ビッグアウト DTM デジタル トリガー システム マッチを組み込む

ビッグアウト DTM デジタル トリガー システム マッチを組み込む

千葉県松戸市のホビーショップ、ビッグアウトが開発した電子制御トリガー、DTM Rev.2(デジタル トリガー システム マッチ)を電動ガンに実際に組み込んだレビュー。

千葉県松戸市のホビーショップ、ビッグアウト
千葉県松戸市のホビーショップ、ビッグアウト。閑静な住宅街にある創業15年のショップだ。

店長の大出さん店長の大出さん。そのお名前から大(ビッグ)出(アウト)、ビッグアウトという店名の由来。

DTMとは?

まずはDTM(デジタル トリガー システム マッチ)とはなんなのか?
電動ガンのトリガーは物理的なスイッチで電流のオンオフを行っている。トリガーを引けば電気が流れてモーターが回転してギアを回し、ピストンを引いて空気を押し出す。
このトリガースイッチを電子制御パーツのDTMに交換することで、トリガーレスポンスを向上するほか、様々な機能を盛り込むことができるという特徴がある。

DTMの機能
1.ピストン停止位置の制御

ピストン後退位置を制御できるので、トリガーを引いてから弾が発射されるまでのタイムラグ(ロックタイム)を短縮できる。

2. 電子バーストコントロール
電子制御により発射弾数をコントロールできるので、組み込むだけで3点バースト射撃が可能。

3. サイクルコントロール
フルオート時の回転数を制御して通常時の回転よりも遅くすることが可能。

4. リアルカウントモード
射撃数を電子的にカウントできるので、20発か30発撃ったら自動的にメカユニットを停止させることができる。3秒後に自動復帰するパターンと、ボルトキャッチにマイクロスイッチを組み込み、停止後にボタン操作で射撃を再開するオプションがある。

これらの機能をメカボックスの内部に一式収めることができるのもDTMの特徴。従来のFETのようにメカボ外部にユニットが出ないというのも大出さんのこだわりのひとつ。

現在DTMは東京マルイの次世代電動ガンと、いわゆるスタンダード電動ガン(東京マルイ、VFC、G&Gにて対応確認済み)に対応している。今のところメカボックスは次世代のVer.2、スタンダードのVer.2のみの対応だが、現在Ver.3用も開発中とのことだ。

お店の2階の作業場にて組み込み
今回はお店に伺って、お店の2階の作業場にて組み込みの模様を見せていただいた。
作業するのはビッグアウトと協力関係にある、佐川電子の高橋さん。
また、今回組み込むのはYASの私物のG&P製の電動ガン、LMTタクティカルライフル 7" CQBを持ち込みでおこなった。

手早く分解していくまずは電動ガンを手早く分解していく高橋さん。もうこれまでに200丁近くのDTMを組み込んできたんだって。

G&P製のメカボックス内部
G&P製のメカボックス内部。赤いのが元から入っているトリガースイッチ。これを取り外してDTMに交換するのだ。

DTM本体
DTM本体がコレ。小さい基板上にIC、FET、コンデンサ、抵抗など、約20個のチップが載っている。緑色のは極小のヒューズ。ちなみにFETとは電流を制御、オンオフするための電界効果トランジスタのこと。

すべて手作業の半田付け
基盤に載っているチップは高橋さんがすべて手作業で半田付けしているという。ってこの小さいチップを!?

チップ類
チップ類はこんなに小さい。左上から抵抗、コンデンサ、セクターギアのカム検出用マイクロスイッチ、トリガー検出用マイクロスイッチ。

2つのマイクロスイッチによってギアの回転位置とスピードを検出し電流をコントロール
セクターギアにはカムが付いていて、通常だとこのカムがカットオフレバーを押し上げてトリガースイッチを機械的にオフにするのだが、DTMではカットオフレバーを必要とせず、2つのマイクロスイッチによってギアの回転位置とスピードを検出し電流をコントロールしている。

セレクター部分もマイクロスイッチによって制御
セミ/フルオート切り替えのセレクター部分もマイクロスイッチによって制御。
セレクタープレートが2つのスイッチに接触することで判別している。もちろんセーフポジションでは従来通りトリガーが物理的にロックされる上に、回路上も電気の流れをカットする2重の安全構造となっている。

DTMの基盤を組み込む
DTMの基盤を組み込むとこんな感じ。
矢印の部分がトリガーと接触するトリガー用マイクロスイッチ。トリガーの後退中どの位置でスイッチが押されるかは、トリガー側にプラ板を張って厚みを調整する。またトリガーストロークを短くするためにメカボックス側にもプラ板を張って調節することで、トリガーストローク2mmといった超フェザータッチのトリガーフィールを再現することも可能。

電力供給用の細いケーブルDTMは基盤に電力が必要なのでバッテリーから電力供給用の細いケーブルをマイナスケーブルに半田付けする。

ICへのプログラム書き込みの作業
ICへのプログラム書き込みの作業も見せていただいた。もちろんパーツ出荷時にはプログラム書き込み済みなので、自分でDTMを組み込む際にはこのような作業は必要ない。しかし細かい作業だ。

で、実際に組み込んでみたところ、いくつか問題が発生した。
これはG&P製のメカボックスに由来するので、組み込み確認済みの3メーカーについては発生しないものと思われるが、メカボックスパーツの個体差やバージョンによって微妙な調整が必要となる場合があるのでこのレビューでも述べておこう。

