JAC イングラム MAC10
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
今回紹介するイングラムMAC10は、1980年代にBV式フルオートガスガンで一世を風靡したJACの製品だ。BV式のガスガンはインナーバレルが長くて重い方が初速が上がるため、ハイパワー全盛だった当時、あまり小型化されることは少なかった。しかし、バリエーションを増やしたり価格を抑えた製品を作ることで、JACとしてはより広いユーザーの獲得を目指していたのかもしれない。
基本構造としては前述の通りBV式だが、インナーバレルをプラスチック製にしてリコイルスプリングも弱い物を使うことで、低圧でも作動するというのが大きな特徴だった。かなりの高圧をかけなければ作動しないという極悪銃も多かったあの時代では、誰もが気軽に撃てるフルオートガスガンが逆に貴重だったとも言える。
外装は単純な箱形の2ピース構造でしかもフルオートオンリー、コスト面でもだいぶ抑えられていたはずで、ベーシックモデルで¥5,900という低価格は衝撃的だった。JACの狙い通り、かなりのヒット作となったようだが、安い製品が行き渡ってしまうと高価格帯の製品が売れなくなってしまうのもまた事実だ。この数年後、H&K MP5シリーズで3バーストメカを実現させたり、トンプソンやBARなど全金属製の超高級品であるノスタルジアシリーズを発売するなど、JACの迷走がはじまってゆくのである。
なお、このコーナーで紹介している他のBV式ガスガン同様、今回の個体も内部ユニットを破壊してあるため、発射不能な状態である事を補足しておきたい。
実銃は元アメリカ軍人だったゴードンイングラムが開発したマシンピストルで、MAC10はガバメントやトンプソンSMGなどと同じ.45ACP弾を使用する。高い連射速度が特徴だが、JACのガスガンも実銃に迫るハイスピードフルオートが売りだった。
JACガスフルオートの第8弾、MAC10はベーシックモデルとオプションパーツ豊富なデラックスモデルが88年頭に発売された。その人気も後押しとなって、後にスチールバレル搭載のマキシマム、スーパーブースター付属のアタッカーSPが発売された。
インナーバレルが奥まっているため、銃口はかなりリアルな雰囲気。オールプラスチック製だが、ストラッププレートのみスチールプレス製。
まるで本当にプレスで打ち抜いたようなフロントサイトも射出成形のプラスチックパーツ。ダミーのボルトハンドル同様、本体に接着されている。
ラバーシートが巻かれ手触りの良いサプレッサー。ベーシックモデルには付属しなかったが、これがなくてはイングラムらしくない。
サプレッサー内部には穴が開けられ、おそらくスポンジなどが内蔵されていたはずなので、かなりの消音効果があったと思われる。
ヘビがモチーフになったRPBインダストリーズの刻印がリアル。全体的にシボ加工がほどこされており、サンドブラストに比べると若干安っぽいものの価格を考えれば十分だろう。
グリップフレームとトリガーガードの溶接跡も再現されているが、もちろん一体成形。フルオート射撃のみなので、セレクターもダミーだ。
伸縮式のストックは亜鉛合金製で、これもベーシックモデルには付属していなかった。レシーバー後面にエアホース接続用のプラグが突出している。88年秋に発売されたバリエーション、アタッカーSPには、スーパーブースターシステムと呼ばれるガス缶を8本連結する外部ソースシステムが付属した。
マガジンはプラ製。リップもプラの弾性を利用した簡易式のため耐久性は低かったが、デラックスには金属製の内蔵チューブが前後に2本入った60連マガジンが付属した。
■BV式ユニットとは
アサヒファイヤーアームズが開発し、1985年にバトルマスター(BM-1)に初搭載されたガスフルオート発射機構。チャンバーに給弾されたBB弾はOリングで保持され後方からガスに押され、インナーバレルごと前へ押される。チャンバー内径が広がったところまで前進するとOリングが広がりBB弾を発射。弾が発射されユニット内部が減圧するとインナーバレルのリターンスプリングによりチャンバーが元の位置へ戻り再びBB弾を給弾する。トリガーを引き続けガスが放出され続ける限りこの作動を繰り返しフルオート射撃を行う。
DATA
発売年 | 1988年頭 |
発売時価格 | ¥5,900 (ベーシックモデル) ¥12,800 (デラックスモデル) ¥14,800 (マキシマム) ¥18,900 (アタッカーSP) |
全長 | 実測 302mm / 554mm (ストック伸長時) 792mm (サプレッサー装着時) |
重量 | 実測 1,035g / 1,325g (サプレッサー装着時) |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 外部ソース式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 30発/60発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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