海外ドラマ『シカゴ P.D.』の登場銃器解説
シカゴはN.Y.やL.A.に次ぐ全米第3の大都市だ。禁酒法時代にアル・カポネが牛耳ったことでも有名なこの街は、現在も全米の平均水準をはるかに上回る犯罪発生件数に悩まされている。本作でも麻薬ギャング同士の血で血を洗う抗争、連続猟奇レイプ事件、強盗殺人、バスジャックなど、一般市民を巻き込む凶悪事件の数々がリアルに描かれる。
こうした凶悪犯罪に敢然と立ち向かうのが「シカゴ警察21分署・特捜班」。彼らを率いるリーダーにして悪徳警官では?との黒い疑惑も絶えないハンク・ボイト巡査部長以下、それぞれに事情を抱え一筋縄ではいかない男女警察官たちが、時には粘り強く、時には常識や法の枠組からさえも逸脱した過激な捜査方法で犯罪者たちを追い詰めてゆく。さらに横糸として絡む重層的な人間ドラマに、一度見始めたら画面から目を離せなくなる「ハマり度数」もすこぶる高め。
製作総指揮を務めるのは米TVドラマ界の重鎮ディック・ウルフ。全20シーズン（※全米ドラマシリーズ最長タイ記録）+数々のスピンオフでも知られる超BIGシリーズ『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』のプロデューサーとしても知られる彼は、消防署の人間群像を描く『シカゴ・ファイア』を皮切りに、この大都市を舞台に同一の世界観を共有する一大プロジェクト“シカゴ”シリーズを始動させた。
本作『シカゴ P.D.』はその第2弾にあたり4シーズンを放映済。さらに医療チームを描く第3弾『シカゴ・メッド』が既にシーズン2放送中（※4月4日よりNHK-BSプレミアムにて放送中）。そして州検事局の活躍を描く第4弾『Chicago Justice』も2017年全米放送中。さらに広く、より深く、シカゴを舞台に熱い人間ドラマが展開する。
今回リリースされる『シカゴ P.D.』に於いても『シカゴ・ファイア』の主人公が行方不明となった妹の捜査依頼のためP.D.を訪れたり、第12話は『シカゴ・ファイア』と『シカゴ P.D.』が同じ爆弾テロ事件を追う、すなわち消防局が爆発現場での救出に当たる前編を『シカゴ・ファイア』で描き、事件の真相を追って犯人を逮捕するまでの後編を『シカゴ P.D.』で描くという斬新なクロスオーバー・エピソードとなっている。
第6話では連続レイプ殺人事件の合同捜査のため『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のメンバーがN.Y.からシカゴに出張して来るなど、ディック・ウルフ製作の他シリーズとキャラクターを共有した大スケールの世界観も大きな魅力だ。
それでは『シカゴ P.D.』に登場する銃器を実銃写真も交えて解説していこう。
シグザウエル P229 [ SIG SAUER P229 ]
全長：180mm /
重量：約865g /
使用弾薬：9×19mm弾 /
装弾数：15+1発
ハンク・ボイト巡査部長の愛用銃。真っ黒なものとスライドがシルバーのもの、2挺を所有している。
強装弾に対応できるようステンレス鋼から削り出した強化スライドを搭載。銃身とリコイルスプリング、マガジンを交換するだけで「9×19mm弾」の他、「.40SW」と「.357 SIG」と3タイプの弾薬に対応可能なのが特徴。非常に堅牢かつ高精度で、撃った瞬間の反動は鋭いがキレが良く、命中精度も高い。
実銃のP229。写真は特別カラーのカスタムモデルP229 Elite。ビーバーテイルやグリップがノーマルのP229とは異なる。
シカゴ警察21分署・特捜班を率いる主人公、ハンク・ボイト巡査部長。裏社会に癒着とも噂される強いコネを持ち、時には違法捜査も厭わぬ問題人物。数ヶ月前までは刑務所に収監されていたが、警察組織上層部とのある取り決めで現場に復帰した。そんな彼にペリー署長は監視の目を光らせ、また凶悪犯罪課のベルデン警部補も必要な情報を流さないなど、事ある毎に敵対。
グロック G17 [
GLOCK G17 ]
全長：186mm /
重量：約710g /
使用弾薬：9×19mm弾 /
装弾数：17+1発
実際にシカゴ警察でも制式採用されている拳銃なので、本作に最も多く登場する。ボイトとリンジー以外の特捜班メンバーは全員がこの銃を使用する。
樹脂を大胆に使用して軽量化を図りつつも高い耐久性を実現したことにより、1985年に開発・生産国オーストリア軍の制式採用を勝ち取る。登場から30年以上が経過した現在では全世界の軍・警察に広く浸透。世界で最も売れて普及している拳銃でもある。
実銃のグロック G17。Gen4と呼ばれる最新型でスライドの上にマイクロドットサイトが搭載されている。
