東京マルイの新世代電動ガンは発売されるのか?
現在の電動ガンの礎は東京マルイが1991年4月に発売したFA-MASによって築かれた。
モジュール化されたメカボックス方式を採用することにより、瞬く間に人気機種のラインアップを増やし、多弾数マガジン、可変ホップアップ、ハイトルクモーターといった新機能を追加して、1990年代半ばには、それまでサバイバルゲームのメインウエポンとして主力だったBV式ガスフルオートをフィールドから一掃した。その動作安定性は後に電動ガン市場に参入してきた他メーカーの追随を許すことなく、シェアを急速に拡大することになる。
電動ガンがガスフルオートに取って代わった理由としては、ランニングコストが安い、ホースレスによる軽快な取り回し、気温に左右されない安定した弾道性能がある。
この勢いは2000年代に入っても留まることを知らず、2004年には電動ハンドガン、2006年には電動コンパクトマシンガンシリーズを展開、そしてついに2007年にはシュート&リコイルエンジンを搭載した次世代電動ガンを発売するに至る。これ以降、従来のモデルをスタンダード電動ガンとし、ハイローミックスによる鉄壁の製品ラインアップを築いてゆく。
さらに2009年にはスタンダード電動ガンをベースとしたハイサイクル電動ガンを発売し、旧モデルのリフレッシュを図るなど、電動ガンならマルイ、と言えるほどに競合不在の体制を作り出した。
ところが、2010年代に入り、この状況に変化が訪れる。
台湾、中国で製造された海外製電動ガンが台頭し、国内市場に多く流通し始めた。これはマルイのメカボックスの特許が20年で切れたからとも言われている。当初は丸々コピーされた粗悪な電動ガンも多かったが、徐々に品質が向上し、サバイバルゲームで使用する分には申し分ないほどにまで進化していった。マルイが発売していないマニアックなモデルアップや、世界市場へ向けて大量生産することによる低価格化も大きなメリットで、さらに特筆すべきは2010年代後半に入り、電子化技術が進んだことも海外製電動ガンがシェアを伸ばした一因と言える。
FET、トリガーのマイクロスイッチ化、ステッピングモーター、各種ギア検知センサー技術が進化し、加えてリポバッテリーの採用により、電動ガンの弱点と言われていたロックタイムの長さを徐々に克服しつつあった。
これらハイレスポンスな電動ガンは折からのインドア/CQBフィールドの増加や、セミオート射撃を多用するシューティングマッチ、スポーツ要素の高いゲームにおいて威力を発揮した。
この分野において東京マルイは後手に回る。マルイは1996年の時点で電子バースト機構を搭載した電動ガンを発売しているが、その後電子化については全くといって良いほど食指を動かしていなかった。それはマルイのメカボックスがあまりにも完成度が高かったことの裏返しとも言えるだろう。マルイの電動ガンは電子化しなくても十分に高性能だったのだ。
しかしながら、高価格化する電動ガンに付加価値を見出せなくなってきたのもまた事実であり、M4を中心とした売れ線モデルの度重なるバリエーション化にユーザーの間にはある種の倦怠感が沸き上がる。いわゆる「もうお腹いっぱい」現象だ。
東京マルイはこれらを打開すべく、2016年にFET初搭載となるAA-12電動フルオートショットガンを発売する。ある種マイナーなモデルに新技術を搭載するというのは初代FA -MASに通ずるマルイの常套手段と言えるかもしれない。
さらに2019年11月にはFET搭載、マイクロスイッチ化されたトリガーを搭載したMK46 Mod.0を発売予定だ。従来機の2倍となるリコイルウエイトを搭載、アルミ材の金属加工技術を駆使し、外観も内部メカもこれまでのマルイの集大成ともいえるフラッグシップとなる。
現在、世界的に見て、電動ガンは大きく3つの方向性がある。
ひとつは射撃ツールとしてのハイレスポンス機能に特化したハイエンド電動ガン、二つ目は機能を絞った普及低価帯のエントリー電動ガン、そして第三に実銃のような操作や、射撃の感触を楽しめる体感型電動ガンだ。
実銃のような射撃反動を味わえるシュート&リコイルエンジンが次世代電動ガンの売りのひとつだが、登場から12年が経ち、そのポジションを奪いかねない魅力的な製品が他社からも発売されてきた。2011年発売のTOPジャパン M4 EBBや、2016年発売のGBLS DAS M4など、実銃さながらの排莢アクションや、ボルト作動・分解機構が楽しめる、すなわち”体感する”という要素に特化した電動ガン第三の方向性だ。
もちろん、東京マルイ製品の高い命中精度や耐久性能などは、これら製品にいまだ一歩先んじているものの、強烈な個性を持ったこれら製品は次世代電動ガンの立場を脅かすに十分な存在であったはずだ。
ここからは、今後東京マルイがどのような製品を発売していくのかの予想となる。
もちろんマルイ社内では今後の10年、あるいは20年のロードマップを描いているだろう。そしてマルイはMk46 Mod.0で搭載した技術を生かし、次の新シリーズに着手するはずである。
AA-12、Mk46はあくまでその過程での、ある種コンセプトワークであるからだ。自動車メーカーがレースで培った技術を量産車にフィードバックするように、マルイもまたこれらの技術を売れ線と呼ばれるモデルに反映して、新シリーズ化していくはずなのである。
それを”新世代電動ガン”と呼ぶならば、その姿はどのようなものになるだろうか。
マルイが新世代電動ガンを製作するにあたり、まずはやはりハイエンドモデルの刷新を目指すのではないだろうか。しかし、この市場には強力なライバルも存在する。
それはトレーニングウエポンの存在だ。新世代電動ガンが新機能を搭載したとき、今より高価格化することは否めない。例えば8~9万円といった価格から始まり、バリエーションを増やすにつれ、10~12万円といった価格帯になる可能性は十分に考えられる。そしてその先に鎮座するのは国内メーカーのシステマ製PTWだろう。
PTWのみならず、電子化が進む海外製電動ガン、これらに対抗できうる付加価値を持った製品を作り出すことこそ、東京マルイの次の10年のロードマップ第一弾となる命題と言えるのではないだろうか。
そのために必要なことを考えたとき、まず最初にあるのは外観のリアルサイズ化であり、M4シリーズの負のレガシーともいえる幅広レシーバー、太いグリップ形状の見直しを行うことは想像に難しくない。
続いて金属加工で培った技術による、ハードアノダイズド仕上げのアルミ削り出しレシーバー、これまで以上のフレーム剛性といった、よりタフで高品位な質感をもった外骨格を目指すはずである。
さらにその外骨格にフィットする小型の新世代メカボックス、強力な薄型モーター。これらには電子制御技術が盛り込まれ、電子トリガーはもとより、ギア検知やモーター制御にも電子制御技術が投入されるかもしれない。
従来機能であるオートストップ機構はもちろんのこと、他社製品でも採用されるレシーバー分割機構やプリコック機能も検討されるだろう。
これら技術の投入により、新世代ハイエンド製品のラインアップを築き、その機能の一部を樹脂パーツを多用した廉価モデルに反映していくというロードマップが現実的な予想なのではないだろうか。
もちろん次世代電動ガンのリコイル機能を維持したまま、レスポンスアップを講じることもありえるし、マルイが特許を取得した電磁ピストン圧縮を利用した全く新しい電動ガンの開発も進むかもしれない。いずれにしても次の10年をリードできる製品仕様が求められるだろう。
これら新世代電動ガンの登場時期は、電動ガン誕生から30周年の節目を迎える2021年春というのがひとつの可能性として考えられるのではないだろうか。