グリップにマガジンが入る。オートマチック・ピストルや一部の短機関銃ではお馴染みのシステムです。
むしろ一般の方はもはや銃と言えばグリップにマガジンが入る物、と想像しているかもしれませんね。
グリップにマガジンが入る…マガジンはグリップに入るものである、そんな風に思っていた時期が僕にもありました。
しかし、ソビエトではマガジンがグリップになるのです!
この銃はАО-46。1969年にソ連で完成したトライアル・モデルです。設計者はソ連の重機設計技師トカチェフ氏(トカレフではない)です。
口径 | 5.45㎜ |
使用弾薬 | 5.45×39 ㎜ |
マガジンなしの重さ | 1.95㎏ |
ストック展開時の長さ | 655㎜ |
ストック折りたたみ時 | 458㎜ |
銃身長 | 245㎜ |
発射速度 | 700発/分 |
初速 | 715 m/s |
有効射程 | 200m |
ちなみに口径を見てわかるとおり、AO-46、短機関銃ではありません。弾丸はAK74と同じ弾丸を使用します。そう、AO-46はれっきとした突撃銃なのです。
トカチェフ技師は200メートルの距離で即座に敵に発砲できるための取り回しやすさ、大量生産の容易さ、コストなどの点を考慮し、この銃を開発したそうです。
さて、早速マガジン兼グリップの話に移りたいと思います。
まずマガジンがないときはどうやって運ぶのでしょう。確かに親指の付け根付近は金具があるのでぎりぎり保持できそうですが…スリングありきの運用なのでしょうか。
また、マガジンが入っていない時に銃を地面に落としたらマガジンキャッチの金具がすぐに曲がりそうです。自衛隊のようにマガジンを抜いた銃で訓練というのもできなそうです(安全のため自衛隊はイラクで実戦時も接敵直前までマガジンを抜いていたそうですが)。
この銃のマガジン兼グリップのことを考えるだけで時間が過ぎていきませんか。
しかし、当時は制式採用された際のマガジン・ストックの運用方法よりも、大きな問題が存在していました。
この銃にはカービンモデル特有の問題があったのです。銃身の短さと口径の大きさから来るマズルフラッシュと音の大きさの問題でした。このようなカービンモデル特有の問題点は、ベトナム戦争で使用された米軍のXM177の抱えていた問題とも共通していますね。
特にAO-46の音の問題はかなり深刻で、射手の一時的難聴を高確率で誘発しました。
それらの問題を解決するため、画像にもあるサイレンサー兼フラッシュハイダーが開発されたようです(ちょっとマキシム機関銃を彷彿とさせませんか)。
そのような試行錯誤の成果あって、AO-46は最終的に、耐久力を含むすべてのテストに合格しました。
しかし、ソ連軍上層部の意向で制式に採用され生産されることはありませんでした。
最後に一つ。
この銃のオリジナリティーはマガジンだけではありません。
国防省が一切開発依頼していない点でもソ連の兵器史の中でオンリーワン!の銃でした。
AO-46はトカチェフ氏が自らの意志と気合で日々の業務の合間に作った銃だったのです。
(文: ピョートル石倉)
引用・参考資料
http://topwar.ru/10061-avtomat-tkacheva-ao-46.html