バイオBB弾の考察

バイオBB弾の考察

屋外サバゲーで我々が使用しているバイオBB弾、このバイオBB弾製造・販売5社に対し消費者庁から景品表示法第5条第1号「優良誤認」に該当することが認められ、その措置命令が2022年12月に出された。これを受けて各社パッケージ変更などの対応に追われたのは記憶に新しい。半年経過した2023年5月末時点でも各メーカーのバイオBB弾の流通量は以前に比べ減ったままで、ユーザーとしても困った状況が続いた。

今回はバイオBB弾に関わる各種問題を考察してみた。
なお、今回の内容は筆者個人の考えによる部分もあるので、あくまでも参考程度に捉えてほしい。

バイオBB弾はいつからある? - バイオBB弾の歴史 -

BATTLE.BB弾
最初のバイオBB弾とも言える製品は「自然に戻るBB弾」というフレーズで1993年に発売されたサンエイ製BATTLE.BB弾だ。重量は0.23gで1000発500円、2200発1000円という低価格。10~15年で自然に戻ると謳われていた。

バイオテックBB弾
1995年の春には東京マルイからバイオテックBB弾が発売。トウモロコシが主原料で土中のバクテリアで2~3年で自然分解されると謳われていた。0.25g弾が1000発で1300円、0.2g弾が1000発1000円。5.95mm±0.02という高精度ではあったが、でん粉がベースとなっていたため、水分を含むと膨らんでしまうという取り扱いにくさもあった。
また、この製品広告で精密研磨バイオ弾という言葉を使用していることから、バイオ弾という言葉はマルイが最初に使い始めたのではと思われる。

エコロジーBB弾
1995年暮れにはマルゼンからもエコロジーBB弾が発売。土の中で水分とバクテリアにより浸食されると謳われている。重量は0.2gで2300発、2000円だった。

なぜバイオBB弾が生まれたのか?

なぜバイオBB弾が普及したかというと、それはサバイバルゲームの普及があるからだ。
1983年にサバイバルゲームという言葉ができて以来、第一次サバゲーブームが訪れる。と同時にエアガンが急速に高性能化し、連射能力や装弾数も格段にアップした。

当時は商業フィールドはほとんどなく、多くが河川敷や山林でゲームがおこなわれていた。そうなると野外でプラスチック弾をバラまくサバゲーに対して、世間や地主からの風当たりが強くなってくる。サバゲーやエアガンの普及拡大策として環境にも配慮しているというジェスチャーが求められ、「自然に還る」「環境に優しい」といったバイオBB弾のニーズが高まったということだろう。

なぜ環境問題に配慮するのか?

プラスチックは自然環境では分解に数百年から数千年を要するといわれている。つまりほぼ分解しない。

2015年の国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)のアジェンダのひとつ「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」は、プラスチックの海洋汚染問題が取り上げられる機会が増える契機となった。

海洋プラスチックごみは海洋生物の繁殖を妨げ、生態系を破壊、またマイクロプラスチック、ナノプラスチックと呼ばれる微小プラスチックは排水や河川から海へと流出、海洋中の汚染物質を吸着し、魚介類の体内に残留・蓄積して人間の食糧汚染へと繋がることも懸念されている。

バイオBB弾の成分は?

登場初期のバイオ弾の成分はトウモロコシやサトウキビなどから取れるデンプン。しかし、デンプンの密度は1.5g/cm³ しかなく、デンプン100%で6mmBB弾を作っても0.17gにしかならない。これに比重の高い物質を混ぜ合わせて作る必要があり、古くから使われている原料として硫酸バリウム(密度4.49g/cm³ )や炭酸カルシウム(密度2.71g/cm³ )といった成分がある。

硫酸バリウムは現在のバイオBB弾にも含まれるメジャーな成分で、原料は重晶石という鉱物の粉。炭酸カルシウムは方解石(石灰石)という鉱物の粉で、いずれも自然界にある低コストな原料だ。東京マルイの旧パッケージでは天然ミネラルと表記していた。これは単に硫酸バリウムという言葉の印象が良くないという理由からだろう。

