最新民間AR-15 カスタムライフル
Text by Jien
あなたは、お手持ちのライフルをカスタマイズする際に、何を参考にしますか? 実在する軍隊や特殊部隊、映画やテレビゲームのヒーローなど、昔から様々な人が最新のカスタマイズを広めてきました。
ここ数年間は、「タクティカル・トレーニング」、いわゆる「タクトレ」の流行に伴い、M4カービンなどのAR-15系ライフルを民間仕様風にカスタマイズすることがエアソフトガンオーナー達のトレンドの1つになっています。中でも特に人気を集め、参考とされるのが、タクトレインストラクターなどの著名なプロフェッショナル達がカスタマイズし使用するライフルです。
今回は、そのようなプロ仕様のライフルの中から、近年話題を呼んだ5つをご紹介します。
LaRue Tactical | PredatOBR Costa Edition 5.56
公式サイト:http://www.laruetactical.com/costa-556?sort=popular
「PredatOBR Costa Edition 5.56」は、元マグプル・ダイナミクス(Magpul Dynamics)所属、現コスタ・ルーダス(Costa Ludus)代表の人気インストラクターであるクリス・コスタ(Chris Costa)氏が、ラルー・タクティカル(LaRue Tactical)社と共同開発したライフルです。ベースとなったPredatOBRは、完璧なバランスを追求するコスタ氏の要求に基づいて、同社のPredatARの軽量なシャーシに、同じく同社のOBRの信頼性の高いバレルを組み合わせたことで誕生しました。コスタ氏の名を冠したこのCosta Editionは、レシーバー左側面にコスタ・ルーダスのロゴが刻印され、表面はFDEカラーで仕上げられています。
これまでに500挺が限定生産・販売されましたが、現在は既に完売しています。価格は2,895ドルです。
パーツ構成は以下の通りです。
ベースガン:LaRue PredatOBR
バレルレングス:14.5インチ
グリップ:Magpul MIAD
ストック:Magpul CTR
マズルデバイス:SureFire MB556K-PN(固定)
トリガーグループ:Geissele SSA
ガスブロック:LaRue PST
War Sport Industries | LVOA-C
公式サイト:http://warsport-us.com/
2014年4月、コスタ・ルーダスはウォー・スポート・インダストリーズ(War Sport Industries)社との業務提携を発表しました。それ以来コスタ氏は、ウォー・スポート社を代表するライフルである「LVOA-C」(Low-Visibility Operations Application - Carbine)を頻繁に使用しています。
LVOAの最大の特徴は、バレルの先端まで覆う長いハンドガードが装備されていることです。この長さには、発射時のマズルフラッシュを最小限に抑えることができるという利点があります。また、ハンドガードに編み込まれたレイルバンジーと呼ばれるショックコードには、グリップ力を高めたり、光学機器のケーブルをまとめたり、ライフルを吊り下げて安定させたりするなど様々な効果と使い道があります。
コスタ・ルーダスのコマーシャル映像製作部門であるコスタ・メディア・グループ(Costa Media Group)が2013年12月に発表したショートムービー『Easy Day』にも、ショートバレルモデルのLVOA-Sが登場しました。
価格は3,050ドルです。
BCM | HSP The Jack Carbine
公式サイト:http://www.bravocompanymfg.com/TheJack/
参考:http://www.bravocompanymfg.com/specification/bcm_hsp_thejack.php
コスタ氏と共にマグプル・ダイナミクスで活躍し、現在はヘイリー・ストラテジック・パートナーズ(HSP; Haley Strategic Partners)にてインストラクター業とタクティカルギア開発を行うトラヴィス・ヘイリー(Travis Haley)氏。彼がプロデュースしたライフルが「The Jack Carbine」です。
ブラヴォー・カンパニー・マニュファクチャリング(BCM; Bravo Company Manufacturing)社を含む、いくつかのパーツ・アクセサリーメーカーが集結して誕生したライフルであり、ヘイリー氏の実践的トレーニングやライフルに対する理念が詰まっています。レシーバー右側面にはHSPを象徴するトンボのロゴマークが刻印され、表面はジョイント・フォース・エンタープライゼズ(Joint Force Enterprises)社により、あらゆる環境において低い視認性を発揮する「ディスラプティブ・グレー」色にセラコート™処理されています。
HSPのトレーニングで使用できる200ドル分のトークンが付属して、価格は2,195ドルです。
パーツ構成は以下の通りです。
バレルレングス:14.5インチ
グリップ:BCM Gunfighter Mod 1
ストック:B5 Systems SOPMOD Bravo
ハンドガード:Geissele SMR Mk1
チャージングハンドル:BCM Gunfighter Mod 4
マズルデバイス:BCM Gunfighter Mod 1(固定)
トリガーグループ:ALG Defense ACT
ウェポンライト:Inforce WML-HSP
ライトマウント:Impact Weapons Components / HSP Thorntail Offset
バックアップサイト:Troy / BCM Battle Sight
BCM | EAG Tactical Carbine
