実銃レポート撮って出し! ベレッタ APX
Photo by Takahiro Soyama / Text by Takeo Ishii
ベレッタAPXは米軍の次期制式採用拳銃MHSトライアルに、U.S.M9(M92FS)の後継モデルとなるべく提出された、ベレッタ社としては初となるフルサイズ・ストライカー式拳銃です。
実はベレッタ社は一度、U.S.M9を改修した「M9A3」をMHS候補として軍に提示していましたが“検討に値しない“と却下されており、このAPXは「再挑戦を期した野心的なモデルだった」という事になります。
APXが一般に初披露されたのは2015年2月22日〜-2月26日に中東アブダビで開催された銃器見本市IDEXでした。MHSトライアルを意識し、当然このFDE(フラットダークアース)も当初から用意されていました。
撃発システムにベレッタ社として初のストライカー方式を採用。マニュアルセイフティの排除。ポリマーフレームにアンビ対応の操作系。そしてグリップサイズの変更・調整機構の導入など、近年のトレンドに沿った構成を全て満たしつつ、ベレッタ製品らしい大胆なデザインで話題になりました。
<DATA>
全長: | 192mm |
全幅: | 33mm |
全高: | 142mm |
銃身長: | 108mm(4.25インチ) |
使用弾薬: | 9×19mm |
装弾数: | 17+1発 |
重量: | 800g |
トリガー周辺はグロックと似ています。前面に突き出したセィフティもソックリです。トリガープルは2.8kg、トラベル長は約6mm、リセット長は約3mmで、この辺りもグロックとほぼ同じです。ただし、先端に向かってカーブが緩くなるトリガー形状はグロックとかなり異なり、ここはAPXの方が心地良く感じる人が多いと思います。またトリガー上方には通常分解用のディスアッセンブリーレバーがあり、その後ろにスライドリリース。この辺りの配置はM92系から引き継がれるものですね。
内蔵型の安全装置としてはとしてはAFB(=オートマチック ファイアリングピン ブロック)を搭載。CQB GUAM入荷モデルはマニュアルセィフィティ無しなのでグリップ上方はツルッとシンプルですね。ちなみにMHSトライアルで米軍からの要求に盛り込まれていたアンビ サム セイフティ付もオプションで用意されています。スライドリリースはアンビ仕様。マガジンキャッチも左右入れ替えが可能なリバーシブル構造です。
スライドには全体にわたって大振りなセレーションが施され、どんな体勢でも操作しやすくなっています。デザイン状のインパクトも大きいですね。
フレーム前方の両サイドに3本のグルーヴが彫られています。両手で構えた際にはサポートハンドの親指をココにしっかり当てられますし、撃つ時以外はトリガーフィンガーをココに当てておく事で安全も確保できますね。また、バレル側面にニトロプルーフマークが確認できます。
ライフリングはオーソドックスな6条タイプ。そして銃身の精度や品質はベレッタ製品ですから大いに期待して良いでしょう。フレーム先端にはMIL-STD-1913ピカティニー規格のレイルを装備しています。
ロッキングシステムは一般的なブローニング方式を採用。従来ベレッタ拳銃はM92系でお馴染みの「ロッキングブロック式」や、クーガーとPx4で採用された「ロータリーバレル式」など個性的なメカニズムを採用する傾向にありましたが、APXでは合理性とコストカットを重要視したようです。
スライドが角ばっているのでエジェクションポート周りの雰囲気もグロックとソックリです。エクストラクターはローディングインジケーターも兼ねていますね。
マガジンはプレス・スティール製の外装です。装弾数は9x19mmが17発、.40S&W版は15発です。
グリップ前後の適切な位置にチェッカリング。フロントストラップには控えめなフィンガーグルーヴ。マガジンウェルの波打つような形状もユニークで、大きめのボトムプレートも備わっているので交換時にマガジンが自重で落ちなかった場合に引き出すのも楽そうです。
何だかセクシーに見えるグリップの膨らみは人間工学に沿った形状だそうです。このあたりは流石のイタリアンデザイン。流麗です♪ 交換式のバックストラップは手の大きさに合わせて3種類用意されています。
フロントサイト、リアサイト共に金属製で3ドット仕様です。サイトレイディアス(双方の距離)は160mmです。
構えた時に見えるこの景色も綺麗にスッキリまとまっています。スライド後部のプレートにもグルーヴが入っていますね。
十数年に渡って繰り広げられたMHSトライアルでは結局SIG P320が勝利し、次期MHSのU.S.M-17とU.S.M-18の座を獲得。2017年から陸軍を皮切りに納入が始まりました。ベレッタAPXは惜しくも落選しましたが、公用のみならず民間市場をも意識した優れたデザイン性は唯一無二の個性を放っています。良くも悪くも強烈な存在感に反して販売価格も手頃なので、グロックやSIGでは色気も素っ気もなくてどうも・・・という向きには受け入れられるかもしれません。
ベレッタ製品は全て「生涯保障」付きなので、CQB GUAMのような射撃場でレンタルにご提供するのにも安心で助かります。このAPXも大胆で未来的なそのデザインに相応しい操作性と命中精度を秘めた拳銃なのではないでしょうか? アナタも是非一度グアムまで、ご自身の手で確かめに来てください!
制作協力:CQBグアム
石井 健夫(いしい たけお) CQB GUAM/ジャパンサービス部 代表 1967年12月、東京都生まれ。 |
ソヤマ タカヒロ CQB GUAM/WEBマーケティング担当 兼 実弾射撃サブコーディネーター 1964年9月、神奈川県生まれ。 |
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