コクサイ S&W M629 セブンショット
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
かつて、リボルバーといえば5連発か6連発が当たり前だった。それが今では、.22口径なら10連発以上の物も存在する。S&Wのセブンショットリボルバーは、そんな時代の幕開けにふさわしい、画期的な製品だったというわけだ。
トイガンメーカーとしては、リボルバーのコクサイ、という称号があった以上、やはり7連発をモデルアップしないわけにはいかなかったのだろう。
そもそもがガスリボルバーは実射性能があまり高くないため、プリンキング以外にはなかなか遊ぶ方法が少ない。だからこそ、今までにない7連発の魅力を感じるユーザーも少なくなかったようだ。
だがその一方、クラシックなスタイルにこだわりがちなのもリボルバーファンの特徴で、大ヒットにはつながらなかったのも事実である。
ただし、製品自体は、通常スタイルの6連発M629ガスガンがベースとなっており、メッキの仕上がりや各部のディティールなど、さすがリボルバーのコクサイと言えるだけの完成度だ。
カートリッジは7発をフルムーンクリップでひとつに束ね、シリンダーに装填するのだが、少々コツが必要だ。弾頭部がラバーパッキンのためグニャグニャしており、スムースには入らない。
これなら普通の6連発で遊んだ方がストレスも少ないと思えるのだが、いや、コクサイもそれはじゅうぶん承知の上だったのかもしれない。
リボルバーのラインナップで他社に負けるワケにはいかない、というプレッシャーが、この製品を世に送り出したと言えるのではないだろうか。
トイガンとしては唯一無二の7連発リボルバー。6発シリンダーを見慣れた目からは、フルートの位置が中途半端でシリンダーが定位置に固定されていないようにも見える。
キリリとエッジの立ったフロントサイトと、滑らかな曲線のマズルクラウン。リボルバーのコクサイらしい、リアルな再現性だ。コクサイ独自のホップ機構、スナイピングシステムも搭載している。
本家S&W同様、コクサイのKサイトも定評があった。上下左右の調整が可能で、クリック感も小気味よい。
フレームに鋳込まれたインサートの影響で、ハンマー先端とハンマーノーズがかなり短い。シリンダーラッチ(サムピース)がセフティになっており、斜めに動かすとセフティオン。
底部の刻印までリアルに再現されたパックマイヤーラバーグリップ。穴の奥に見えるバルブからガスを注入する。
7つの穴が開いたシリンダー。前面のメッキの質が安定しなかったようで、メッキのかかっている部分とかかっていない部分があるのは実に残念。
フルムーンクリップにはめ込まれたカートリッジ。M29/629は本来.44マグナム弾仕様だが、この7ショットは.357マグナム弾カートとなっている。現在ならばM686 Plusといったところだろう。
ブレットに相当する部分がむき出しのラバーパッキンのため、シリンダーへの挿入にはコツがいる。素早いリロードはまずムリだと感じるレベルだ。自主規制前には真鍮製の弾頭部がついていたが、スリーブインサートをシリンダー内に埋め込んだためにこの形状となった。
ビロード地のような内箱で、なかなか高級感のあるパッケージ。クラシックなモデルだったらより映えたことだろう。パッケージにはASGKの認証シールが貼られている。
マニュアルのパーツリストを見るかぎり記載はないが、一応インナーバレルは分解不可になっている。マニュアル.PDF (2.2MB)
装弾数6発と7発のM29/M629のガスガンは、その後20gのCO2ボンベをグリップ底部にねじ込む外装方式でCO2ガスガン化された。当時の広告には1カートリッジで300発発射可能と謳われている。
DATA
発売年 | 1994年4月末 |
発売時価格 | ¥15,700 (M29 4インチ) ¥15,900 (M29 6インチ) ¥15,700 (M629 4インチ) ¥15,900 (M629 6インチ) |
全長 | 実測 234mm |
重量 | 実測 761g |
バレル長 | 95mm (4") / 145mm (6") |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 7発 |
平均初速 | 43.2m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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