マルゼン ブラックステアー
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
世は昭和から平成に元号が変わった直後。1989年は数年前から続くエアガンブーム真っただ中だった。
この頃、ユーザーがエアガンに求めていた要素は必ずしもリアルさだけではなかった。サバゲーに使える実射性能こそが最優先であり、外観のリアルさは二の次というエアガンファンも少なくなかったのである。
そんな中、市場のニーズをうまくとらえて製品化されたのがマルゼンのブラックステアーだ。実銃よりも約12%ほど縮小されているが、それと知らなければまったく気にならないサイズだ。後年、JACから初のフルサイズ版ステアーAUGされたとき、「なんてバカでかいんだ!」と驚いたガンファンは多かったに違いない。
マルゼンは本製品の前にエアコッキング式のステアーを発売しており、当初からエアコキとガスの2タイプを想定して作られた。ステアーをモデルアップする際にダウンサイジングとしたのは、まずコストを抑えるためだろう。金型が大きければそれだけ売価が高くなってしまう。低価格で売れる製品作りは、どのメーカーでも大命題だったはずだ。加えて、サバゲーで取り回しやすくするためには小さい方が絶対にいい。リアルさにこだわるよりも、安くて使いやすい銃を作るという道をマルゼンは選んだわけだ。
その企画は成功し、高価格化しつつあったJACガスガンへの好敵手としてブラックステアーは大ヒットした。実銃のストックはOD色だが、それをあえて精悍なブラックとしたのもヒットの要因となった。当時も今も、黒い銃に対する憧れは不変なのだ。
発射機構自体は当時一般的だったBV式だが、装弾数が60発と多めだったのはさすがだ。最初から多弾数マガジンがついているような感覚で、かなりのお得感があった。JAC製品のようにカスタムをして発展させるという楽しみは少なかったが、買ってすぐに遊べるエアガンの開発こそが、マルゼンの真骨頂だったのである。
なお、このコーナーで紹介している他のBV式ガスガン同様、今回の個体も内部ユニットを破壊してあるため、発射不能な状態である事を補足しておきたい。
実銃のモデル名だけではなく、「ブラックステアー」という独自の商品名を冠したのもヒットの一助となった。当時、実銃にはなかった黒一色の外観は精悍そのもので、縮小サイズというマイナス要因を補ってあまりあるものだった。
アウターバレルは樹脂製だが真鍮パイプで強化されており、外周のグルービングもカチっとエッジが立っている。
実銃同様、折り畳み式のフォアグリップ。実用性能に関わる部分で手抜きをしないのはさすがマルゼンだ。
光学式照準器は素通しのプラ板が入ったダミーだが、サバゲーで使うにはこれでじゅうぶんだった。
実銃同様、トリガーを少し引いてセミオート、引き切ってフルオートという、2段引きの切り替えができた。
後発のJAC製フルサイズ版との比較。並べてみると確かに小さいが、当時は誰も気にする事はなく、むしろ取り回しやすさをメリットと感じていたのだ。
左JAC、右マルゼンのマガジン。ひとまわり小さいだけではなく、シースルー素材の色やカーブ形状にも違いがある。
JACの刻印。上段右端の四角で消されたようになっている部分が気になるところだが、ここに入るべき文字は何だろうか…。
マルゼンの刻印を見れば一目瞭然、実銃通りAUSTRIAの国名が入っている。JACは輸出の計画があったのかもしれない。
DATA
発売年 | 1989年4月 (ブラックステアー) 1989年9月 (ステアーAUG SMG) |
発売時価格 | ¥14,500 (ブラックステアー) ¥15,400 (ステアーAUG SMG) |
全長 | 実測 702mm |
重量 | 実測 1,780g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 外部ソース式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 60発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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