ポイント ワルサーPPK メタルフィニッシュ
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
モデルガンの世界では、昔から小型のポケットピストルに一定の人気がある。昭和40年代前半、コクサイが国際ガンクラブという名前だった頃、最初に発売したモデルガンはコルト25ポケットだったし、あのMGCも、最初の量産型モデルガンはベレッタベストポケットだった。
小型であるがゆえに金型などの初期投資が少なくて済む、という商業的な側面はあるものの、やはり、手のひらに収まる小型ピストルの愛らしさは、ガンファンにとってかけがえのないものだ。
ひるがえって、エアガンの場合を考えると、小型であるということはそのまま実射性能の低さにつながることが多い。エアコッキングならシリンダーは小さくなるし、ガスガンならガスの収納スペースが少なく、ガスルートも細くならざるを得ないからだ。
そんな中、ポイントがワルサーPPKの発売を予告したとき、実は業界内では驚きよりも、なるほどと納得する声が少なくなかったという。なぜならポイントというメーカーは、名トイガンデザイナー六人部登さんが設計するエアガンを数多く発売しており、ワルサーPPKはその六人部さんが大好きな銃だったからだ。
とはいえ、仮にガスブローバックをうまく作動させられたとしても、サバイバルゲーマーに対する訴求力が低いであろうことは容易に想像がつく。サバゲーで使いにくいエアガンは売れる数に上限があり、普通はどのメーカーもあまり手を出したがらないものだ。それでも発売に踏み切ったのは、他メーカーとは違う製品を作りたいという、ポイントのこだわりゆえだったのだろう。
発売されたワルサーPPKの外観は、エアガンとしては最高レベルともいえる再現度だった。全体的に薄く華奢で、実銃が持つ優雅な世界を堪能するにはじゅうぶん過ぎる出来ばえだったといえる。
しかし、これは予想通りというか、実射と作動性能に関してはいまひとつといった感が拭えず、特に寒い時期はブローバックも不安定だった。作動方式はタナカのガバメントと同じ2ウェイだが、ガバは冷え対策としてガスタンクが取り外せるし、そもそも設計値に余裕があったはずだ。それを単純に小型化しただけでは、うまく動かなかったとしても仕方がないのだ。
撃って遊ぶには不向きだったが、今でもポイントのワルサーPPKには根強いファンがいる。大ヒットする製品だけが名作ではないことを、我々ガンファンに教えてくれる1丁なのである。
ポイントのPPKは戦前・戦中モデルをモデルアップしている。
この個体はメタルフィニッシュがはがれ落ちてだいぶヤレた状態だが、これはこれで使い込まれた拳銃の迫力を感じる。下地となるニッケルメッキのカスタム シルバーモデルというバリエーションもあった。PPKのトイガンとしては今見てもかなりリアルで、外観に関しては六人部デザインの集大成ともいえる完成度だ。
マズル内径は約7mm、スライドにある7.65mmの刻印通り、.32ACP版をモデルアップしたのだろう。
小振りなハンマーとリアサイト。グリップパネルの色が黒ではなく茶系というのがまたいい。セフティレバーはスライドと一体成形のダミー。
スライドトップの波状模様が美しい。金型に加工するためコスト高につながる部分だが、手抜きをせずしっかりと再現されている。
内部機構が見えているが、マグナブローバックが世に出るまで、スライドを引いてもエジェクションポートが開くモデルはなかった。スライドのストロークは25mm。
グリップパネル上部に見えるのがASGKセフティ。リアルさが損なわれるため、取り外してしまうユーザーも多かった。
ガスはグリップ底部からリッキドチャージ。マガジンを装着した状態でもチャージが可能だ。
マガジンはワリバシ型で、他がリアルなだけに残念な部分だ。しかし金属製のリップが装備されており、BB弾が不意に飛び出すようなことはない。
DATA
発売年 | 1989年12月 (スタンダード) 1990年 (カスタム / メタルフィニッシュ) |
発売時価格 | ¥6,000 (スタンダード) ¥6,800 (カスタム シルバーモデル) ¥7,500 (メタルフィニッシュ) |
全長 | 実測 155mm |
重量 | 実測 336g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガスブローバック |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 9発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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