JAC AR15A2 + M203グレネードランチャー

JAC AR15A2 + M203グレネードランチャー

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

このコーナーでは過去にも「イチロク戦争」という言葉を紹介した。1980年代後半から90年代にかけて、各メーカーがこぞってM16系のエアガンを製品化していた頃、専門誌などが好んで使っていた表現だ。

その先頭で常に業界をリードしていたのがJACというメーカーで、今回紹介するAR15A2とM203グレネードランチャーは、そんなイチロク戦争の最盛期を代表する製品だといえる。

本体となるAR15A2は外部ソースを使用するBV式のガスガンで、当時としてはもっともスタンダードなフルオートのメカだった。モデルガンや電動ガン(当時はまだ存在しなかったが)と違い、内部メカに由来するディフォルメがほぼ必要ないBV式ガスガンでは、外観を最大限リアルにすることが可能だ。いま見てもJAC M16系のリアルさはかなりのもので、大ヒットしたのもうなずける。

そこに満を持して投入されたのがM203グレネードランチャーだ。基本的な構造は蓄気式カートリッジのガスガンで、グレネードの薬莢にガスをリキッドチャージし、発砲スチロール製の弾頭を発射する。安全対策として、蓄気式カートリッジのバルブをファイアリングピンで叩くのではなく、トリガーと連動して「押す」構造になっているところがミソだ。

グレネードは10mほどしか飛ばなかったようだが、それでも、生ガスを吹きながらシュポーン!と飛んで行く様は面白く、ベトナム戦争スタイルのサバイバルゲーマーたちには大いにウケた。当時、製品化されたM203グレネードランチャーにはLS製のダミーモデルもあったが、JACの製品は金属が多用されており質感がリアルだったため、ディスプレイ派にもかなり売れたようだ。

BB弾を撃ち出すエアガンだけではなく、こういったエアガン本体以外の製品が大いに売れたというのは、当時のエアガン業界全体に余裕があった証拠だといえるだろう。

なお、このコーナーで紹介している他のBV式ガスガン同様、今回の個体も内部ユニットを破壊してあるため、発射不能な状態である事を補足しておきたい。

サイドビュー左
フルサイズアサルトライフルのAR15A2にM203グレネードランチャー。なかなか仰々しいというか、迫力満点の趣だが、システマティックに展開していく銃というのはいつの時代でもワクワクするものだ。

サイドビュー右
ハンドガードはグレネードランチャーを装着するためのM203専用付属品。本来のAR15A2には丸断面のハンドガードが付属する。AR15A2のレシーバーにはエジェクションポート後方に三角形のケースリフレクターがなく、M16A1とA2の中間的ディティールを兼ねそなえている。

刻印
刻印はAR-15 A2の民間仕様バージョン。本モデル以外にもミリタリーモデルやカービンモデルなど、多くの"イチロク"がバリエーション展開された。

フラッシュハイダー
フラッシュハイダーは下側がふさがったバードケージタイプ。フロントサイトベースの丸みを帯びた質感など、JACの再現力の高さがうかがえる。M203の太いバレルはABS製。

リーフサイト
中近距離でM203を使用する際に起こして使うリーフサイト。切り欠きの部分にフロントサイトを合わせるわけだが、当然、銃はかなり上向きになる。

クアドラントサイト
最大400m地点まで狙える分度器のようなクアドラントサイト。実際にどれほど正確だったかは分からないが、ベトナム戦争当時、上空から擲弾を降らせるという戦法はかなり効果があったようだ。

M203の機関部
M203の機関部はアルミダイキャスト製だが、発売後まもなくしてMLP(メタル・ライク・プラスチック)と呼ばれる高比重プラスチック素材に変更された。AR15A2のレシーバーも本モデルから新採用されたMLP製で、色味と質感はほぼ区別がつかない。AR15A2以降、JACのガスガンにはMLP素材が多く採用されていく。

ファイアリングピン
トリガーを引くと連動して突き出てくるファイアリングピン。これがグレネードのリム中央にあるバルブを開放することで弾頭が飛んでいく仕組み。

グレネードの装填
グレネードの装填と排莢はバレル一体のファオエンドを前方にスライドさせておこなう。

グレーネード弾
グレーネードのリム中央に見えるのがリキッドチャージの注入バルブ兼放出バルブ。ケース内のノズルからガスを放出し、発砲スチロール製の弾頭を飛ばす。

マガジン
密閉型のBV式なので、マガジンとユニットの接合部はOリングで気密がシールされる。

DATA


発売年 1988年12月24日 (M16A1)
1990年4月末 (M203グレネードランチャー)
1990年7月26日 (AR15A2)
発売時価格 ¥24,800 (M16A1)
¥19,800 (M203グレネードランチャー)
¥27,800 (AR15A2)
全長 実測 1,005mm
重量 実測 4,360g
バレル長 -
発射方式 外部ソース式ガス (AR15A2)
ガス蓄圧式 (M203)
使用弾 6mmBB弾 (AR15A2)
40mm発砲スチロール弾 (M203)
装弾数 60発 (AR15A2)
単発 (M203)
平均初速 -

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/09/13


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