レプリカ モーゼルHSc
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
レプリカはかつて上野にあったマルシン製品の卸売り業者で、後に自社ブランドでいくつかの製品を販売したが、製造はマルシンが行っていた。
モーゼルHScという機種選択については、当時から古かったと言わざるをえない。昭和50年代後半頃までは、モーゼルHScが中型オートマチックピストルの代表格、という時代があったのは確かだが、すでに魅力的な中型オートはたくさんあったはずだ。
それでも、モーゼルHScにクラシックな魅力を感じるというガンファンは一定数存在する。かくいうボクなどはまさにそのひとりなのでよくわかるのだが、モナカ構造で薄い成形のため平滑でヒケのないスライドとフレーム、漆黒の色ツヤなど、この価格帯の製品としては秀逸な出来映えだといえる。
発射方式はインナーバレル交代式の固定スライドガスガンだ。トリガーが円運動ではなくストレートに後退する仕組みのため部品点数が少なく、故障が少ない。また、パーツの作動に不確定要素が少ないためか、初速も安定しているのが特徴だ。
2,500円という低価格、ガスの消費量も少なく、命中精度もそこそこ高い。これが大いにウケて、同シリーズのブローニング1910、コルト25オート、ワルサーPPK、レミントンデリンジャーとともに、モーゼルHScはヒット作となった。1994年に紙箱パッケージを廃止し、ブリスターパック入りの廉価版が発売されたことからも、プリンカー向きの製品だったことがわかる。
現在、市場を見渡してみても、このシリーズに相当する国産のエアガンは存在しない。今や固定スライドのガスガンでも、1万円以下の製品を探すのが難しい時代だ。
エアガン趣味の裾野を広げる意味でも、また、クラシカルなオートマチックピストルの魅力を忘れないためにも、このシリーズの復活を願ってやまないファン層は多いはずだ。
モーゼルHScは全体的に平面が多いデザインのため、成形のヒケがあると台無しだ。本エアガンはモナカ構造のため薄く成形されており、結果的にヒケのない平滑な仕上がりとなった。
インナーバレルは真鍮製。マズルぎりぎりまで長さがあり、このクラスとガスガンとしては命中精度も決して悪くなかった。
スライドまで完全に二分割構造なのがわかる。特徴的なハンマーのデザインがうまく再現されているのはさすがだ。
スライド上のセフティレバーは機能的にはダミーだが、別パーツでフレームとスライドを固定する役目を担っている。トリガーガード付け根、緻密なイーグルマーク刻印に注目。
モナカ構造の分割ラインは残念だが、金型がよく磨かれているためか漆黒の光沢が実に美しい。
グリップ後端には謎の穴が開いている。ランヤード用か?それともストック装着の計画でもあったのだろうか。
ボトムプレートが短く、マガジンキャッチのモールド部分まで届いていないのが残念。そのかわり、マガジンを外さなくてもガスの注入が出来る。
ワリバシタイプのマガジンにはリップがなく、全弾発射前に引き抜くとBB弾が飛び散ってしまう。これは安価なエアガンに共通する欠点だった。
箱が上下に分割されないタイプのパッケージ。この方がコストは低かったものと思われる。
当時のエアガンは、マニュアルに分解方法が解説されている物も少なくなかった。分解のしかた4のところ、「あとはすべてはずれます」という言い方が面白い。マニュアルPDF (2.9MB)
DATA
発売年 | 1988年9月22日 1991年4月上旬 (サテンフィニッシュ) 1992年秋 (ヘビーウェイトモデル) 1994年秋 (ブリスターパック) |
発売時価格 | ¥2,500 (スタンダード / ブラック) ¥3,500 (カスタム / フレームシルバー) ¥3,500 (サテンフィニッシュ / ブラック) ¥4,500 (ヘビーウェイトモデル) ¥2,980 (特別仕様ツヤ消しブラック ブリスターパック) ¥3,480 (ハーフシルバーカスタム ブリスターパック) |
全長 | 実測 163mm |
重量 | 実測 241g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式固定スライドガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | 24.4m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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