マルゼン KG9
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
エアガンの歴史を語る際、すべての事柄は「KG9以前」と「KG9以降」に分けられる、と言ったら言い過ぎだろうか。人によって、また年代によっても違いはあると思うが、マルゼンのKG9がエアガン界に与えた影響は大きいはずだ。
それまでのエアガンは、そもそも実銃が存在しない、架空のオリジナルモデルがほとんどだった。そこへ、モデルガンをも凌駕するほどにリアルなKG9が現れたわけで、その衝撃は筆舌に尽くしがたいものがあった。くわえて、29連発というケタ違いのファイアパワーと高い命中精度は、性能的にも既存の製品と完全に一線を画していたのである。
折からのサバゲーブームと相まってKG9は大ヒット、マルゼンのドル箱商品として、セミオートガスガン、BV式ガスフルオートと方式を変え、長きにわたり君臨したが、ガスブローバック版を最後に現在ではラインアップから姿を消している。
初期型はレシーバーがスチール製だったため、エアガンに批判的だった一部のモデルガンメーカーなどから危険ではないかとの指摘を受け、後期型ではプラ製レシーバーに改修されたというエピソードもあった。
しかし、エアガンブームの勢いはとどまる所を知らず、そうしたモデルガンメーカーも、結局はエアガンの開発に向かわざるを得なかったのはご存知の通りだ。
サバゲー創成期には多くのゲーマーが愛用していたKG9だが、ロングバレル化やポンプアクション化、ARスタイルコンバージョンなど、様々なカスタムも盛んに行われていた。
シンプルな構造のため、個人の好みに応じてカスタム出来るという点も、大きな魅力だったのではないだろうか。
円筒形のレシーバーに垂直型マガジンという、典型的なサブマシンガンのスタイルが凛々しいKG9。実銃はセミオートなので、アメリカではハンドガン扱いとなる。
コンパクトでシンプルなデザインは、製造面でもコストを抑えられる。マルゼンの機種選定は間違っていなかったのだ。
この個体は改修後のプラ製レシーバー。1985年には当時サバイバルゲームで流行のスタイルであったポンプアクション機能が付加され、スチールレシーバー化されたKG9 SP(Steel & Pump action)も発売された。
シンプルなリアサイト。実銃同様、正確に狙って撃つ銃ではないためこれでじゅうぶん役に立つ。
セフティは小さくじゃまにならない位置にある。レシーバー後部の構造が分かるだろうか。
スチール製のしっかりとしたコッキングハンドルにより、確実な操作性を実現。
コッキングハンドルを後退位置にロック、安全状態を保つ事が出来る。ボルトの後退ストロークは65mm。
当時の実銃製造メーカー、インターダイナミックの刻印と、その下に小さく入れられたマルゼンの刻印。
29連スチールプレス製のマガジンを標準装備したエアガンは、当時としては画期的だった。
ダブルスタッガード、ダブルフィードのマガジン。連射には少々コツが必要だった。
DATA
発売年 | 1982年12月 (KG9) 1985年夏 (KG9 SP) |
発売時価格 | ¥8,500 (KG9) ¥9,500 (KG9 SP) |
全長 | 実測 345mm |
重量 | 1,300g |
インナーバレル長 | 実測 約135mm |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 29発 |
平均初速 | 43.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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