グロックG19 [ GLOCK G19 ]
全長：174mm /
重量：約600g /
使用弾薬：9×19mm弾 /
装弾数：15+1発
「グロック17」の全長及び全高を約1cmづつ短縮したコンパクト版。携帯性、秘匿性をより高めているが、小柄な人や手の小さな人はむしろ“G19の方がちょうど良い”との意見も多数。本作ではエリン・リンジーが私服で活動する際の銃として設定されている。
全員がハンドガンを構えているシーン。主役のボイトがSIG P229で、準主役リンジーがG19。他は全員がG17、と少々差別化し、メリハリを持たせているのだろう。ちなみにアメリカの警察では多くの場合、全員に支給される制式採用拳銃の他、正規の登録を行えば自腹で購入したものも使用弾薬が同一であれば任務で使用できる制度がある。またその銃が推奨リストに載っていれば購入資金の補助があるケースもあるようだ。
コルト M4A1 [
COLT M4A1 ]
全長：840mm～760mm /
重量：約3.2kg /
使用弾薬：5.56×45mm弾 /
装弾数：30発
現在アメリカ全4軍（陸・海・空・海兵）が採用している制式採用カービン。ベトナム戦争時代から使われ『ゴルゴ13』でも名高い「M16ライフル」の改良進化型で、銃の上面とハンドガードにレールを配し、様々なオプション装備に対応する。
『シカゴ P.D.』ではこの銃は常に車両のトランクにペリカンケースに収まって積まれており「犯罪者が重武装」と想定される際には躊躇なく使用される。
建物等への突入時にはM4A1の上部にEO-Techのホロサイト、ハンドガードにはSUREFIRE製の大口径フラッシュライトとTangoDown社製バーティカル・フォアグリップを装着したセットアップ。
中距離狙撃モードのM4A1。照準器がホロサイトからリューポルド製の1-4倍CQTスコープに換装される。アルビンはイタリアで軍務に就いた事のある優秀な狙撃手で、際立った活躍を見せる。同じく軍歴（アフガン）のある若いジェイからもその腕前は一目置かれる。
レミントン M870 [
Remington M870 ]
全長：946mm /
重量：約3.2kg /
使用弾薬：.12ゲージ ショットシェル /
装弾数：6＋1発
散弾（＝複数の弾丸を仕込んだ装弾）を発射可能な銃をショットガン（＝散弾銃）と呼ぶ。レミントンM870はフォアエンド（先台）を前後させることで次弾を装填する「ポンプアクション式」の代表的なモデルだ。小さな鉛弾がたくさん詰まった「バードショット」や、凶暴な大型獣や犯罪者用の6mm弾を9〜12発仕込んだ「バック（牡鹿）ショット」、さらに「スラッグ（＝1発弾）」など色々な種類の弾薬があり、警察用のM870はそのどれも自在に、目的に応じて撃ち出すことができる。
レミントン M870 マスターキー [
Remington M870 Master-Key ]
全長：約650mm /
重量：約2.9kg /
使用弾薬：.12ゲージ散弾 /
装弾数：6＋1発
このM870は携帯が容易なようにストックがなく、また銃口には先が尖ったスパイクが装着されている。これはドアなどに強く押し当てても滑らず、またドアの鍵や蝶番を破壊するのに丁度良い距離を保つための器具なので、“マスターキー＝何でも開く鍵”の異名を取る。
写真は実銃のレミントン M870 MCS。バレルの長さやストックの有無を変更できるモジュラー化されたシステム。
スミス&ウェッソン M60 [
Smith & Wesson M60 ]
全長：165mm /
重量：約550g /
使用弾薬：.38スペシャル /
装弾数：5発
「チーフス・スペシャル」の愛称を持つ小型リボルバーで、非番の警官や私服刑事のバックアップ用として現在も非常に人気がある。M60はステンレス製なので外観がシルバー。ずっと携帯していても錆の心配がないので人気がある。
署のカウンターに陣取る老獪な女性警官＝トルーディ・プラット巡査部長が腰に提げている。
また、「チーフス・スペシャル」の初期オリジナル版である、スティール（鋼鉄）製でガンブルー（黒染め）仕上げのM36はアルビンがバックアップ用に携帯している。犯罪者に故意に握らせ正当防衛射殺をデッチ上げようとした、恐らくは「未登録のヤミ銃」という設定だろう。
キンバー ウォリアー [
Kimber Warrior ]
全長：221mm / 重量：約1,134g /
使用弾薬：45ACP弾 /
装弾数：7+1発
1911年〜1985年までの長きにわたってアメリカ軍の制式採用であり続け、現在もスポーツピストルとして様々なメーカーから復刻版、アップグレード版が製造販売されているコルト M1911A1。
