東京マルイ Cz75 ファーストモデル 【ハイグレード/ホップアップ】
レポート:石井 健夫
Cz75は旧共産国家であるチェコスロヴァキアの国営銃器工廠、チェスカゾブロヨフカ(=CZ)で1975年から生産が始まった9mm口径のダブルアクションハンドガンだ。非常に質の高い鋼鉄で製造され、高性能で高品質、15+1発の装弾数ながらも握り易く、操作性も命中精度も抜群、と、現在もなおあらゆる面で高く評価され「世界最高のコンバット・オート」であるとも言われている。
特に初期型である「ファーストモデル」は“幻の名銃”として、世界中のマニア、コレクターが憧れる存在となっている。
筆者は米国でCz75 ファーストモデルを撃った経験があるが、スライドとフレームをザックリと削ぎ落とし前方重量が軽いので、構えた感じはルガーP08やワルサーP38のように軽快。しかし実際に撃ってみると反動は鋭く速いながらもコントロール性が想像以上に良く、70m先の上半身大スティールプレートにガンガン、面白いように命中させる事ができて驚いたものだ。
東京マルイがCz75 ファーストモデルをコッキングエアーガンシリーズに加えたのは1996年。同社にとっては「シリーズ初の一体成型スライド」を搭載した意欲作だった。折しも、米国在住の人気銃器レポーター、永田市郎氏による専門誌記事でCz75 ファーストモデルへの関心がファンの間で高まっていたところに、この記事に多大な影響を受けたと思われる漫画『ガンスミス・キャッツ』が大ヒットして人気が沸騰していたこともあり、東京マルイはこの銃のスタイリングや仕上げにも最大限の配慮、最大級のチャレンジを実行したという。
デザインは非常にシンプルで「いかにも旧共産圏設計の銃」という感じがする。バレル、チェンバー、トリガーだけシルバー、というのもCz75独特の萌えポイント。なお、外から見えるパーツはネジ以外全てABS樹脂製。塗装された半艶消しブラック、ABS地肌のままのグロスブラック、成型色をそのまま活かしたシルバーパーツを巧みに組み合わせて1970年代製造の実銃に独特な質感・風合いを再現している。
パッケージサイズは横290 x 縦180 x 厚さ50mm。
HOP-UP搭載モデルである事を示すキャッチーな帯がグリップに巻かれた銃本体(保護キャップ付き)とマガジン、箱入りのBB弾(0.25g)150発、そして取扱説明書が、この状態のままディスプレイしたくなる程にスッキリと格好良く収まっている。
スライド&フレーム前方側面をザックリと大胆に削ぎ落としたこのスタイルこそ初期型Cz75=ファーストモデル最大の特徴だ。この分スライドとフレームが噛み合う部分が短い事から「ショートレイル」と呼ばれている。シルバーのアウターバレルはメッキや塗装ではなく成型色によるもの。銃口部にライフリングが再現されているが、なぜか口径は9mmよりかなり小さく、.25口径(=6.35mm)ほどになっている。インナーバレルは真鍮製だ。
初弾をダブルアクションで撃てる拳銃ではセフティを掛けるとハンマーもデコッキング(=安全に倒れる)するタイプが多いのだが、Cz75はハンマーが起きたままの「コック&ロック」状態になる。つまりM1911系と同じコンディションからの初弾発射が可能で、このメカニズムと15+1発の装弾数が往年の名シューター、ジェフ・クーパーをして「世界最高のコンバット・オート」と言わしめた。東京マルイのコッキングエアーガンでもハンマーはスライドに連動して起き上がる。またセフティレバーはハンマーが起きていても倒れていても掛かりもちろん機能するが、クリックがかなり固い。
ツルツルの表面と絶妙なカーブで指当たりが良く優美な曲線を描くトリガーも実銃 Cz75の世界的評価を高めている重要ポイント。成型色シルバーながら安っぽさを全く感じさせないルックス再現は美事。そしてトリガーの引き味に大きく貢献しているのがフレーム周辺部の大胆な面取りで、東京マルイはここにも実銃さながらの流麗なラインを再現している。なお、「LYMANトリガープルゲージ」による、コッキングした状態でのトリガープル実測値は「2.25〜2.49kg」で、実銃で感じる「コトン!」と柔らかい感触が意外によく表現されている。またスライド、グリップに刻まれている刻印やマークは字体や彫りの深さも含め、実銃に近いリアリティがある。
フロントサイトはかなり小振りだが背面には反射防止のグルーヴ(溝)が刻まれているのでこのようにクッキリとしたサイトピクチャーを得られる。ただしこの銃に限らず、トイガンのCz75ではフロントサイトをリアルサイズで再現すると着弾がかなり上になる傾向がある。この銃の場合も、実際に狙って撃つとやや上目=「フロントサイトもう一つ分上」に集弾する印象だった。おそらく実銃ではその構造上、バレル・アライメントがやや下向きなのだと思われる。ともあれやや下めを狙う事にはなったが、0.25gBB弾を使えば30m先の30cmの円型プレートに綺麗なフラット弾道で面白いように命中した。東京マルイの固定HOPは多くの場合、「0.25gBB弾でまっすぐ飛ぶように」設定されているようで、人によっては「HOPの掛かりが弱い」と感じるかもしれない。そんな時は0.20gBB 弾を使用すれば20mほど先から弾が“スゥーッ!”と浮き上がる様子をハッキリと確認できる。
コッキング時のスライド後退量は24mmで、実銃のフルストロークの約半分、といったところか。一体成型スライドの効能もあり、かなり強いスプリングを押し縮めているハズなのだがギシギシ、ミシミシ、といった不快な音や感触は殆どない。東京マルイ コッキングエアーガンシリーズ中、剛性感に関してはTOP3に入るレベル。ただしCz75はフレームがスライドを包み込むデザインなので指を掛ける部分の幅が狭く「素速いコッキングには不向きなモデル」であり、また前述の「やや上目に着弾」という独特な癖もあるので、サバゲでの実用性に関してはやや低め。使いこなすには「Cz75愛が必要」と言わざるを得ない。
ダブルカァラムマガジンを内包するとは思えない程スッキリした握り心地で1970年代には世界中を驚愕させたグリップの曲線も忠実に再現されている。もっとも、ポリマーフレームが主流の現在にあっては「実際それほど細くはない」のだが、しかし徹底的に角を落としてある断面の曲率や抉ってある部分の形状や深さが的確なのだろう。グリップパネル表面の模様も当時としてはまさに画期的・先進的なデザインで、実弾発射時の反動コントロールに大きく貢献する。
実銃同様、マガジンキャッチを押すとスルリと飛び出してくる「ほぼフルサイズ」のマガジン。装弾数は25発と、実銃より10発も多い! 重量は実測値133.5gで、実銃用のマガジンポーチにも気持ち良く収まる。
スペック
全長 | 206mm |
重量 | 411.5g (実測値) |
装弾数 | 25発 |
価格 | 3,500円(税別) |
発売日 | 1996年1月 |
発射方式 | スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載 |
初速 | 最高:64.10m/s 平均:63.73m/s 最低:63.00m/s ジュール:0.406J |
※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温26度、湿度76%、ACETECH AC5000にて測定。
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東京マルイ エアガン コルト M1911A1ガバメント HG/HOPUP