デンプン成分のバイオ弾では高湿度などで簡単に膨れて弾詰まりを起こすこともあり、その後、紫外線と風雨で劣化しやすい石油由来のポリスチレン(スチロール)樹脂と硫酸バリウムで重量を調整、デンプンなどの分解促進剤を添加し比較的早く崩壊を促すBB弾が登場する。
ただ、このタイプは細かくなるというだけで、分子レベルでの生分解ではなく、これは現代で言うとセミバイオ弾と呼ばれるものだ。

さらにその後、ポリスチレン樹脂を酸化分解・微生物分解させる添加材「デグラノボン」等を用いたバイオBB弾がエクセルから発売され、広く普及することになった。

バイオ弾

2000年代に入ると生分解プラスチックのPLA(ポリ乳酸)[ピーエルエー]が普及して価格も安定したことから、PLAを主原料としたBB弾が登場する。PLAは原料となるトウモロコシなどのデンプンに酵素を加えて糖に分解、この糖に乳酸菌を添加して発酵させ乳酸を生成、重合させてポリマー化した"再生可能な有機資源を原料"とするバイオマスプラスチックだ。

東京マルイからは2003年にはPLA使用の新生分解BB弾(日本製)が、2010年夏には同じくPLAを使用したベアリング研磨 パーフェクトヒットシリーズ(台湾製)が発売される。

PLAの密度は1.25g/cm³ と軽い。やはり重量調整に硫酸バリウムや炭酸カルシウムを使用するが、各社パッケージにはその成分が明記してあるものはなく、配合率についても書かれたものはない。

また、BB弾を割った時にパキッと割れる弾と、粘って割れる弾があるが、これは成分や比率の違いによるものだ。

バイオBB弾の成分比率は?

東京マルイ バイオ弾
2023年9月に発売になった東京マルイ FINEST BB。

東京マルイの公式サイトには、0.12gバイオ弾を除き、0.2g、0.25g、0.28gバイオBB弾の成分はPLA、硫酸バリウム、でん粉、添加物とある。

でん粉は微生物分解の促進添加剤として使用しているので比率としてはかなり少ないと思われる、その他添加物もワックス類だと思うので、1%以下と想定し、PLAと硫酸バリウムのみの成分で、凡その配合比を計算してみる。

■6mmBB弾の体積を求めると

V = (4/3)πr³
V = 0.113097336 cm³

となる。

硫酸バリウム:密度4.49g/cm³
PLA:密度1.25g/cm³

として、

BB弾の重量(g) = (4.49 * n1) + (1.25 * n2)
n1 + n2 = 0.113097336cm³

●0.2gの場合
n1 ≒ 0.01806cm³
n2 ≒ 0.09504cm³
硫酸バリウムが15.96854%
PLA樹脂が84.0338%

●0.25gの場合
n1 ≒ 0.033529336cm³
n2 ≒ 0.079568cm³
硫酸バリウムが29.64644%
PLA樹脂が70.353558%

となる。

0.2g弾ではPLAが84%、硫酸バリウムが15%ほど、
0.25g弾ではPLAが70%、硫酸バリウムが29%ほどという数値となった。

バイオBB弾の推定成分比

成分や配合比を書かない理由は?

どのBB弾メーカーも成分や配合比をパッケージに記載していない。

今回の一件があったことで、これがどう変わるか気になっていたが、2023年5月のホビーショーで発表された東京マルイの新BB弾パッケージには、生分解やバイオBB弾といった表記も無くなった。中身は以前のバイオ弾と同じなので、これが屋外フィールドで使えなくなるということはないだろうが、今後、ユーザーやフィールド運営はバイオBB弾の認識を変えていく必要が出てくるだろう。

BB弾は現在出回っている製品は、台湾か中国での生産がほとんどだ。
その台湾や中国でもエアガン用のBB弾を専門に作っているOEM工場は数社しかないと言われている。
台湾で言えば
BLS = Lien Sheng Plastic Industries (桃園)が最も有名だろう。
他には
KAI-CHENG INDUSTRIES (台中)
ThunderStone Airsoft (台中)
といったメーカーがある。KAI-CHENGはP-Lifeの0.12g弾を作っていることでも知られる。

