ポイント ウィンチェスターM1892 ランダル
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ランダルとは、1950年代後半から1960年代にかけてアメリカで制作されたウェスタン系TVドラマ、「拳銃無宿」の主人公、ジョッシュ・ランダルのことだ。
スティーブ・マックイーン扮するランダルが使う銃は、ウィンチェスターM92のソウドオフモデル。バウンティハンターという役どころと相まって、軽快なレバーアクションに日本のガンファンは夢中だったらしい。
もちろん、オールドガンファンを自認するボクも、その時代をリアルタイムで体験したワケではないが、ウィンチェスターレバーアクションライフルのトイガンというモノは、たいていはフルサイズと短いランダルモデルの両方が発売される、という認識はある。
古くはモデルガンのMGC ウィンチェスターM73や、CMC ウィンチェスターM92がそうだったし、最近ではKTWのウィンチェスターM73やマルシンのウィンチェスターM92も同じく。そしてもちろん、今回紹介するポイントのランダルにもちゃんと対となるフルサイズモデルが存在する。こちらは以前このコーナーで紹介しているので、ぜひ見比べてみてほしい。
ポイントのM92ランダルとマルシンの同モデルでは、ループレバーの形状が違う。ポイントのほうが大型だが、どうやらこれは劇中でも初期型のようだ。拳銃無宿のポスターなどにはマルシンのタイプが使われており、もしかするとこちらの方が有名かもしれない。
それでもあえてこのレバーを再現したのは、本モデルの設計者だとされる、故六人部登氏のこだわりだったのではないかとボクは思う。
六人部氏は前述のモデルガン、CMCウィンチェスターM92でも、バットプレートを自分好みのカーブ型にデザインしている。ここは実銃と違うのだが、「この方がカッコいいから」という理由でそうしたらしく、どこかに自分の個性を残すのが六人部スタイルなのである。
エアガンとしての形式はカート式のガスガンで、フルサイズの金属製カートリッジで実銃通りの装填と排莢を楽しめる。ボルトのロッキングもライブで、基本的な構造は実銃そのものだ。
いっぽう、実射性能の方はあまりパッとせず、そもそも、パワーや命中精度についてはあまり煮詰めた設計がされていないように感じる。
それでもウェスタン系のヒストリカルゲームなどでは、カート式ということもあってか評価が高く、今なお本モデルを愛用し続ける「ツウ」なガンファンも少なくない。
よく語られることだが、拳銃無宿の時代設定では、M92はまだ存在していない。本来ならM73をベースにすべきだったのだが、当時ウェスタンヒーローだったジョン・ウェインも好んでM92を使用しており、映画やTVドラマでは一般的なことだったようだ。
西部劇でちゃんとM73が使われるようになったのは1980年代以降、イタリア製のレプリカガンが広く出回るようになってからだ。逆にいえば、それ以前はプロップガン仕様に耐えられるM73が貴重だったということで、M92がその代用にされていたのもそう考えると納得がいく。
アウターバレルは八角形のオクタゴンタイプ。フロントサイトがないが、どうやらこれで正解らしく、他社製のランダルもすべて同じだ。
レシーバー右側面のローディングポートからカートリッジを1発ずつ装填。バレル下のチューブラーマガジンに押し込まれていく。
ループレバーを下ろすとボルトが後退、マガジン最後尾のカートリッジがフォロアーに乗り、チャンバーに運ばれる。
ボルト閉鎖。2個のロッキングラグが実際にボルトとレシーバーの間をカンヌキのように貫通し、実銃同様しっかりとロッキングする。
トリガーガード内に見える銀色の小さなパーツは、ポイントのパーツ名リピーターレバー。これを少し内側に起こしておくとボルト閉鎖と同時にトリガーが押されるため、ループレバーの操作だけで連射できる。
ストックは木製。下部中央に見えるバルブがガス注入用で、後部の真鍮ネジは外部ソース用の接続ポートだ。
フンイキのあるカートリッジボックスとパッケージ。堂々とウィンチェスターと書かれているが、本国と正式にライセンス契約を交わしたかどうかは謎。当時、玩具銃に正式ライセンスを取得すること自体が稀で、日本国内に実銃ウィンチェスターの代理店もあったはずだが、ここまで堂々と使用しているところを見ると、ロゴ使用に際してなんらかの取り決めがあったのかもしれない。
全体的にかなり丁寧なマニュアル。「そのリアルさにおいて一切の妥協はありません」という文言に、六人部氏のプライドが感じられる。マニュアルPDF (2.4MB)
DATA
発売年 | 1992年末 |
発売時価格 | ¥35,000 |
全長 | 実測 495mm |
重量 | 実測 1,685g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 5発+1 |
平均初速 | 57.2m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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