、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の工作船と特定された。
神奈川県中区の陸海上保安庁資料館 横浜館。北朝鮮工作船が展示されている。
資料館の横は港。
海保の巡視船、あきつしま PLH32が停泊していた。
日本の領海は約43万㎢。排他的経済水域を含めると約447万㎢となり、領土の12倍という広大な面積となっている。
事件当時対応にあたった巡視船 あまみ PM-95、きりしま PS-04、いなさ PS-03、みずき PS-11。
不審船の模型。
工作船は長さ30m、幅4.7m、総トン数約44トン。漁船のような外観だが、4基のエンジンを搭載。船首断面形状は通常の漁船はU字型だが、この工作船はV字型で、速力を重視した形状となっている。
ロシア製高速ディーゼルエンジン4基を搭載。連続最大出力1,100馬力×4基=4,400馬力。3翼固定ピッチプロペラ4基で最大速力33ノット(時速60km)と推定されている。
甲板中央部には操舵室があった。
その後ろには二連装機銃の格納区画があり、二本のレールで対空機関銃を移動できた。
工作船に搭載されていた14.5mm二連対空機関銃。ZPU-2と推定。最大射程7km、有効射程2km。
船尾はエアーシリンダ機構による観音開きとなっていて内部に小型舟艇が格納されていた。
また船籍を偽装するための鉄枠や偽装板なども発見された。
格納庫内。浸水防止栓の作業跡などが生々しく残っている。
船体には海保の射撃による弾痕も残っている。
工作船の船内配置。
工作船に格納されていた小型舟艇。
小型舟艇は全長11.21m、全幅2.5m、総トン数2.9トン。スウェーデン製ガソリン船内外機3基。出力は300馬力×3=900馬力。最大速力は約50ノット(時速90km)。
ゴムボートと水中スクーター。水中スクーターの動力は18セルのアルカリバッテリーで、直流モーターにより3枚翼プロペラで推進する。
引き揚げられた武器類。
82mm無反動砲。ソ連製 B-10と推定。
82mm無反動砲用砲弾。
携行型地対空ミサイル発射器。
携行型地対空ミサイル発射器。
小火器類も多数引き揚げられた。
5.45mm自動小銃。AKS-74と推定。
5.45mmx39自動小銃実包。
ロケットランチャー。RPG-7と推定。
7.62mm軽機関銃。PK機関銃と推定。
7.62mmx54R弾。
事件では自動小銃、軽機関銃、ロケットランチャー、無反動砲などが巡視船に対して発砲された。
14.5mmx114弾 対空機関銃実包。
破片型手榴弾。
GPSプロッター(日本製)、トランジスタラジオ、ポケットコンピューター(日本製)、携帯電話(日本製)、英-ハングル辞典なども引き揚げられている。
鹿児島県薩摩半島南東部の地図や双眼鏡。
日本製の無線機。
無線送受信機やヘッドホン。
自爆用スイッチ。スイッチにはハングル文字で自爆と記載。小型艇からは自爆用と推定される爆発物が発見された。
集魚灯。漁船に偽装するために船体に設置されていた。
腕時計や缶詰、菓子袋やタバコなども引き揚げられている。
水中メガネやシュノーケルなどの潜水装具。
銃撃を受けた巡視船あまみ船橋の1/2模型。100発以上の被弾により3名が負傷。その後の巡視船の防御構造改善のきっかけともなった。
海上保安庁のマスコットキャラ、うみまると、うーみん。
取材・写真:王清正
■関連リンク