マルシン モーゼル Kar98K
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
エアガンの世界では、カートリッジ(以下カート)を再現する否か、というのがその製品の方向性を分ける大きなポイントとなる。
このコーナーを長く連載していると、昔のエアガンは本格的な物ほどカート(ケース)がきちんと再現されていたと感じる。逆にいえば、ケースレスの製品は子供向けの玩具、という位置付けだったわけだ。
だが今やエアガンの世界はケースレスが主流となり、カート式の物はある種の世界観を楽しむ一部のガンファンのため、という風潮が根付いているように思う。
そんな中、つねにカート式の製品を発売し続けて来たのがマルシンだ。やはりモデルガンをルーツとするメーカーだけに、カートに対するこだわりには並々ならぬものがあるのだろう。
今回紹介するモーゼル Kar98Kは、5発のカートをクリップで装填するボルトアクションライフル。いうまでもなく、カート式でこそ操作にリアリティが生まれるカテゴリーだ。
今回紹介するのは初期型のエアコッキング式だが、後にガスボルト式に改良され、それは今でもマルシンのカタログに載っている。
ボルトを引く動作が軽く行えるガスボルト式は、エアコッキング式よりもいっそうリアルだが、冬場の実射性能という点ではやはりエアコッキング式に軍配が上がる。
外観はとてもよくできており、長い1本物の木製ストックが美しい。モーゼルはすべてのボルトアクションライフルのルーツであり、とくにサバゲーをやらないという向きに対しても、大人の所有欲を満たしてくれるのは間違いない。
本格的なボルトアクションライフルのエアガンは、アサルトライフル系に比べると少ないのが現状だ。それでも過去にこうした製品があり、今でも改良されながら存在し続けているというのは、ボクのようなオールドガンファンにはとても嬉しいことなのである。
リアルな木製ストックを標準装備し、モーゼルミリタリーライフルの雰囲気が余すところなく再現されている。モデルガンメーカーでもあるマルシンのこだわりがつまった1丁だ。この写真で装着されているボルトはハンドル先端の球が取れて紛失してしまった。
真鍮製のインナーバレルがマズル先端までのびている。高い命中精度を目指したのかもしれないが、実際にはさほど効果がなかったようだ。
タンジェントタイプのリアサイト。実銃8mmモーゼル弾の最大射程距離は3km近くあるので、実戦ではこの仰角が役に立つこともあった。
機関部内の固定マガジンにカートリッジが装填されている。この状態からボルトを戻すと、最上部のカートがチャンバーに装填される。
こちらは上の写真とは別のボルト。ハンドルの球は付いているのだが、残念ながらこちらは壊れていて機関部に挿入できなかった。下側からはピストンズプリングが見える。
左側面のクロウエキストラクターはダミーで、その内側に見えるグレー色のパーツが実際のエキストラクター。
バットプレートは金属製でリアルなのだが、ネジがプラスなのは非常に残念。中央部にヴァッフェンマークが刻印されている。
真鍮製のカートリッジ。装填排莢や床に落ちた時の音がチーンと澄んでいて、これはプラやアルミではマネできないリアルさだ。
マルシンはモデルガン時代からダンボールのシンプルなパッケージが多かった。余談だが、このコーナーでは価格を調べるのに毎回苦労する中、このように箱に大きく18,500と書かれているのは本当にありがたい。
1987年の発売当時、ボルトアクションライフルと言えばまだスーパー9(SS9000)が圧倒的人気を誇っていた時代。タナカから先行してケースレス式エアコッキングのモーゼル Kar98Kが発売され競作となったことや、マルシン自信が同時期にカート式ガスオペレーションのM1カービンを発売したこともあり、カート式5発のこのKar98Kはいまひとつ目立たない存在だった。
スコープをマウントする方法が2通りあり、それぞれ専用のストックが必要といったことが書かれているが、パーツリストには情報がない。まだまだ大らかな時代だったのだ。
マニュアル.PDF (26MB)
DATA
発売年 | 1987年11月中旬 |
発売時価格 | ¥18,500 |
全長 | 実測 1,116mm |
重量 | 実測 2,460g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プッシュ式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 5発 |
平均初速 | 57.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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