東京マルイ オートマグⅢ 【ハイグレード/ホップアップ】

東京マルイ オートマグⅢ 【ハイグレード/ホップアップ】

レポート:石井 健夫

マグナム弾やハイパワー弾を撃つ際には、銃も当然、頑丈で大きく、そして重い必要がある。ライフルやカービンならともかく、「ハンドガンで撃つ!」というのであれば構造が単純で強度を高めやすいリボルバーが選ばれるのが普通だった。

しかし1969年、ハリー・サンフォードという人物が.44マグナム・カートリッジを使用する史上初のマグナム仕様自動拳銃「.44オートマグ」を発表。翌1970年には新設立された会社オートマグ・コーポレーションから発売され一大ブームを巻き起こした。
しかし初代オートマグは多くの作動不良を起こし悪評が広まって間もなく頓挫。設計者ハリー・サンフォードはAMT(Arcadia Macine and Tool Inc.)から「オートマグ」の名を冠した後継機種を発売する事で巻き返しを図る事になった。

オートマグⅢ
オートマグⅢはこのAMTオートマグ・シリーズの一つで、U.S.M1カービンの弾薬として有名な小口径高速カートリッジ「.30カービン弾」を撃ち出せる耐ボディーアーマー用ハンドガン、別名「ボディ・アーマー・キラー」を謳って1992年に発売された。M1911系のハンドガンと似ている…と表記される事が多いのだが、ティルトバレル・ロッキングの方式・形状や、スライド上にレイアウトされたセフティやスライドストップレバーの形状等はむしろS&Wオートに近い。

.30カービン弾を収納するマガジンはかなり前後長があり、結果グリップも大型化して握りづらいという評判はあったものの、初代オートマグで悪評を買った作動性能に関してはかなりの改善が認められた事。さらに中・長距離を撃つロングレンジ・ハンドガンとしての性能や品質は高く評価され、商業的にまずまずの成功を収めた。

サイドビュー 左
初代オートマグの実銃は成功したハンドガンとは言い難いものの、その抜群なスタイリングや映画『ダーティハリー4』に登場するなど話題性にも事欠かず、何度もトイガン化されるなど日本でも大人気モデルなのだが、オートマグⅢはハッキリ言って超マイナー機種だった。なので東京マルイがコッキング・エアーガンとしてモデルアップした当時のマニアはかなり驚いたものだ。

ちなみにハイグレード・ホップアップ・シリーズには箱に通しナンバーが表記されており、オートマグⅢは「No.6」だ。ハイパー道楽での紹介順に並べるとコルトM1911A1ガバメントは「No.25」、Cz75 1stが「No.9」、SOCOM Mk23は「No.24」、M92Fミリタリーは「No.22」なので、設計としては比較的初期のモデル、という事になる。

サイドビュー 右
とはいえそこはハイグレード・ホップアップ。造形はリアルな上、微妙に色味やトーンに変化を持たせた塗装などを駆使した表面仕上げもゴージャス、マガジンはウェイト入りのフルサイズである等、ロープライス商品とは思えない凝った造りには感心させられる部分が多い。

一体成形スライドは「No.9」のCz75 1stまで登場せず、このオートマグⅢでは左右合わせのモナカ構造なのだが、ネジ等の露出も最小限に抑えられているので安っぽさや違和感はほぼ感じない。またマイナー機種ながら銃が大きく長く、ステンレスカラー=ヒロイックなイメージがあるからなのか、シリーズ中でもかなり上位の売れ筋商品らしい。

パッケージ
箱の寸法はシリーズ共通の「290mm x 180mm x 50 mm」。縦型レイアウトのパッケージ表には実銃の使用弾薬である.30カービン弾があしらわれ、この銃の特異性をアピールしている。

パッケージ内容
全長269mmは箱のサイズにギリギリなためか、フルサイズマガジンは保護キャップ付きの銃本体に装着された状態で梱包されている。グリップの前後幅が広いので「HOP-UP搭載モデル」である事を示す帯マーカーもひときわ目立つ。箱入りBB弾(0.25g)150発の他、取扱説明書も付く。

