ファルコントーイ HK P9S
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ファルコントーイのエアガンを紹介するのは、これで7回目だ。ご興味のある方はぜひ過去の記事をご覧いただきたいが、レポートするボク自身、毎度毎度、ファルコントーイのレアな機種選定には驚かずにいられない。
当時、大定番の銃といえば、ライフルならM16系、ハンドガンならガバメント系と相場が決まっていた。オートマチックピストルを製品化するなら、ガバメントさえ作っておけばある程度の売り上げが見込めたわけだ。
だが、ファルコントーイというメーカーは、そういう「普通の銃」には最後まで手を出さなかった。業界のセオリーを完全に無視し、あえて超マイナーなHK P9Sをモデルアップしたファルコントーイの大英断には、発売から37年が経過した今でもボクは拍手を送りたい。
実銃のP9Sはポリマーフレームの先駆者的な存在で、ローラーロッキングを採用するなど、意欲的な製品だったことは確かだ。しかし、軍や警察が採用したわけでもなく、まして映画スターが使うような銃でもない。全体的なデザインはどこかアカ抜けず、日本のガンファンにあまりウケないであろうことは容易に想像できる。
エアガンとしてのデザインはカート式のプッシュコッキング、スプリングの力でスライドが後退し空薬莢がエジェクトされる、いわゆる疑似ブローバック機構をそなえている。これは当時としてもすでに使い古されたメカであり、目新しさの感じられないものだった。
実射性能に特徴がなく、まして人気のない機種選定ということで売れ行きは伸びなかったようだが、それでも後にバレルウェイトを装備したフレームシルバーのP9Sカスタムがラインナップに追加され、一定数のファンがいたことも確かだ。
当時のエアガン業界には、こうしたモデルを受け入れるだけの余裕があり、またファルコントーイのように、ある種の矜持を持って製品化にのぞむメーカーもちゃんと存在していたのである。
トリガーガードやグリップの形状に独特のクセがあるHK P9Sをうまく再現しているが、よく見ると実銃より若干貧弱な印象を受ける。だがそれでも、P9Sのトイガンとしては現在にいたるまで唯一無二の貴重な存在なのだ。
ABS樹脂製のアウターバレルはやや細身でクラウンがない。フレーム先端のブ厚さは実銃と同じ雰囲気を感じさせる部分だ。
リアサイトは固定。バレルウェイト付きのカスタムモデルには、ターゲットサイトが搭載されていた。ストライカー式のポリマーフレームピストルと言えばグロックが有名だが、その20年以上も前にP9Sは登場していた。※実銃のP9SはDAの内蔵ハンマー式
スライド側面のセフティレバーはダミー。トリガー上、スライドストップのように見えるのが実際のセフティ。セフティオンでスライドとトリガーをロックする。
グリップは実銃に比べやや薄くボリュームがなく、サムレストの形状も異なっている。トリガー後方のレバーは実銃ではデコッキングレバーだが、ファルコンではマガジンキャッチ。フレーム下部のマガジンキャッチと連動して動く。
カート式疑似ブローバック機構のため、このアングルからのながめは素晴らしい。カートは同社製MP5やウッズマンなどと共用。
チャンバーは二重構造になっており、装填時、チャンバーがカートを迎えに行くような格好になる。
スチール製のシングルカアラムマガジン。このカートはP9SのBB弾用ではなく旧タイプの6mmつづみ弾仕様(おそらくMP5かウッズマン用)のため、カート先端にパッキンがない。また、1986年にはP9Sカスタムをベースとした装弾数25発のケースレスタイプも発売される。
DATA
発売年 | 1985年12月下旬 (P9S) 1986年2月上旬 (P9Sカスタム) 1986年5月下旬 (ケースレスタイプ) |
発売時価格 | ¥5,000 (P9S) ¥6,000 (P9Sカスタム) ¥5,200 (ケースレスタイプ) |
全長 | 実測 202mm |
重量 | 実測 398g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プッシュ式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 8発+1 |
平均初速 | 45.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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