マスダヤ シュマイザー MT-36
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
今回紹介する製品は実はエアガンではない。ストライカーによってプラスチック製の弾丸を飛ばす、言わば銀玉鉄砲の高級版のようなトイガンだ。
当時、トイガンは各種の機構ごとに市場での住み分けをしていた。発火音とリアルな外観やメカニズムはモデルガン、つづみ弾の発射による実射はエアガン、といった具合にだ。
それは子供でも買える安価な玩具銃でも同じで、発火は巻玉火薬の百連発ピストル、実射は銀玉鉄砲や円盤ピストルがそれぞれの役目を担っていたわけだ。
そこに突如登場したマスダヤのMT-36は、既存のどのトイガンにも属さない大きな特徴を持っていた。なんと、電動でストライカーを連続作動させ、フルオート射撃を可能にしてしまったのだ。
これはエアガンでは到底無理だったことで、ストライカー方式だからこそ出来たシステムだと言えるが、本体内に収納されたバッテリーとモーターによって発射機構をドライブさせる、という発想は本当に斬新だったと言うしかない。今でこそ当たり前になった電動ガンというジャンルも、時代をさかのぼればここにれっきとした先駆者が存在したのである。
もちろん、実射性能は撃つというより「弾き出す」といった程度だったようだし、外観もお世辞にもリアルとは言い難いシロモノだ。しかし、既存の概念にとらわれず、現状を打破すべく開発を進める姿勢には脱帽である。老舗玩具メーカー、マスダヤの底力が感られる幻の一丁だといえるだろう。
パッと見はたしかにシュマイザーだが、マガジンまわりがなんとも重苦しく不格好だ。ここに円盤状のストライカーが内蔵されているためで、それが回転することで次々と弾丸をはじき出す仕組みになっている。
マズル奥にプラ製のインナーバレルが見える。なぜかフロントサイトガードが省略されており、寸足らずな印象だ。
この四角いスペースにモーターとギヤが内蔵され、8本のヒゲバネが放射状に付いた円盤が回転し、次々に弾丸を弾き飛ばす仕組みとなっている。
シュマイザーと謳っておきながら、マガジンは横から差し込むタイプ。しかもなぜか右に突き出しているため、右利きにはうまく構えることができないという摩訶不思議なデザイン。
レシーバー後部から単2電池3本を入れる。黒いビニール製の専用スリングベルトが付属する。
ロックこそしないものの、ちゃんと機能する折りたたみストック。なぜかメッキ仕上げでムダに高級感がある。黒いストックバージョンや、今では考えられないが、ギアボックス部にハーケンクロイツのステッカーが貼られたものもあった。
専用の弾丸はプラスチックの一体成形で直径は6mm。今は一度撃ったBB弾を拾う人などいないが、当時は1発残らずキチンと回収して何度でも使ったものだ。
マガジンにはかなりしっかりとしたリップが装備され、しかも驚くべきことにシースルーだ。
実に味わいのあるパッケージ。マスダヤはこの製品を「電動機関銃」と位置づけていたようだ。1秒間に8発発射!というのが本当だとしたら結構な発射速度である。迷彩柄に塗装された"カムフラージュ"バージョンも発売された。
上箱の側面にイラストでマニュアルが描かれてる。
また1975年にはトンプソンMT45マシンガン3900円(送料込み)も発売されている。
DATA
発売年 | 1971年 |
発売時価格 | ¥2,700 ※1971年マノク商事の送料込み販売価格 |
全長 | 実測 565mm / 698mm(ストック伸長時) |
重量 | 実測 795g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 回転ストライカー方式 |
使用弾 | 6mm 専用弾 |
装弾数 | 30発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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