マルゼン S&W M4506
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
最近、このコーナーではS&Wの4ケタモデルを紹介することが多い。解説を書いているボクとしては少々混乱気味で、撮影をしていても、一瞬、どれがどれなのか判別できなくなるといった状況が続いている。
まず整理すると、S&W M4506はM645の後継機に当たる。M645はMGCが固定スライドのガスガンとして発売しており、なるほど、スライド周辺などはたしかによく似ている。
S&Wのモデルナンバーに6が入る物は、原則的にすべてステンレスモデルである。当然、M4506もステンレスだが、ではカーボンスチールのブラックモデルは何かというと、M4505だ。これはタナカがガスブローバックモデルを発売していた。
マルゼンにはM4506と同じ形状でブラックモデルのM4504もあったが、これは実銃ではM4505のアルミフレームモデルにあたる。
しかし、マルゼンのM4504とタナカのM4505を見比べてみると、材質(エアガンでは同じだが)だけではなく、リアサイト、トリガーガード、グリップ後部のラインなど、各部のディティールも色々と違っている。
これは、同系列ナンバーの銃であっても、時期によって仕様の異なるモデルが存在した、ということだ。逆にいうと、エアガンメーカーとしては他社とバッティングしないよう、かなり気をつかって別バージョンをモデルアップしていたのである。
マルゼンM4506は、それまでの同社製品とは明らかに一線を画す、リアルな再現性がウリだった。MGCやタナカなどのモデルガンメーカーとは違い、一般玩具のメーカーがつくるエアガンというのは、どうしてもリアルさで一歩およばない物が多かった。
これは初期のマルイ製品などにもいえることだが、各メーカーは、ある時点でリアル路線にしっかりと切り替えを行っていた。マルゼンの場合、それがこのM4506(M4504)だったわけで、いま見ても、このリアルさは当時のモデルガンメーカーと同等か、それ以上だといっても過言ではないと思う。
ヒケのない平滑なスライドとフレーム、上品なメッキとヘアライン、実銃と見まがうばかりのワンピースラップラウンドグリップ。くわえて、トリガーとハンマーの動きもスムースで、エアガンとしての性能もかなり高水準だった。
これ以降、各社のガスガンはブローバックモデルへと進化していくことになるわけだが、固定スライドのガスガンでは、マルゼンM4506(M4504)はひとつの完成形だったといえるだろう。
キリッと立った各部のエッジ、スライドの平滑性などは、MGCのM645と比べもまったく見劣りしない。これでスライドが引けないのが不思議なくらいにリアルなできばえだ。
ダブテイルスロットに別パーツで入れられたフロントサイトが素晴らしい。残念なのはアウターバレルで、亜鉛ダイキャストの成形湯ジワが目立つ。インナーバレルは真鍮製。
フルアジャスタブルのリアサイト。エアガンとしての命中精度もどんどん向上していたため、サイトの正確性も重要なポイントだった。
ハンマーの打撃面にはスチールインサートが入れられている。リアルさだけではなく、実用性にも気を配ったデザインはマルゼンの伝統だといえる。
ダミーではあるが、斜めにへこんだエキストラクターの再現が秀逸。スライド固定ガスガンであるにもかかわらず、こういった細かい部分のこだわりは重要だ。
S&Wサードジェネレーションオートのアイコンでもあるワンピースラップラウンドグリップ。当時はロゴマークまでしっかりと再現するのが当たり前だった。
マガジンはステンレス板のプレス製でリアルな質感。装弾数は15発。
ガス放出バルブが本体側にある構造のため、上部にはユニットが入り込むための大きなスペースがあり、ガスが残っている状態でマガジンを抜くと吹き戻しがある。
高級感のあるパッケージ。それまでの玩具然としたイメージから脱却しようとした、マルゼンの意気込みが感じられる。
DATA
発売年 | 1989年12月 (ブラックタイプ M4504) 1990年5月 (ステンレスタイプ M4506) |
発売時価格 | ¥9,200 (ブラックタイプ M4504) ¥12,000 (ステンレスタイプ M4506) |
全長 | 実測 215mm |
重量 | 実測 638g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 固定スライド式リキッドチャージガスガン |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 15発 |
平均初速 | 65.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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