東京マルイ グロック17L 【ハイグレード/ホップアップ】
レポート:石井 健夫
いまや世界で最も多くの公的機関に採用され、民間市場でもダントツに売れている「最高の拳銃」としての名声を欲しいままにしているグロック・ファミリー。現在までに5世代にわたるマイナーチェンジが施されたものの、基本設計やコンセプトは「約40年間そのまま」というのがまた凄い事なのだが、しかし細部の使い勝手や仕様、そして長さ、重さ、厚さ、装弾数、使用弾薬などはその時々のトレンドや使用現場からの要望を敏感に捉え、絶えず進化と発展を遂げてきているのもまた事実なのである。
現在、実銃界でもトイガン界でもグロック関連のカスタムパーツというのは星の数ほどマーケットに溢れており、また多くのカスタム・メイカーがグロックをベースにした革新的なタクティカルガンやマッチガンを製作している事はハイパー道楽をご覧の皆様ならご存知の通りだが、じつはグロック社自身がプロデュースしたカスタム仕様のグロックというものも幾つか存在する。
ヨーロッパ圏の多くの国々には公用(軍や警察)の銃器と民間用の銃器は厳しく分類・区別すべきである、という考え方があり、銃身とスライドを約42mm延長したG17Lは「①サイトレディアス(フロントサイトとリアサイトの距離)延長による照準の正確さ向上」、「②銃身の延長=前方重量増加による反動軽減効果」、「③銃が長くなる事による秘匿性の低下」という3つの特徴によって、公用は「G17」、スポーツ用は「G17L」という明確な色分けを狙ったモデルだった。
後に登場した「G34」や「G35」は1990年代半ばに確立した「IDPA」のレギュレーションに合わせ全長を222.2mm以内(=いわゆる「5インチ銃身サイズ」)に収めてあるのだが、G17Lはスライド長だけで225mm、全長では242mmに達する「6インチ銃身サイズ」の堂々たる長さとボリュームなのだ。因みに同クラスのロングスライド・グロックには、.40SW版の「G24」と、10mmAUTO版の「G40」というモデルがある。
グロック17Lのパッケージは縦型だ。外寸は「縦290mm x 横180mm x 厚さ50 mm」で、これはシリーズ共通。背景にあしらわれているのは「ドイツ連邦海軍守備隊(Marinesicherungstruppe)」のベレー帽徽章だ。
シリーズ共通、玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイできるよう、計算され尽くしたデザインの内箱。銃本体には保護キャップ付き、グリップにはHOP-UP搭載モデルである事を示す帯が誇らしく輝く。化粧箱入りBB弾(0.25g)150発と取扱説明書も付属。スライドの長いグロック17L、ひときわ見栄えが良い。
実銃のG17LはGEN2(=第2世代)時代に生産されて以降、長らく製品ラインナップから姿を消していたのだが、数年前にGEN3フレームに改修され復帰を果たしている。スライドリリース・レバーもG34タイプの三角形に張り出したタイプに改められ、より操作性が向上しているようだ。
グロックが活躍できる実戦的な競技「IDPA」のレギュレーションに合致しないため一時期は廃れかけていた長大な6インチ銃身とロングスライドはある意味「規格外の存在」なのかも知れないが、しかし流麗かつ繊細で美しいその面影を楽しみたい、長銃身ならではの射撃フィーリングを味わいたい、という人が増えているのだろうか。
グロック17では「飾り気の全くない無骨な四角形」と見えていたスライドが約42mm延長された事により、全く違った表情と存在感が醸し出された。特殊コーティングを施した鋼鉄のスライドと画期的な樹脂フレームを組み合わせた実銃グロックの風合いを、きめ細かいマット塗装が施されたスライドとやや艶のある粗めのシボ加工が施されたフレームの対比で表現する東京マルイの造形技術がここでも抜群な技の冴えを見せる。「GLOCK」のモノグラムに「17L」というシンプルな数字だけで表現されたモデルNo.もじつに渋い。長くなったアウターバレルの先端ギリギリまで延長された真鍮製インナーバレルもまた、この銃に込められた「気合い」を感じさせる。
トリガー中央部にチョコンと突き出したセフティはちゃんと機能するが、それとは別にテイクダウンレバーにもマニュアルセフティとしての機能があり、写真のように下側にカチッと動かした状態で「セフティON」でトリガーを引いても動かない状態となる。
「LYMANトリガープルゲージ」による実測値は「1.37〜1.48kg」でグロック17より10%ほど軽く、これが競技用モデルである「17L」を表現するため意図的になされたセッティングなのだとしたら驚くべき事だ。
実際にグリップを握ってみるとかなり角張って感じるのは「17」同様。この製品以降に続々と発売された様々なメイカーの色々なジャンルのトイガン・グロックを散々体験してきた身としてはやや旧い印象を受けてしまう事は仕方がないのかもしれない。
銃身が延長された分の重量配分を最適化するため、同じく延長されたスライドの前方上部をザックリと大きく肉抜きしてあるのが17Lの特徴で、この大胆なデザインの効果なのか、左右合わせスライドの真ん中に走っている分割ラインが「17」の時よりは気にならない。むしろ鏡面仕上げで表現されたチェンバーや、別ピースが嵌まっているように見えるスライド後端など、ギリギリまで追い求められたリアルさの表現が際立って見えるのが不思議だ。
空走なしショートリコイルもなしのダイレクト・コッキングでシアが掛かるまでのストローク僅か25mm、という実戦向きのセッティング。さらに実銃同様にシンプルなデザインのスライドの何処でもガッ!と大胆に掴んで引けるので素早い連射もやり易いため、銃身やスライドの長さを苦に思わないならばグロック17と並んで「シリーズ中、最もサバゲ向きなコッキングエアーハンドガン」といえる。
グロック拳銃の特徴であるフロントサイトのホワイトダットやリアサイトの「凹」ラインは再現されていないものの、リアサイト、フロントサイトとも角がクッキリ立って狙い易い。左右合わせスライドなのでフロントサイトのセンターに僅かな隙間があり、明るい場所で標的を狙うとこのラインが少し光って見えて狙いやすくなるのが面白い。0.25gBB弾でほぼストレート弾道、0.20gBB弾では心地よくHOPが掛かった弾道で、30m先のA3用紙、40m先の上半身サイズなら充分に狙える命中精度もさる事ながら、グロック17同様に狙点&着弾点の一致はシリーズ随一と言って良く、サイトレディアスが長いぶん17Lの方がさらに若干有利かもしれない。
マガジンはグロック17と共通のほぼフルサイズ仕様。全長および前後幅が実物よりやや短いが厚みは同じなのでサイズ的に物足りない感じはなく、実物用のマガジンポーチにもピッタリ収納できる。内部ウェイト入りで132.5gの程よい重量があり、マガジンキャッチを押すと「ツルン!」と自重落下する。
装弾数は24発だ。またベースプレートは別パーツで底部には「GLOCK」のロゴも入っている。左右合わせ構造なので右側に2箇所(+)ネジが見えるが、実銃マガジンにも見られる円い凹みにうまくカムフラージュされている。
スペック
全長 | 244mm |
重量 | 384g (実測値) |
装弾数 | 24発 |
価格 | 3,500円(税別) |
発売日 | 1992年12月24日 1994年11月14日(ホップアップタイプ) |
発射方式 | スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載 |
初速 | 最高:64.1m/s 平均:62.47m/s 最低:60.7m/s ジュール:0.390J |
※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温19度、湿度56%、ACETECH AC5000にて測定。
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