タナカ WZ63 マシンピストル
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
まさかこんな銃がモデルアップされるとは、というトイガンは過去にいくつか例もあるが、中でもタナカのWZ63ほど意外性に満ちた機種選定は後にも先にもないだろう。そもそもこんな銃が存在したということ自体、当時ほとんどのガンファンは知らなかったはずだ。
実銃はポーランドのラドム社が製造した9mmマカロフ弾を使用するマシンピストルで、変わっているのはその発射機構だ。オートマチックピストルのようにスライド式となっており、そのスライドが後退したオープンポジションから発射サイクルがはじまるのだ。それをガスブローバックで、しかも金属製のスライドとフレームを備えていたのだから何をかいわんや。思えば実に大らかな時代の製品だったのである。
エアガンとしての発射機構はいわゆるアフターシュートだ。以前紹介したガバメントからはじまるタナカ製ガスブロのシリーズとしては、ある意味で集大成とも言える製品となった。スライド後退後にBB弾が発射されるアフターシュートは狙点と着弾点に違いがあるため、真剣なシューターからは敬遠されがちだった。しかしこのWZ63はそもそもが命中精度を求めるような銃ではなく、あくまでもフルオートブローバックの迫力が売りだったため、そこを気にするユーザーはいなかったはずだ。
タナカ WZ63最大の欠点はガスの供給方式だった。外部ソース式は仕方ないとしても、そのホースがなぜかマガジンに連結しているというデザインだったのだ。これではマガジンチェンジをするたびにホースを外して接続し直さなければならず、サバゲーでの使用はもちろん、プリンキング用として考えてもこれはかなり使い勝手が悪かった。
おそらく、リキッドチャージ式として進められていた設計が途中からかなり強引に変更された可能性がうかがえる。ガスの消費量が多すぎるからだと想像できるが、それだけ、WZ63のフルオートブローバックは迫力満点だったということなのである。
東欧特有のデザインはどこかチェコのCZ52やCZ75にも通じるところがある。
スライド式のマシンピストルで、ストックを折り畳めば、ほとんどハンドガンのようなWZ63。もちろんASGKの認証を得て発売されている。
前に突き出たコンペンセイター部は壁などに押し付けてスライドをコッキングするための物。実銃ではリコイルスプリングがかなり強く、スライド後端を手でつかんで後退させるのが難しいためだ。
2バルブ1ウェイ方式のアフターシュートで、トリガーを浅く引いてフルオート、引き切るとセミオート射撃となる。ツヤのあるグリップやフォアエンドは実銃そっくりの出来栄え。
オープンボルト方式のスライドストロークは約50mm。アルミダイキャスト製のスライドがフルオートで往復する様は迫力があった。エジェクションポートから内部メカが丸見えだが、マグナ以前はこれが当たり前だったのだ。
折り畳みストックのバットプレートはレシーバー下部に収納される。東欧らしいスッキリとしたデザイン。
フォアエンドとストックを伸ばした状態。ストックは亜鉛合金製で動きもあまりスムースではなく、力を入れて構えたらポッキリと折れてしまいそうだ。
この個体のマガジンはリキッドチャージ化されているようだ。本文中にある通り、ノーマルではここにホース接続用のカプラーがついている。
マガジン上部にインパクトバルブはなく、本体ユニットとガスルートを接続するためのバルブが内蔵されている。
パッケージの上箱には実銃の展開図と、エアガンとしてのデータが記載されている。
『もう、この性能は手にできない。』というキャッチコピーからも、タナカがこの製品にかけた意気込みが伝わって来るようなマニュアル。
manual.pdf (3.5MB)
DATA
発売年 | 1993年8月 |
発売時価格 | ¥42,000 |
全長 | 実測 597mm / 330mm(ストック折畳時) |
重量 | 実測 1,330g |
バレル長 | 152mm カタログ値 |
発射方式 | 外部ソース式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 45発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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