ヨネザワ ベレッタ M12S
写真&解説 YAS
解説
今回紹介するのはヨネザワのコッキング式エアガン、ベレッタ M12Sだ。このサブマシンガンを見てペネトレーターという愛称を思い浮かべたあなたは80年代のガスガンにどっぷり漬かったエアガンファンかもしれない。ペネトレーターとはMGCが独自にガスガンに付けたペットネームだからだ。
とはいえ、MGCのM12Sも多くのメーカーに影響を与えたモデルで、偶然なのか、追従したのか定かではないが、MGCの半年後にヨネザワからもこのベレッタ M12Sが発売された。
サバイバルゲームブームが最高に盛り上がっていた時期なので、各社多弾数、連射力アップを狙った製品が毎月のように発売されていた。当時まだガスガンのラインアップがなかったヨネザワが出した答えがフォアグリップを前後させてコッキングを行うという機構だ。
すでにマルゼンのKG-9では一般化していたレピーターカスタムをヨネザワもラインアップに加えていたが、このM12Sで違和感なく機構を導入した形だ。この類似機構としてマルイのコッキング式UZIやM16A1にも似たようなポンプアクション方式が採用された。
ヨネザワは戦前に創業した老舗の玩具メーカーで、ブリキ玩具やダイヤペットブランドのミニカーなどで人気を博した。
80年代にトイガン事業に参入してからは、コッキング式のつづみ弾にはじまり、6mmBB弾化してからもリーズナブルな製品でエントリー層を支えたが、1994年にセガ・トイズに買収され、ほどなくしてトイガン事業からも撤退した。
イタリアの老舗銃器メーカーが開発したサブマシンガンをフルサイズでモデルアップ。ポイントもエアコッキングの同モデルを発売したが、フルスケールモデルではなかった。
フロントには回転するスリングスイベルがある。マズル周りの雰囲気も含めて造形は凝っている。インナーバレルはアルミ製。
フロントサイトは固定式。コッキングノブも固定されたダミーパーツとなっている。
リアサイトはL型ピープサイトを模しているが固定されている。レシーバーエンドには回転式のスリングスイベルがある。
グリップ前には実銃で言うところのグリップセーフティがあるが、固定されたダミーなのでかなり握りにくさを感じる。セレクターはライブで機能する。グリップ後ろにはフォールディングストックを装着する基部が再現されるがこれもモールドのダミー。トリガーは樹脂製でトリガープルは2.2Kgほどだ。
フォアグリップをポンプアクションしてコッキングを行う。当時はサバゲーで有利となる速射可能なレピーターカスタムが流行っていた時代なので、メーカーもこういった工夫を凝らした製品を開発していた。
トリガーを引いたまま、フォアグリップを引いて勢いよく戻すとそのまま弾が発射させるラピッドファイアも可能。
マガジン装弾数は22発で、内部のリザーブタンクに100発が蓄えられる。レシーバー右にはASGKの刻印がある。『生きものに銃口を向けるな』という強い口調の注意書きシールが自制心を目覚めさせる。
マガジン底の蓋を開けてBB弾をジャラジャラと入れ、マガジンフォロアーを引きながら逆さにするとBB弾が装填されるが、引っ込みぎみのつまみを放してしまい、ついついBB弾をぶちまけてしまう。ここは慣れが必要だ。BB弾が装填されるとマガジン左の残弾確認窓から弾が確認できる。
初速は0.2g弾で58m/s程度なので、当時の標準的な0.4ジュールパワーのエアガンといったところ。
もちろんノンホップなので飛距離は現代のエアコッキングに遠く及ばずだが、命中精度は5mで8cm程度に集弾した。A4紙の上端を狙って、中央よりやや下目に着弾する。精密射撃に不利なストックレスではあるが、ポンプアクション方式と相まって、軽快に取り回せる。
パッケージには飛距り50mと謳われているが、いつものヨネザワの「最大仰角を付けて、風に乗ってうまくすれば...」くらいの気持ちの最大飛距離である。単連射という意味でのセミオートではないが、フォアグリップによるコッキングシステムをセミオートシステムとして特許出願していたようだ。
付属のBB弾。重量は0.12g。2箱も付属する。
大判1枚の取説。マニュアル.PDF (15.9MB)
玩具メーカーのヨネザワらしい電気仕掛けのプッシュリターン式ターゲットも発売していた。
ヨネザワは安価でそこそこ性能が良く、マルイと並んでエントリー層に人気だった。
DATA
発売年 | 1987年末 |
発売時価格 | ¥5,000 |
全長 | 実測 435mm |
重量 | 実測 735g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 22発+リザーブタンク内100発 |
平均初速 | 57.99m/s (0.2g、22℃) |
撮影協力:ミリタリーグッズ.com
■関連リンク
ビンテージ エアガン レビュー TOP
トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 -
モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史
考察 ブローバック・ガスガン