いまも多くの銃器ファンを魅了する傑作銃のすべて!『MP38 & MP40サブマシンガン』

いまも多くの銃器ファンを魅了する傑作銃のすべて!

MP38 & MP40サブマシンガン -ドイツが生んだ傑作小火

アルハンドロ・デ・ケサダ著
床井雅美監訳
加藤 喬訳
定価1980円(税込)並木書房

MP38とMP40サブマシンガンは、第2次世界大戦で使われた小火器の中で最も知名度が高い武器の代表である。折りたたみ式ストックを備えた携帯性のよさから多くの落下傘兵や戦車兵に支給され、たちまちドイツ軍歩兵分隊長と小隊長の定番武器となった。
大戦中に100万挺以上生産され、1945年以降は、中東やベトナムなどの民兵やゲリラ組織の手に渡った。ノルウェー軍では1990年代初頭まで使われ続け、同時期、ユーゴスラビア内戦でも派生型が広範に使用された。
さらにMP38とMP40サブマシンガンは、イギリスのステンとアメリカのM3グリースガンをはじめ、戦後ユーゴスラビアが開発したM56やスペインのスターZ-45に多大な影響を与えた。
本書は鮮明なクローズアップ写真やフルカラーイラスト、大戦当時の多数の貴重な写真とともに、MP38とMP40サブマシンガンの起源、戦歴、そして今も続く影響を説き明かしたものである!

監訳者のことば

1960年代末、さしたる計画もなく銃砲研究のためヨーロッパに向けて日本を発った私は、最初の訪問地、デンマークのコペンハーゲンの王立武器博物館で、莫大な量の古今の銃砲の展示に圧倒された。
続いて訪れたフィンランドのヘルシンキの軍事博物館では地下倉庫に案内され,そこにMP40が山のように積まれていたのに驚愕した。さらに博物館から紹介された当地の個人コレクターを訪ねると、多くのコレクターがMP40を自宅に所有していると聞き、これにも驚かされた。
その頃、フィンランドの銃砲規制はゆるやかで、フルオートマチック射撃ができるサブマシンガンでも機関銃でも自由に所持できた。日本とはあまりにも事情が違いすぎることを実感するとともに、銃砲がこれだけ自由に、そして身近にある国々の研究者たちに伍して、果たして相応の研究をやっていけるだろうかと不安になったことのほうが大きかったのをいま思い出している。
思い出したといえば、1960年代、中田商店でモデルガンの開発設計にあたっていた六人部登(故人)氏とは年の差を越えて親しい間柄になり、当時、資料探しなどをお手伝いをさせていただいた。
MP40のモデルガンの設計、商品化の際にも関連資料の収集をしたことが、本書の中に懐かしいモデルガンの話題が出てきたことで記憶がよみがえってきた。
現在と違い、インターネットもなく、デコバッフェン(無可動実銃)の輸入など皆無だった当時、入手できるのは輸入書籍がわずかにあるだけで、まさに軍用武器そのもののMP40の詳細な資料はなかなか揃わなかった。
その後、ヨーロッパに赴いた直後、あれだけ資料収集に苦労したMP40が山と積まれていたのを目にしたときの驚きや、その頃の私の心情はここで書き尽くせない。
それから海外のさまざまなコレクションを訪ね歩いたり、銃砲メーカーやショット・ショー(銃砲の見本市・展示会)などの取材を重ねながら、研究、執筆を続けてもう半世紀近くになる。
本書で著者が述べているとおり、MP40はいま見ても決して古さを感じさせない。その優れたデザインは光を放ち続けている。また、多くの銃器に興味をもつ人々を惹きつける不思議な魅力にあふれたサブマシンガンである。
本書を手にされたこの機会に、読者の皆様には、いま一度、第2次世界大戦当時の傑作サブマシンガンの歴史と実像に触れていただきたいと思う。

ドイツ・デュッセルドルフにて
床井雅美

●目次

第1章 新たなタイプのサブマシンガン
第2章 MP38の開発とMP40への発展
第3章 MP38とMP40の弾薬
第4章MP38とMP40の付属品
第5章 MP40の取り扱い方法
第6章 戦場のサブマシンガン
第7章 MP40が与えたインパクト
第8章 不朽の傑作サブマシンガン

[コラム]
<MP38、MP40の製造会社と刻印>
<ドイツ人銃器設計者たちのその後>
<1941年クレタ島「マーキュリー作戦」>
<1944年8月「ワルシャワ蜂起」>
<1980年代「ユーゴ内戦」>
<MP40のモデルガンとレプリカ>
<無可動実銃>
監訳者のことば
訳者あとがき

アルハンドロ・デ・ケサダ(Alejandro de Quesada)
アメリカ・フロリダ州を拠点に活躍する戦史研究家で、軍用品、軍関連の写真および資料の収集家でもある。カスタム・ライフルなどを製造する銃器会社の経営者でもあり、博物館や映画会社向けの歴史資料提供や時代考証なども行なっている。各種の媒体へ多数の寄稿のほか、オスプレイ社のシリーズをはじめ、25冊以上の著作がある。中南米およびメキシコに関連する事項の第一人者でもある。

床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに小型火器の研究には定評があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。

加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ州立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真実!』『ガントリビア99』『M16ライフル』『MP5サブマシンガン』『ミニミ軽機関銃』(並木書房)など多数。