KHC マーベリックM88
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
KHCは、国内でもっとも歴史のあるエアガンメーカー、啓平社のブランド名だ。
啓平社は佐々木銃砲店として昭和10年に創業し狩猟用空気銃などを製造。戦後社名を啓平社と改め、BS銃、デタッチャブル・アッセンブリーシリーズ等をOEM製造してきたが、1993年に自社エアソフトガンブランドのKHCを立ち上げた。その中でもこのマーベリックM88は異色の存在だったと言えるだろう。
サバゲーブーム全盛期、ゲーマーたちは弾幕を張る事に血道をあげていた。
外部ソースBV式のフルオートは、やがてアサヒM60マシンガンという究極の形を生み、その弾幕の前には対抗手段がないとさえ思えたものだ。
だが、そこに突如現れた救世主こそ、マーベリックM88だったのである。
4つのシリンダーとピストンを内蔵し(スプリングは1本)、それぞれに独立した4本のインナーバレルを持つという常識破りのデザイン。
ピストルグリップ型のフォアエンドを引いてコッキングすれば、一気に4発のBB弾が発射される。
1本のバレルから複数弾を一列発射するタイプのショットガンとは違い、充分なパワーを持ったまま、弾幕を張ることが可能になったのだ。
給弾は自重落下式で約252発の装弾数を誇り、63ショットもの発射が可能だ。
エアコッキングなのでパワースースは不要、これで2万円を切る低価格だったのだから、ゲーマーたちが放っておくはずはなかった。
しかし、フィールドを席巻するかに思えた掟破りの名銃も、電動ガンの進化によってやがて姿を消してしまったのである。
実銃のマーベリックM88は、モスバーグM500をそのまま内蔵してブルパップスタイルにした、いわば改造銃のような物だ。
はからずもこのスタイルはエアガンに向いていた。キャリングハンドルがBB弾マガジンになり、バーチカルフォアグリップによってコッキングが容易に。
アウターバレルの中には4本の独立した真鍮製のインナーバレル。これにより、パワーを落とす事なく4発同時発射が可能となった。
リアサイトをスライドさせてBB弾を流し込む。自重落下方式だが、思いきりコッキングする際に銃が「揺さぶられる」おかげで給弾は確実。
コッキングのストロークは約70mm。シリンダー4本分のスプリング(1本)はかなり強く、コッキングには力が必要だが、大型フォアグリップのため決してやりにくくはない。1度コッキングしたらロックが掛かるアクションバーロックの仕組みもある。
刻印には右利き専用と書かれているが、言うまでもなくエアガンの場合は左右両用でOKだ。
オリジナルのモスバーグM500にはないグリップセフティと追加されたクロスボルト式セフティ。どちらもしっかりと機能する。
ローディングポートにはシェルキァリアーが再現されている。エアガンの機能には関係ない部分だけに嬉しいポイント。
バレルヒートガードに打たれたリアルな刻印。長さが2-3/4から3インチまでのショットシェルが使用可能という表記だ。
DATA
発売年 | 1993年 |
発売時価格 | ¥19,800 |
全長 | 実測 722mm |
重量 | 実測 2,890g |
バレル長 | 360mm×4本 カタログ値 |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 252発63ショット |
平均初速 | 85.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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