第5話で被害者女性を揶揄したマフィアの幹部からボイトが取り上げ、強烈な脅しをかける。画面に映るパーツの形状からコルト製ではなく、キンバー製のWarriorと思われる。写真はKimber Warrior SOC。
ヘッケラー&コッホ USP [
H&K USP ]
全長：195mm /
重量：約770g /
使用弾薬：9×19mm弾 /
装弾数：15+1発
ドイツH&K社が自国の軍や警察向けに開発。USPとは「ユニヴァーサル・セルフローディング・ピストル（＝万能型自動装填拳銃）」の略であり、その名の通りクセがなく、ドイツでは幅広い用途に使用されている。やや大柄で画面映えする事から映画にも頻繁に登場。本作では組織の男が車内でアルビンに突きつける。
![ヘッケラー&コッホG36K [ H&K G36K ]](images/g36k.jpg)
ヘッケラー&コッホG36K [
H&K G36K ]
全長：860mm～620mm /
重量：約3.3kg /
使用弾薬：5.56×45mm弾 /
装弾数：30発
ここ20年ほどドイツ軍が制式採用している軍用ライフルG36のやや短いカービンタイプ。カーボン繊維や樹脂を多用した軽量ボディに光学照準器を標準装備しており、誰にでも簡単に扱える。中東の酷暑に耐えられずトラブルが多発した事から、現在代替モデルに更新する動きが加速している。
第15話に登場する武装密輸団がこの銃を乱射し、特捜班に激しく抵抗した。
作品DATA
2013年アメリカ製作/全15話/原題：『Chicago P.D.』
※全米ではシーズン4放送終了、シーズン5放送決定
【スタッフ】
製作総指揮・脚本:ディック・ウルフ/「シカゴ・ファイア」シリーズ、「LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー」シリーズ、「マイアミ・バイス」
【キャスト】
ハンク・ボイト
ジェイソン・ベギー(声:藤沼建人)/『G.I.ジェーン』「カリフォルニケーション」シリーズ
エリン・リンジー
ソフィア・ブッシュ(声:土井真理)/『ヒッチャー』
ジェイ・ハルステッド
ジェシー・リー・ソファー(声:宮本 淳)/『TIME/タイム』
アントニオ・ドーソン
ジョン・セダ(声:辻井 健吾)/『幸せの教室』
アルビン・オリンスキー
イライアス・コティーズ(声:あべそういち)/『ガタカ』『コレテラル・ダメージ』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
アダム・ルゼック
パトリック・ジョン・フリューガー(声:横田大輔)/「4400」『世界最速のインディアン』
キム・バージェス
マリーナ・スコーシアーティ(声:濱口綾乃)/「ブルー・ブラッド NYPD正義の系譜」「ゴシップガール」「ジ・アメリカンズ」
ケビン・アトウォーター
ラロイス・ホーキンズ(声:松田修平)/「エクスプレス負けざる男たち」
シカゴ P.D. DVD-BOX 2017年6月7日(水) 発売!!
シカゴ P.D. DVD-BOX 2017年6月7日(水) 発売
品番GNBF-3755/¥8,000(税抜)/4 枚組
/全 15 話/本編約 639 分
★特別収録「シカゴ・ファイア」シーズン1 第3話:信念※ハンク・ボイト初登場エピソード「シカゴ・ファイア」シーズン2 第20話:暗黒の一日※「シカゴP.D.」第12話とのクロスオーバー・エピソード(前半話) ★封入特典 アウターケース収納
＜レンタル＞
シカゴ P.D. VOL.1〜8
6月7日(水) レンタル開始 収録:VOL.1〜7 第1話〜第14話(各2話収録)、VOL.8 第15話
★特別収録 ※セルと同様
＜セル・レンタル共通仕様＞
カラー/画面サイズ 16:9/音声:1英語(5.1ch)DD 2日本語(5.1ch)DD/字幕:1日本語 2日本語吹替用
※商品情報は都合により、予告なく変更する場合がございます。
発売・販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
公式サイト: http://www.chicago-tv.jp/pd
© 2013 Universal Studios. All Rights Reserved.
■解説者プロフィール
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石井 健夫（いしい たけお） 1967年12月、東京都生まれ。 |
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