アサヒファイヤーアームズ WA2000
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
1990年代初め、東京マルイが電動ガンを発売して人気を博すと、各トイガンメーカーは後を追うように電動ガン開発に躍起になった。その中でもアサヒファイヤーアームズ(以下アサヒ)の電動化アプローチはちょっと変わっていた。
アサヒといえば、BV式フルオートガスガンを最初に世に送り出したメーカーとして、エアガン界の伝説となっているのはご存じだろう。
アサヒは大型の高級モデルばかりをラインナップしていたが、実銃の製造販売業者(現在も営業中)として在日米軍基地にも出入りしていた関係上、M60やM249ミニミなどの採寸取材も容易だったそうだ。
今回紹介するWA2000はワルサーの狙撃専用オートマチックライフルで、エアガンとしてモデルアップするなら命中精度にこだわらなければ意味がない。それまでほとんどBV式のフルオートばかりだったアサヒにとって、これはかなりのチャレンジだったはずだ。
そこでアサヒが導き出した答えは「電磁バルブ」だ。今でこそ海外製品やカスタムガンに使われることもある電磁バルブだが、当時のガンファンにとっては全く未知のメカニズムだった。
アサヒが電磁バルブを採用したのは、電気的に解放されたバルブから放出されるエアーは常に一定であり、安定した初速と命中精度の向上につながる、という発想からだと考えられる。
しかし、実際にはさほど命中精度が上がらず、オプションとして予定されていた電磁バルブの開閉時間をコントロールする基盤も発売されなかった。
くわえて、当初採用するはずだったAPS2のチャンバーパッキンが、諸事情によりアサヒ製M134ミニガンの硬いものに変更、結果的に弾詰まりなどのトラブルを招いてしまったのは残念だ。
ところで、前述の通りアサヒは実銃の業者でもあったわけだが、WA2000は国内で販売されていた実銃を採寸して製作されたのではないか、とボクは思っている。
というのも、こうした軍用ライフルであっても当時は国内で狩猟用として普通に所持許可が下りていた(現在は不可能)からだ。
そして、WA2000をハンティングライフルとして実際に所持していた、という人物を、ボクは知っている。
もしもその人がアサヒからWA2000を買ったのだとしたらすべて辻褄が合うのだが、いつかその人物に会う機会があれば、聞いてみようかと思っているのだ。
箱型レシーバーに吊り下げ式バイポッドという、独特なフォルムのWA2000。アサヒは実銃の持つ雰囲気を全金属製という手法で見事に再現していた。
パワーソースは外部とリキッドチャージの2ウェイで、ハンドガード先端から飛び出しているレシーバー下部よりガスを注入する。
サプレッサーはデラックスタイプのみサイレンサー機能がついていた。内部をのぞくと実際に消音のための穴が開いている。
ヤジロベエのような吊り下げ式のバイポッド。銃身に外圧をかけず完全なフリーフローティングとすることで命中精度向上につながる。
上下調整可能なバットプレート。デラックスはチークパッドの調整も可能。
ウォールナット製のストックには競技銃独特の滑り止め加工がほどこされている。セミオートのためセレクターはなく、スライド式のセフティレバーのみ。
外部ソース用のホースはストック後部の穴から差し込むデザイン。マガジン挿入口にはスチールプレス製のハウジングが内蔵されている。
チャンバーからは電磁バルブの電気コードが見える。
ハンドガードを取り外して電磁バルブを作動させるための8.4Vニッカドバッテリーを接続、トリガーを引くとローディングノズルが前進しBB弾をチャンバーへ送り、電気的にバルブが解放され弾が発射される仕組み。バルブの開放時間は内蔵ICで管理されている。
デラックス版のアウターバレルはフルート加工がほどこされたアルミ削り出し。スタンダード版はABS製だった。
マウントベースもアルミ削り出し。かなり高い精度でスコープがマウントできる。
スチールプレス製のマガジン。しっかりとしたリップと、フォロアーのボールベアリングが見える。
発売当時付属していたビデオマニュアル。演出が独特。
DATA
発売年 | 1993年末 |
発売時価格 | ¥198,000 (スタンダード) ¥260,000 (デラックス) |
全長 | 実測 965mm |
重量 | 実測 6,470g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 電磁バルブ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:FIRST
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