マルゼン コルト パイソン357
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
コルトパイソンのエアガンは数あれど、ここまで独創的な製品は他にないだろう。リボルバーの形をしてはいるが、構造はインナーバレル後退式のセミオートガスガンと同じなのだ。
インナーバレル後退式といえばMGC M93Rがそのルーツだが、オートマチックピストルに収納されるべきメカを、あえてリボルバーの形に押し込んだというところが面白い。
同じ形式の銃としては、以前にもマルゼンのS&W44マグナムを紹介したが、あちらの方がパッと見はリアルかもしれない。両モデルともシリンダーはモールドでまったく機能しないが、パイソンはシリンダーのフルートが片面2つずつしかなく、まるで回転途中で止まってしまったかのようだ。
44マグナムの方は、フレーム上にマウントされたスコープをマガジンにするという奇想天外なデザインだったが、パイソンではバレル下のエジェクターシュラウドがBB弾のマガジンになっている。
そのため、左側面にあるはずのエジェクターロッドもそれを収納するミゾもなく、単なるのっぺらぼうの丸棒なのが残念だ。
しかし、外観をなるべく崩さず、シリンダー相当部分以外にマガジンを配置したのだとすれば、それも納得がいく。
ならば無理にリボルバーを再現しようとせず、普通にオートマチックをモデルアップすればよかったような気もするのだが…。そう、ここで思い出されるのが、前述のMGC M93Rにまつわるエピソードだ。
M93Rの試作品は、モデルガンのコルトパイソンを利用して作られており、インナーバレル後退式の基本デザインを試作する際、ダブルアクションのメカが大いに役立ったそうだ。
そう考えると、インナーバレル後退式ガスガンとして、パイソンという選択はまさしく理にかなっているともいえるわけだ。
もしかするとこれはMGC M93に対するオマージュなのか?などと思ったりもするが、いや、真相は誰にもわからない。いずれにせよ、昔のエアガンはこれだから面白いのである。
全体的なデザインはパイソンそのもので、特にグリップのラインは実にリアル。だがエジェクターロッドがないのと、内部ユニットに干渉させないためかシリンダーフルートの位置が中途半端なのは残念だ。
バレルの刻印は当時のものとしてはリアルで凝った作りとなっている。
インナーバレルは真鍮製で、トリガーを引くと後退する。
リアサイト、ハンマーのホーン、このアングルから見る姿はなかなかリアルだ。
ファイアリングピンに相当する部分にバルブがあり、ハンマーがここを直接叩く。
実銃のパイソンはハンマーヘッドがフラットだが、スチール製のハンマーノーズが装着されている。
またシリンダーラッチの指かけは下にスライドさせるとマニュアルセフティがオンとなる。
グリップ底部にガスの注入口。このあたりのデザインはスタンダードだ。
なんとビックリ、フルラグのエジェクターシュラウドが取れてマガジンに。このスペースにBB弾を収納しようという発想は素晴らしい。
マガジン装弾数は12発。
タナカのパイソンもエジェクターシュラウドがマガジンだったが、あちらは取り外せない。BB弾のルートが長いためか、ここまでリップが飛び出て最終弾を送る。
このパイソン発売後すぐに自重落下式の120連スコープタイプマガジンモデル、1年後にはPPCスタイルのシューティングカスタムが発売された。
DATA
発売年 | 1987年末 1988年春 (スコープタイプマガジン) 1989年新春 (シューティングカスタム) |
発売時価格 | ¥4,200 ¥3,980 (スコープタイプマガジン) ¥5,200 (シューティングカスタム) |
全長 | 実測 294mm |
重量 | 実測 494g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 12発 |
平均初速 | 57.1m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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