中国だと全て浙江省 寧波市で、
CYC = Ningbo chengyi balls
BB KING = Cixi Chonggao Seal Products Material
EXACT AIRSOFT = Ningbo Chuangxiang plastic Industry
といったメーカーがある。

一般的に価格は中国製のほうが安く、品質は台湾製が高い傾向とされている。

成分や配合率を記載しないのは、工場が詳細な数値を公表していないか、製造元を特定されたくないといった理由なのかもしれない。

バイオBB弾の認識が変わるタイミング

「バイオBB弾」や「生分解性」という言葉が今後使われなくなるとすると、我々ユーザーは何を指標に屋外フィールドで使用するBB弾を選べばよいのだろうか?

PLA配合といっても、それがどのくらいの割合で配合されているか、残りの成分は何かを知る必要はないのだろうか? パッケージにバイオBB弾と書いてあれば使用OKとしていた時代から認識が変わろうとしている。

PLAは生分解プラスチックではあるが、基本的に一般の環境では分解しにくい素材と言われている。また微生物の少ない海洋では分解はなかなか進まないという特性もある。産業用コンポストの微生物が豊富な高温多湿環境で分解促進することが前提になっている。

そこが今回、消費者に誤解を招くとして景品表示法違反にあたるとされた点だ。

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック

PLAは生分解性プラスチックという「機能特性」であることのほかに、化石由来の枯渇資源を使用しない再生可能な有機資源(バイオマス)を使用したバイオマスプラスチックという「原料特性」であることも知っておきたい。

PLAを燃焼させたときでも有毒ガスは出ず、CO2排出量は石油由来プラスチックの半分程度、その排出CO2も植物由来であるためカーボンニュートラルであり、サステナビリティに優れているというわけだ。

なお、バイオマスプラスチックはあくまで化石燃料からの原料転換であり用途により生分解性のものと非生分解性のものがある。

P-Lifeはポリエチレンやポリプロピレンなど微生物分解が困難とされる難分解性プラスチックを酸化型生分解へと導く添加剤だ。なので必ずしも石油由来、天然由来といったことだけがBB弾の判断基準にはならないのかもしれない。

バイオBB弾の種類

石油由来でも生分解する樹脂はある。加水分解なのか酸化分解なのか、マイクロプラスチックとして残存するのか、微生物の酵素により分子レベルで水と二酸化炭素に分解する生分解なのかなど、ユーザーにも認識が必要だろう。

ポリ乳酸(PLA)が現在のバイオ弾の主流ではあるが、コストや性能が見合えば他の生分解性プラスチックを成分としたBB弾も今後登場するかもしれない。バイオPBS、海水中でも生分解されやすいポリヒドロキシアルカノート(PHA)、Green Planet(PHBH)といったものなど、近年さまざまな生分解性プラスチックが研究開発され実用化している。また、EUで規制対象となった酸化型生分解性添加剤とは異なり、マイクロプラスチック化しない非酸化型プラスチック生分解促進添加剤もある。

生分解性プラ 認証マーク

日本バイオプラスチック協会が推進する生分解性プラ、バイオマスプラの認証および、マーク表示といったものも判断材料となるだろう。マルイのバイオBB弾の旧パッケージには「グリーンプラ」マークが表示されていたが、このグリーンプラマークは2021年より生分解性プラマークに制度変更され、マルイの新パッケージにはマークがなくなっている。構成材料の硫酸バリウムはポジティブリストにあり、50%以下での比率であればマークが取得できる。

屋外サバゲーに使用されるBB弾の場合、自然環境にそのまま放棄されて回収・リサイクルされないことがほとんどなので、今後も生分解性が求められることは、これまで同様変わりない。
さらに加えて、具体的な成分や配合率の表示、土壌だけでなく海洋における生分解性能、バイオマス由来、認証機関の識別マーク表示といった要素が、今後のバイオBB弾の判断基準となってくるだろう。

2023/05/30


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