東京マルイ グロック17 【ハイグレード/ホップアップ】
レポート:石井 健夫
1980年代にオーストリア軍の制式採用拳銃として開発され、1985年に「G17」がアメリカ市場で発売されるや、その革新性、斬新さに世界が驚嘆! そして瞬く間にその驚きは感心へと変わって世界中に浸透。その感心はやがて信頼感となり、いまや世界で最も多くの公的機関に採用され、民間市場でもダントツに売れている最高の拳銃、と名声を欲しいままにしているのがグロック・ファミリーなのだ。
その原点たるモデルが「G17」であり、現在までに5世代にわたるマイナーチェンジが施されたが、基本設計やスタイルは約40年間そのまま。2017年には数年前から期待されていた米軍新制式拳銃の座こそ逃したものの、そのトライアルに向けた様々な挑戦から得られた技術面・デザイン面でのフィードバックは市販向けの製品にも反映され、グロック拳銃は人気・セールスともに益々絶好調だという。
いまや好むと好まざるに関わらず「グロックの扱いや撃ち方に習熟する事はハンドガンシューターとしての必修科目」と見なされている感すらあり、実銃界でもトイガン界でも、グロック関連のカスタムパーツというのが星の数ほどマーケットに溢れている。つまりM 1911(ガバメント)系と同等かもしくはそれ以上に強固で幅広いユーザーからの支持を獲得したグロックはいまや、「拳銃界のスタンダード・モデル」としての確固たる地位を築いているのだ。
東京マルイが発売するコッキングエアーハンドガンのグロック17は「GEN2(第2世代)」だ。フレームのダストカバーにはアンダーマウントレールがなく、グリップには滑り止めパターンが刻まれているが、サムレストの凹みやフィンガーチャンネルはない。その思い切ったシンプルさで全世界の拳銃ファンやユーザーをアッ!と驚かせたグロックが、本当に驚くほど素朴でシンプルだった頃のフォルムであり、いま見るとかえって新鮮でもある。
ところで真横から見ている分には気にならないのだが、本製品を実際に手に取り、握り、構えてみると、グリップがやや角張っているのが気になる。このエアガンが発売された当時は誰も気にしなかっただろうし、実銃の無骨なイメージからもむしろこの方が「グロックらしい」と解釈されたのかもしれない。
しかしガスブローバック、電動ハンドガン、様々なジャンルのトイガン・グロックがこれほど世に溢れている時代となっては、やや旧い印象を受けてしまう事は否めない。
この銃の箱に付されたシリーズNo.は「1」で、これは東京マルイのエアコッキングハンドガンシリーズとして最初に固定ホップアップを搭載したことを意味している。この製品がマーケットに登場したのは現在ガスブローバックで最も数多くモデルアップされている「GEN3(=第3世代)グロック」が登場するより以前の1992年だ。
シリーズ共通「横290 x 縦180 x 厚さ50 mm」のパッケージで、グロック17は横型だ。背景には「ドイツ連邦警察 国境警備隊(BUNDES POLIZEI)」のバッジがあしらわれている。
シリーズ共通、玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイできるよう、計算され尽くしたデザインの内箱。銃本体には保護キャップ付き、グリップにはHOP-UP搭載モデルである事を示す帯が誇らしく輝く。化粧箱入りBB弾(0.25g)150発と取扱説明書も付属。
いまや実銃のグロックはGEN5(=第5世代)にまで進化・発展している。また「G17」から始まったモデルNo.も「G48」まで確認されている。そして恐らく当分は「世界拳銃界のベストセラー王者」として君臨するのだろうから、東京マルイには今こそ「最新技術&スペックを盛り込んだ究極のコッキングエアー・グロック」に是非とも挑んで貰いたい。そんな風に思うのは筆者だけだろうか?