DTMをベストセッティングするために

まず問題となったのは基盤が邪魔をしてトリガーピンが入らないということ。
トリガーピンが貫通する穴基盤にはトリガーピンが貫通する穴があけられているのだが、基盤はマルイ純正のメカボックス用に作られている。
他メーカーのメカボックスはギア軸位置やピン穴の位置が微妙にズレてるものがあり、今回組み込んだG&P製ではトリガーピン穴位置がずれていた。これは基盤の穴を少し削ることで回避できた。

つづいてピストンの後退停止位置の制御だが、これがイマイチ安定しない。
原因とされたのはモーターとべベルギアとスプリング。

モーター スパーギア
まずモーターだが、もとから入っていたのがG&PブランドのM120ハイスピードモーター。
ビッグアウトによると海外製モーターには品質の悪いものがあり、このモーターも電流制御するDTMには向いていないとのこと。狙ったところでモーターの回転を止めにくいのだそう。
ということで最も安定するという東京マルイ純正のEG1000ハイトルクモーターに換装することにした。

つづいてはべベルギア。逆転防止ラッチの切り欠きをみると2つしかない。これではいくら的確にモーターを停止させてもべベルギア半周分の誤差が出てしまうそうだ。これも6つの切り欠きがあるカスタムギアに変更した。さらに言えばハイスピードギアも制御ミスの原因となるので純正比のギアを使用することを勧められた。

スプリング
さらにスプリング。G&Pのメカボには不等長のスプリングが入っていた。しかし引く力と伸びる力が異なる不等長スプリングもDTM制御の問題となる場合があるという。これもマルイ製のスプリングに交換。
さらに8mmベアリングを使用しているG&Pメカボックスではギアがオーバーラン、セミオートがダブルタップになってしまい、これも安定動作の障害になるとのことでメカボックスも交換することに...。

結局のところ、マルイ純正のメカボックスに組み込むのが一番良いという結論になった。
通常マルイ純正の次世代電動ガンならば30分ほどで終わるという組み込みもこの日はすでに3時間が経過。

今回組み込んでいただくこの銃は、YASがサバゲーやシューティング使用するプライマリウエポンなだけにベストセッティングにして貰いたいので、この日は電動ガンをビッグアウトさにんに預けて、初速調整なども含めて引き続き調整してもらうことになった。

DTMがベストセッティングされた電動ガン
この日、DTMがベストセッティングされた電動ガンを何丁か見せていただいた。
これがノーマルとは比較にならないほどのトリガーレスポンス!!
アッパーを取り外してピストンの後退位置を見ると約1cmの範囲でピストンが後退、停止する。
この状態から次弾を撃つのでタイムラグが少なくなるというワケだ。
セミオート射撃では電動ガンのいわゆるウィッというギアの回る音がほとんどせずにスパンッと発射されるのはとても気持ちが良い。

また、電子バースト射撃やリアルカウントコントロールといった機能も面白い。電子バーストは2発~4発に対応しており、発射数で制御するのではなく、8段階のタイミングで制御する。

サイクルコントロールは例えば7.62mmのアサルトライフルなど、実銃の低回転数に近づけたいといったニーズに対応できるだろう。

DTMのプログラムモード設定方法

DTMのプログラム設定は、まずトリガーを引いたままバッテリーを接続する。
そうするとブーっとブザーが鳴るのでこれが設定モードに入ったという合図。
続いてトリガーを一度引くたびに4つのモードが切り替わる。
1.バッテリー選択(8.4V/11.1V) → 2.ピストン後退位置設定(8段階) → 3.バースト設定(8弾かい) → 4.サイクル設定(4段階) → 5.リアルカウント設定(off/20発/30発) となる。
各モードでトリガーを引ききればそのモードを選択したことになり、各モードでもトリガーを引いて段階を設定する。結構面倒だが、設定は一度してしまえばあまり変更することもないだろう。

なお、バーストモードのみ、セレクターをセミオートにした状態でトリガーを長引きすれば切り替えることができるようになっている。その後セレクターをフルオート位置にしてバースト射撃できる。
さらにセミオートでトリガーを引き続ければパスンッと単発で発射されピストンが前進位置で停止する。
スプリングを開放した状態で保管できる嬉しい機能だ。

 

実際にDTMを組み込んでもらった感想としては、自分で組み込むにはかなり難しいかもしれない、上級者向け。ただ、ショップに組み込んでもらってベストセッティングが出れば、これほどまでに楽しい機能はないというくらいに面白いカスタムパーツだといえる。
これまでもFETや電子トリガーなどの商品はなかったわけではないが、こういったスタンダード電動ガンの基本性能を向上するカスタムパーツはもっとあっても良いと思う。
射撃リコイルやガンサウンドといったギミックも良いけれど、今後こういう基本性能向上によるスタンダード電動ガンの高級化という方向性がトレンドになるかもしれない。
過去のバージョンのDTM
この基盤は過去のバージョンのDTM。一番右の最新版まで進化の過程がうかがえる。そして現在もなお、DTMは進化し続けている。現在のリビジョンは2だが、今後3、4と進化していくことだろう。



DTMはこのレビュー執筆現在、スタンダード電動ガン用のリビジョン2がテスト販売されており、価格は20,790円(税込)となっている。

ビッグアウト 公式サイト

2013/10/31

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