論理的思考と直感的判断を組み合わせた最強の教範!
『武器になる状況判断力─米軍式意思決定法とOODA(ウーダ)を併用する』
上田篤盛著(元防衛省情報分析官)
四六判224ページ 定価1600円+税
状況判断とは「周囲の状況を判断して、最良の行動方針を選定する」ことで、「意思決定」とほぼ同じ意味です。自衛隊では、指揮官が行なう状況判断を「状況判断」、幕僚が行なう状況判断を「幕僚見積」といい、各幕僚は指揮官の状況判断を補佐します。これは作戦規模や組織が大きくなるにつれ、すべてのことを指揮官が一人で判断するには限界があるためです。もちろん指揮官も幕僚の状況判断を参考にしながら独自の状況判断を行なっており、最終的には指揮官が自らの状況判断に基づいて決断します。
米軍もこれは同様で、そのために自衛隊も採用している「米軍式の意思決定マニュアル」があります。なぜマニュアル化されているかというと、実戦経験や知識のない者でも、マニュアル通りの手順を踏めば、正しい結論が得られるからです。つまり百戦錬磨の指揮官も士官学校を出たばかりの初級将校も同じ結論に至ることができるのです。
しかしこのやり方にもいくつか欠点があり、中でも作業が複雑で時間がかかるため、新しい状況変化には対応しにくいという面があります。
そこで現在は、直観的判断を重視する「OODA(ウーダ)」も併用されています。従来の「米軍式意思決定法」は作戦開始前の全般作戦計画などを作成する場合に用い、「OODA」は作戦開始後の現場での作戦や戦闘での状況判断や行動ツールとして活用されているのです。
本書はこの両者の特徴を解説したもので、ビジネスをふくめてさまざまな場面で応用できます。巻末には日ロの天然ガス「サハリンプロジェクト」を題材にウクライナ戦争の見通しを状況判断しながら、その手順を具体的に紹介しています。
上田篤盛(うえだ・あつもり)
1960年広島県生まれ。株式会社ラック「ナショナルセキュリティ研究所」シニアコンサルタント。元防衛省情報分析官。防衛大学校(国際関係論)卒業後、1984年に陸上自衛隊に入隊。87年に陸上自衛隊調査学校の語学課程に入校以降、情報関係職に従事。92年から95年にかけて在バングラデシュ日本国大使館において警備官として勤務し、危機管理、邦人安全対策などを担当。帰国後、調査学校教官をへて戦略情報課程および総合情報課程を履修。その後、防衛省情報分析官および陸上自衛隊情報教官などとして勤務。2015年定年退官。現在、軍事アナリストとして活躍。著書に『中国軍事用語事典(共著)』(蒼蒼社)、『戦略的インテリジェンス入門』『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』『中国戦略“悪”の教科書』『情報戦と女性スパイ』』『情報分析官が見た陸軍中野学校』『インテリジェンス用語事典(共著)』(いずれも並木書房)』、『未来予測入門』(講談社)、『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル』(ワニブックス)など多数。