SFA V10 ULTRA COMPACT 実銃レポート撮って出し!
Photo by Takahiro Soyama / Text by Takeo Ishii
U.S.M-14の民生版であるM1Aライフルで知られるスプリングフィールドアーモリー社が1980年台半ばから展開していたM1911系クローンは本家コルトをも凌ぐ高品質を誇り、また「スライドだけ」、「フレームだけ」、といったパーツ単体の販売にも力を入れていたことから多くのガンスミスにも支持されました。
1987年、88年はブライアン・イーノス、ロブ・レイサムの2大TOPシューターがSFAベースのウィルソンコンバットカスタムを使用し、ほぼ全てのマッチで優勝を独占するなど、一時期はシューティングマッチの上位選手ほぼ全員が使用する程の人気を博しました。
「V10 ウルトラコンパクト」 はそんな同社の当時の勢いを受け、1990年代半ばごろに開発・発売された異色のカスタム・キャリーガンなのです。 日本では非常に人気がありますが実銃の生産・販売は2000年代前半に終了しており、現在メイカーでは廃盤となっています。
<DATA> 全長:181mm、重量:786g(空マガジン含む)、933g(6+1発装填時)、使用弾薬:.45ACP、装弾数:6+1発
さて、もうすぐ東京マルイさんからガスブローバックが発売されるV10 ウルトラコンパクトは「リアサイトがノバック仕様」で「メインスプリング・ハウジングがストレート」で、「ラージホール・ハンマー」の後期モデルですが、私共CQB GUAMが保有するこの銃はそれより古い世代の「初期モデルのうちの1挺」と推察されます。この銃はCQB GUAMの前身であるT.O.R.I.の時代から保有しているものです。
「V10」という名前の由来となった、バレルに合計10個開けられたイグゾースト・ポート。「発射時の燃焼ガスを上方に向けて噴射することで反動による銃口の跳ね上がりを抑制し、速射時の照準リカバリーを助ける」というコンセプトで、1990年代には結構流行した仕様です。グロックにも「G17C」や「G18C」等、モデルNo.の後に「コンペンセイター(=Compensator:抑制装置)」の頭文字「C」が付くモデルがあり、ほぼ同様の仕組みになっています。
ポートを左右5個づつ斜め上向きに配置したことで「照準線はクリアに確保し、左右ブレも抑えよう」という狙いもあったのかもしれません。このV10ウルトラコンパクトの銃身長は3.5インチですが、当時は5インチフルサイズ銃身に12個の穴が空いた「V12」や6インチのロングスライド&バレルに16個ものポートを備えた「V16」という銃もラインナップされていました。
この手の「コンプガン」あるいは「ポートガン」の欠点として、腰だめ等で低く構えて撃つと燃焼ガスが射手の顔に吹き付けてくる場合があり、時にはライフリングで削られた弾の破片や火薬の燃えカスが眼に入る危険もあります。撃っているすぐ隣に人がいた場合も同様の危険があり、「射撃場ならいざ知らず、実際のセルフディフェンスで使用するには問題が多いのでは?」と指摘する人も多いようです。エジェクションポートにも「エグゾースト・ポートは危険です、説明書を読んで下さい」という意味の刻印が入っています。
「V10 ULTRA COMPACT CAL.45」の刻印。打ち込んだ際の圧が一定でなく、濃さ、深さにバラツキがあり「時代」を感じます。セミロングの指掛けが付いたサムセフティやマガジンキャッチボタンのエッジが丁寧に処理されていたり、M1911系ハンドガンでは命中精度と確実作動の要になるスライドストップだけが異様に硬質で高品質な感じがする等、一見仕上げの粗さが眼に付くかもしれませんが「カスタムガンとしてのツボはキッチリ押さえてある」印象です。※スライドストップは質感が異なるので交換されている可能性はあります。
スライド右側面、「SPRINGFIELD ARMORY」の、刻印とその前方の円いトレードマークが格好良いですね♪ エジェクションポートは下方にやや拡げられ「べヴェルカット」と呼ばれるフレアー加工も施されています。
リアサイトはノーマルのM1911A1風ですが、背の高いHI-VISコンバットサイトが付いています。
フロントサイトも同様に背が高く、それも相まってサイトピクチャーは抜群です。古い銃なのでホワイトダットは剥げたり色褪せたりしていますね。これは蓄光塗料などではなく、最初から普通の白い塗料だったハズです。
通常分解をしたところ。フレームに固定されたイジェクターも前方にやや長いタイプが採用されています。リコイルスプリングは線形が太く相当に強いモノが1本だけ。最近のグロックやデトニクス.45のようにこれが2重、3重構造になった銃よりもスライドを引くのが重く感じます。
フレームはステンレス製です。23〜24年前に購入された銃ですが、ホーグのラバーグリップは程よい硬さと弾力を保ったままですし、覆われていた部分のフレームも綺麗なままです。
当時、このフレームはブラジルで生産されていました。グリップで隠れる位置に日本でもアニメの影響で有名になった「インベル(=IMBEL)社」の刻印が打たれているモデルもあるようですが、この銃にはありません。但しフレーム前方に「FI BRAZIL」の刻印があります。
マガジンは「MEC-GAR」という専門メイカーの製品で、6発の.45ACP弾が入ります。スプリングフィールドアーモリーは現在でもこの会社のハイクオリティなマガジンを採用し続けています。
空のマガジンを含む実測重量は786gで、230グレインの.45ACPを6+1発装填すると933gとなります。
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制作協力:CQBグアム
石井 健夫(いしい たけお) CQB GUA/ジャパンサービス部 代表 1967年12月、東京都生まれ。 |
ソヤマ タカヒロ CQB GUAM/WEBマーケティング担当 兼 実弾射撃サブコーディネーター 1964年9月、神奈川県生まれ。 |