飾り気の全くない無骨で四角いスライド側面には控えめなヘアラインが走り、鋼鉄製ならではの「硬い感じ」をABS樹脂ながら上手く演出していると思う。「GLOCK」のシンプルなモノグラム・ロゴと「17」という数字だけのシンプルな表記も、いまやスッカリ定着してじつに格好良いではないか♪
真鍮製インナーバレルがアウターバレル先端までギリギリに配置され少しでも長さを確保しようと試みられているのも、「見た目よりも実(じつ)を取る」を体現したかのようなグロックという銃の性格を考えれば納得できる。
アンダーレールのないシンプルなGEN2フレームのダストカバーが、いま見ると逆にスッキリしていてシンプルな魅力を放つ。シリアルNo.プレートが真っ黒な四角だけなのはチョット残念なので、銀色のシールでも貼るのも良いかもしれない。
実銃同様、トリガー中央部にチョコンと突き出したセフティがちゃんと機能する。それと同時にテイクダウンレバーにもマニュアルセフティとしての機能があり、写真のように下側にカチッと動かした状態で「セフティON」、トリガーを引いても動かなくなる。因みに「LYMANトリガープルゲージ」による実測値は「1.56〜1.58kg」と、バラツキのない極めて安定した数値。ただし指当たりの感触は実銃(やガスブローバック)に比べやや平べったい。また、これは偶然なのかもしれないが実銃独特の「粘っこい感じ」も心なしかあるのが面白い。
刻印やプルーフマークの類はかなり細かく再現されており、「ASGK」マークや「TOKYO MARUI。CO.,LTD.」といった文言がそれらに上手に紛れているのも美しい処理だ。特筆すべきは左右合わせ構造なためどうしても必要になる(+)ネジの配置で、①フレーム後方のピン、②実銃のトリガーガードにも見られる金型から抜く時の円い跡、③実銃のリアサイトにも見られる調整用の凹み、等に擬態させているのがじつにテクニカルで感心してしまう。
きめ細かいマット塗装が施されたスライドとやや艶のある粗めのシボ加工が施されたフレームのコントラストは、特殊コーティングが施された鋼鉄のスライドと樹脂フレームを組み合わせた実銃グロックの風合いを美事に表現している。鏡面仕上げで表現されたチェンバーや、9mm弾が装填されている事でやや斜めに突き出して見えるエクストラクターのモールド表現など、リアルさの追求にも鋭いモノがある。それだけに左右合わせスライドの分割ラインがど真ん中に走っているのが今になって見るとかなり残念、と感じてしまう。
コッキングは空走ナシ、ショートリコイルも無しでダイレクトにピストンスプリングの圧縮が始まる1段引きタイプ。エジェクションポートも閉じたままである。シアが掛かるまでのストロークは僅か25mmで、さらに実銃のシンプルなデザインを踏襲し、スライドに余計な造作もなく、ガッ!と大胆に掴んで引けるので、素早い連射もやり易い。後述するサイトアライメントの正確さとも相まって、「シリーズ中で最もサバゲ向きなコッキングエアーハンドガン」と言えると思う。
リアサイト、フロントサイトとも角がクッキリ立って狙い易いが、グロックの特徴であるフロントサイトのホワイトダットやリアサイトの「凹」ラインは再現されていない。また左右合わせのスライドなのでフロントサイトのセンターに僅かな隙間があるのだが、明るい場所で標的を狙うとこのラインが少し光って見え、より精密に狙える効果があって面白い。狙点と着弾点の一致度合いは「シリーズ一正確」と言っても良い程で、0.25gBB弾ならばほぼストレート弾道、0.20gBB弾では心地よくHOPが掛かったやや上反りな弾道で気持ち良く標的をHITできる。例によって30m先のA3用紙、40m先の上半身に70%以上は命中する頼もしい感覚を、この銃なら誰もが味わえるだろう。
ほぼフルサイズのマガジンは実銃でもアウターケースが樹脂だけに外観はかなりリアルといえるが、左右合わせ構造なので反対側には2箇所(+)ネジが見える。長さは9mm弾1発分ほど短く、厚みは実物と同じで前後幅が2mmほど短いが、サイズ的に物足りない感じはしない。内部にウェイトが入り132.5gの程よい重量。装弾数は24発となっている。またメーカーからの公式アナウンスこそないものの実銃グロックには「①キャッチボタンを押すと自重で落下するもの」と、「②落ちる途中で引っ掛かって止まるもの」、2タイプのマガジンが存在するのだが、このマガジンはツルン!と自重落下する。ベースプレートは別パーツで、底部には「GLOCK」のロゴ入り。
スペック
全長 | 202mm |
重量 | 369g (実測値) |
装弾数 | 24発 |
価格 | 3,500円(税別) |
発売日 | 1992年4月27日 1992年5月8日(ホップアップタイプ) |
発射方式 | スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載 |
初速 | 最高:63.6m/s 平均:62.68m/s 最低:60.9m/s ジュール:0.393J |
※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温18度、湿度44%、ACETECH AC5000にて測定。
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