フロントビュー
エッジ鋭い銀色の刃のようなロングスライドが迫力満点のフロントビュー。肉厚の銃身とそれを囲む精度の高そうなブッシング、そして別体で取り付けられたフロントサイト等は、この銃が「中・超距離射撃を想定した特別なハンドガン」である事を雄弁に物語るかのようだ。

マズル
インナーバレルは真鍮製でアウターバレル先端より58mm奥まったところに銃口がある。従って実際の有効銃身長は外見から想像するほど長くないが、飛距離や命中精度、パワーは充分に出ている。アウターバレルがスリーブとして機能し、整流効果を生んでいるのかも知れない。

セフティ スライドストップレバー
オートマグⅢ全体のフォルムはM1911に似ているが、セフティ及びスライドストップレバーの位置や形状は’70〜’90年代のS&Wオートに近い。これらは全てダミーで、実際のセフティ機能はトリガーガード内側の小さなスイッチにある。手前が「ON」、前方が「OFF」だが、これはもちろん実銃にはない。

トリガープルは実測値で「1.49〜1.53kg」。重過ぎず軽過ぎず、“パキン!”と心地よい感触。実銃のトリガープルも非常にマイルドなので、その特徴をよく表現している、と言って良いだろう。シンプルな刻印は実銃同様。マークはAMTではなく、一時期買収されていたIrwindale Arms社のiAi仕様になっている。

スライド
スライド後退量は31mm。実銃のフルストロークと比べると1/3程の後退量だが、コッキングに連動してチェンバーが半分ほど開くのは嬉しいサービス精神だと思う。左右合わせ構造で長さもあるのだが意外に捩(よじ)れや軋(きし)みを感じさせないスライドだ。
前方はツルツルでエッジが鋭く、後部は大きく張り出したセフティやリアサイトがやや邪魔で、長くて持つところが多い割には意外にコッキング操作がやり辛い。「サバゲーでの使い勝手」という点ではややマイナスかもしれない。


ハンマーはスライドのコッキングに連動して起き上がるが、指でこれだけを起こす事は出来ない。素晴らしくリアルに造形されたミレット社のターゲット・タイプ・リアサイトは思わずネジで調整したくなるが一体成形パーツ。エクストラクターも金型モールドによる表現だが、やや斜めに向いていて最高にリアル。塗装や表面仕上げによる「ステンレス感の演出」が素晴らしい。


さすがにターゲット・ピストルのセッティングだけあってフロントサイト、リアサイトともに上質なシルエット。クッキリとしてじつに狙い易い。なお実銃もそうだったが、この銃は狙点よりもやや上目に着弾するので常に「6時照準」を心掛ける必要がある。ブルズアイ標的を狙うには最高だが、サバゲー等で咄嗟に狙う場合には注意が必要だろう。またこれは個体差なのかも知れないが、HOPの効きが強めで、0.20gBB弾はもちろん、0.25gBB弾でもBB 弾がスゥーッと浮き上がる弾道が顕著だった。この銃で適正HOPを得るには0.28gBB弾あたりがベストマッチなのではないだろうか?

グリップ
グリップの前後幅は異様に長く、手の小さな人にはやや手強いかも知れないが、下部に向かって細くなっているデザインは案外悪くない。その面積の広さが印象的な半艶の真っ黒なグリップパネルは横方向に走るストライプ・ラインがちょいレトロな雰囲気を醸し出し、これはこれで格好良い。

マガジン
実銃では.30カービン弾を収納するだけあって前後長が長く平べったいフルサイズ・マガジンはシルバーのABS樹脂による成形色そのままの仕上げ。BB弾は「25発」入り、実測重量は90gだ。またキャッチボタンを押しても自重落下しない仕様で、素早いマグチェンジには向かないが「フィールドでいつの間にか無くなっている…」という事故は起き難いので単純に欠点とは言い切れないだろう。

スペック


全長 269mm
重量 416g (実測値)
装弾数 25発
価格 3,500円(税別)
発売日 1992年2月6日
発射方式 スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載
初速 最高:59.6m/s
平均:56.98m/s
最低:56.3m/s
ジュール:0.325J

※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温25度、湿度58%、ACETECH AC5000にて測定。


2020/10/22

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