1914年6月28日、オーストリアの皇太子夫妻が、サラエボでセルビア人の青年に暗殺されました。ヨーロッパの火薬庫と言われたバルカン半島で発生したテロ事件が、人類初の世界規模の戦争へと発展し、市民を巻き込んだ大被害をヨーロッパにもたらしました。
しかし、サラエボ事件が大戦の直接の引き金になった訳ではありません。事件から一か月後の7月28日に、オーストリアがセルビアに宣戦布告したことで事態が大きく動きます。7月30日、今度はロシアのニコライ二世がサラエボ側に立って総動員を下令します。このロシアの総動員こそが世界大戦の直接の引き金となりました。
当時、ヨーロッパは5大国(イギリス、フランス、ロシア、ドイツ、オーストリア)が君臨し、この5大国は露仏同盟と独墺同盟をそれぞれ結んでいました。もし戦争になればドイツはロシアとフランスの二正面作戦を余儀なくされます。ロシアの総動員を知ったドイツは翌8月1日、事前戦争計画「シュリーフェンプラン」を発動し、4日にはベルギーに侵攻します。まずフランスを叩き、それからロシアと戦うというのがドイツの計画でした。そして同じ4日、イギリスがドイツに宣戦布告し、以後4年3か月にわたる総力戦が始まりました。
もともとオーストリアのベルヒトルト外相は、セルビアとの局地戦を意図していましたが、事態はその思惑をはるかに超え、初の世界大戦となりました。
現在のウクライナ情勢や、南シナ海・東シナ海における中国と周辺国の軋轢が何かのきっかけで大戦にならないとも限りません。
第一次世界大戦はいかに始まり、どのように戦われ、ヨーロッパに何をもたらしたのか? 本書は、開戦経緯から各国の戦争計画、主要会議の実相、終戦まで、多くの戦争指導者に焦点をあてながら明らかにします。長年研究を続けてきた著者が膨大な資料を基に知られざる第一次世界大戦の全容に迫ります。
著者について
1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。西洋経済史専攻。その後信託銀行に入社、マクロ経済などの調査・企画を担当。
退社後ロンドンにある証券企画調査会社のパートナー。歴史評論家。ホームページ『第一次大戦』を主宰するほか『ゲーム・ジャーナル』(シミュレーション・ジャーナル社)に執筆。
著書に『中国、この困った隣人』『旅順攻防戦の真実』(PHP研究所)、『東京裁判の謎を解く(共著)』(光人社)、『誰が太平洋戦争を始めたのか』『日本海海戦の深層』(ちくま文庫)、『戦争の正しい始め方、終わり方(共著)』『軍事のイロハ』『韓国の妄言』『失敗の中国近代史』『太平洋戦争はなぜ負けたか』『「坂の上の雲」では分からない日露戦争陸戦』『日本の近代10大陸戦と世界』『終戦クーデター』(いずれも並木書房)、『帝国陸軍の栄光と転落』『帝国海軍の勝利と滅亡』(文春新書)がある。
[Amazon] 第一次大戦陸戦史(352ページ)