カナマル チャーターアームズ .44 ブルドッグ
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
カナマル商事は、かつて東京錦糸町にあったジョークショップというオモチャ&トイガンショップを経営していた会社である。
製造メーカーではないが、カナマルブランドとして数種類のエアガンを発売していた時期があった。
それらはすべて、現K.T.W.社長の和智香氏が発案し、伝説のトイガンデザイナー、故六人部登氏が試作していた物だ。
ある意味、最強の布陣でのぞんだ企画だったのだが、残念ながら営業的にはどれも失敗に終わってしまった。
中でも代表的な製品がこのブルドッグシリーズで、トイガンとしては初のモデルアップだったということもあり、当時はかなり話題になったものだ。
しかし、「カセットマガジン方式」という独特なデザインを採用したため、ガンファンにはあまり受け入れられなかった。
詳しくは写真とキャプションをご覧頂きたいが、これは、外から見えるシリンダー部分が実は完全なダミーというものだ。
つまり、リボルバーなのにシリンダーが回転しないということで、当時のガンファンがガッカリしてしまったというのもうなずける。
だが、それこそがプロデュサーである和智氏の狙いであり、「他のメーカーがモデルアップしない銃を独自のメカで作る」というコンセプト通りだったというのだから面白い。
結果的には、現在のK.T.W.が掲げる「未開の銃に挑戦」というモットーにもつながっているわけで、そう考えると、このブルドッグが果たした役割は大きかったと言えるのだ。
カナマルでは左側面のサイドプレートを外す事で分解可能な構造になっているが、実銃はサイドプレートのないソリッドフレーム構造。
.44スペシャルという大口径カートリッジを使用するため、5連発ながらシリンダーがかなり太い。この独特なマッチョスタイルがブルドッグという名前の所以だ。
サタデーナイトスペシャルと呼ばれる安価な銃の中では高級品の部類に入るブルドッグ。フルアジャスタブルのリアサイト(カナマルでは無可動)がそれをよく表している。
シリンダーラッチを押すとシリンダーの左半分だけがスイングアウトし、カセットマガジンが挿入できる。
カセットマガジンを取り外し、内部ユニットを横から見たところ。基本的にはスライド固定式ガスガンのようなメカだ。
シングルアクションでハンマーを起こすか、ダブルアクションでトリガーを引くと、ノズルが前進してカセットマガジンからBB弾を1発だけチャンバーへ押し込む。
スナブノーズリボルバーとしては大きく握りやすいグリップ。余剰パーツのメダリオンがCAWのモデルガンにそのまま付属したというのは興味深い後日談だ。
どう見てもダミーとは思えないシリンダー。こうしたデザインに和智氏のこだわりが感じられる。トリガーガードは金属製の別部品。
カセットマガジンの装弾数は10発。これが本当のシリンダーであり、外観はリボルバーのまま、ケースレスとして実射性能を上げるためのアイデアだった。
アウターバレルの違いで数種類のバリエーションがあった。右からアンダーカバー、オリジナル、トラッカー6インチ。
DATA
発売年 | 1988年1月 .44 ブルドッグ 1988年4月 .357 トラッカー 4インチ 1988年5月 .357 トラッカー 6インチ 1988年6月 アンダーカバー 1988年9月1日 ターゲットブルドッグ |
発売時価格 | ¥5,800 .44 ブルドッグ ¥6,800 .357 トラッカー 4インチ ¥6,900 .357 トラッカー 6インチ ¥5,800 アンダーカバー ¥6,900 ターゲットブルドッグ 予備カセットマガジン3個¥450 |
全長 | 実測 197mm |
重量 | 実測 365g |
バレル長 | カタログ値 65mm アルミ製 |
発射方式 | ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 カセットマガジン方式 |
平均初速 | 38.5m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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