公式サイト:http://www.bravocompanymfg.com/specification/bcm_eag_tactical.php
元アメリカ海兵隊員・元ニューヨーク市警巡査部長のインストラクターであるパット・ロジャース(Pat Rogers)氏が率いるEAG Tacticalの名を冠したライフルです。今回ご紹介するものの中では最もシンプルかつベーシックなパーツ・アクセサリー構成ですが、使い勝手の良いグリップ・ストック、フリーフローティングハンドガードにウェポンライトなど、現代のタクティカルなライフルに求められる要素が過不足無く盛り込まれています。
EAG Tacticalのトレーニングで使用できる200ドル分のトークンと、VTAC社のスリングが付属します。カラーバリエーションはブラックとFDEの2種で、価格はどちらも2,195ドルです。
パーツ構成は以下の通りです。
バレルレングス:14.5インチ
グリップ:TangoDown Battlegrip BG-16
フォアグリップ:TangoDown BGV-QDK
ストック:Magpul MOE
ハンドガード:LaRue LT15-9
マズルデバイス:BCM Gunfighter Mod 1(固定)
トリガーガード:Magpul Enhanced / MOE Trigger Guard
ウェポンライト:SureFire P2X Fury Tactical
ライトマウント:VTAC Light Mount
バックアップサイト:Troy / BCM Battle Sight
レイルカバー:TangoDown SCAR Panel
フロントスリングスイベル:Vltor QD Swivel
リアスリングマウント:TangoDown PR-4
USM4 | No Easy Day: Special Missions Carbine
公式サイト:http://markowenseal.com/pages/no-easy-day-rifle
「No Easy Day: Special Missions Carbine」(SMC)は、アメリカ海軍特殊部隊DEVGRUによる2011年のウサマ・ビン・ラディン暗殺作戦を記した『No Easy Day』の著者であるマーク・オーウェン(Mark Owen, 仮名)氏がプロデュースしたライフルです。DEVGRUの隊員として実際に暗殺作戦に参加したオーウェン氏が自ら厳選したパーツ・アクセサリーで構成されています。「どんな任務においても、私はこのSMCを持ち歩いたことでしょう」とオーウェン氏自ら評するほどの完成度を誇る、豪華なフルセットです。
ペリカン(Pelican)社の1750ライフルケースと、VTAC社のMK2スリング、オーウェン氏が任務には必ず持っていくというプリンストン・テック(Princeton Tec)社のRemix Proヘッドランプ、そしてシリアルナンバーが振られた『No Easy Day』のサイン本が付属します。また、SMCと同時購入することで、AACのM4-2000サプレッサーやTNVC / センチネル(Sentinel)社の双眼ナイトビジョン・ゴーグル、オプスコア(Ops-Core)社のFASTヘルメットなどを通常よりも安い特別価格で手に入れることもできるようです。
価格は4,595ドル、デジタルデザート迷彩を施したモデルは5,295ドルです。
パーツ構成は以下の通りです。
バレルレングス:14.5インチ
グリップ:ERGO SureGrip 4005
フォアグリップ:Magpul RVG
ストック:Magpul CTR
ハンドガード:Centurion Arms 5.56 CMR 12インチ
マズルデバイス:AAC Blackout 51T Flash Hider(固定)
トリガーグループ:Geissele SSA
ウェポンライト:SureFire M600 Ultra Scout Light
オプティック:EOTech Holographic Hybrid Sight I(EXPS3-4 + G33.STS)
今回ご紹介した5つのライフルは全て、14.5インチバレルにマズルデバイスが固定されているという点で共通しています。
アメリカの連邦法は、バレルレングスが16インチ未満であるライフルの所有を規制しているため、純粋な民間仕様であればバレルレングス16インチ以上が絶対条件になります。しかし、マズルデバイスをバレルにピン止め・溶接して永久的に固定した場合、マズルデバイスの長さもバレルレングスに含まれるようになります。つまり、14.5インチバレルの場合、全長1.5インチ以上のマズルデバイスを永久的に固定することで、バレルレングス16インチ以上の民間仕様として合法的に扱われるのです。
なお、最も一般的なマズルデバイスであるM16A2のバードケージ(鳥籠型)ハイダーは全長が1.5インチに満たないため、AACのBlackout 51Tハイダーや、シュアファイア(SureFire)社のMB556Kマズルブレーキ、そしてBCM社のGunfighter Mod 1ハイダーなどがよく用いられます。
これらのライフルをエアソフトガンで完全に再現することは難しいですが、パーツやアクセサリーを選択・配置する上では大いに参考になると思います。本稿をきっかけとして、新たなライフルの理想像を獲得したり、奥深い民間仕様ARの世界に少しでも興味をもって頂けたりしたら幸いです。
Jien(じえん) 1994年、栃木県生まれ。AR-15とタクティカルギアが大好き。AR-15の開発と発展の歴史、世界各国の軍隊・法執行機関におけるAR-15の運用状況、そしてアメリカ合衆国の銃産業・銃市場・銃規制について勉強しています。 http://jisakujien.org/ |
■関連リンク
米軍M4カービン バリエーション