WA スーパー・イングラムM11
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
「ニセモノは道をあけろ!本物登場!!」WAのスーパー・イングラムM11を紹介するなら、このキャッチコピーにふれないわけにはいかないだろう。これは、前年末に発売されていたマルゼン製のイングラムM11に対して放たれた宣戦布告ともとれる過激な宣伝文句だ。後にWAはガスブローバックエンジンの特許権侵害でマルゼンを訴えるまでに発展する。
1993年に発売されたWAのプレシュートブローバック機構はその後の公募でマグナブローバックと名称が決まり、Most Advanced GemiNate Action deviceの頭文字を取って”MAGNA”となった。
M11はWA初となるマグナブローバック搭載のサブマシンガンで、製品そのものは宣伝通りのリアルなできばえであり、実銃通り一体成形のアッパーレシーバーや金属製のアウターバレル、スチールプレス外装のマガジンなど、マルゼン製よりあきらかにグレードが高かった。しかし、そのぶん価格が約6千円ほど高くなってしまい、若年層のガンファンからは敬遠されてしまったのも事実だ。
肝心の実射性能だが、こと反動の強さという点ではマルゼン製に一歩およばず、セールス面で若干の苦戦を強いられてしまったようだ。モデルガンとは違い、エアガンの世界ではリアルさよりも迫力があって価格の安い製品が売れる傾向にあり、せっかくの高い完成度も、結果的にすべてのエアガンファンには届かなかったようだ。
裁判はWAの勝訴に終わり、マルゼンはM11の構造変更を余儀なくされる。しかしながら現在、WAのM11はラインアップから外れており、自らマルゼン製に道を譲る結果となった。
M10とM11、好みの分かれるところだが、ガスブローバックエアガンとして製品化されたのはM11のみだ。中でもWAの製品はかなりのリアルさを誇る名作だった。
金属製のアウターバレル。サプレッサーをひんぱんに脱着する部分なので、ここが頑丈なのはありがたい。
セフティレバーの動作には適度な抵抗感があり、作りの良さをうかがわせる。
セミ・フル切り替え式だったが、ほとんどのユーザーはフルでしか撃たなかった。
ボルトのストロークは35mm。オープンボルトで発射する。ボルトを軽量化し毎分1000発の高回転を実現したため、こと反動の迫力という点に関してはマルゼン製に一歩及ばなかった。
折り畳みストック基部は亜鉛合金製で、バット部分はスチール製。
マガジンはスチールプレス製の外装でフォロアーやBB弾が外から見えないためリアルだったが、装填には長いチャージャーが必要だった。またフォロアーを前後逆にすれば空撃ちモードになる。
サプレッサー内部には穴があけられ、実際に消音効果があった。また銃口側にはON/OFFスイッチのモールドがあるが、これはもともと発光スーパー・トレーサーユニットを内蔵しようとしていた名残り。
パッケージはシンプルな発砲スチロールとダンボール。なるべくコストダウンしようとした苦労が感じられる部分だ。また当時、WAは製品ごとに国本圭一社長自ら出演するプロモーションビデオを製作・販売していたのも時代を先取りしていた。
DATA
発売年 | 1996年12月25日 |
発売時価格 | ¥19,800 |
全長 | 実測 253mm/450mm (ストック折畳時) サプレッサー装着時 448mm/565mm(ストック折畳時) |
重量 | 実測 1,330g |
バレル長 | 105mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガスブローバック |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 50発 |
平均初速 | 78.5m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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