『中国の航空エンジン開発史─国産化への遠い道』
中国は戦闘機用エンジンを国内開発できるか?
榊純一 著 定価1800円+税(並木書房)
中国は航空宇宙の分野でも目覚ましい発展を遂げています。宇宙関連では米ロに次ぐ有人宇宙船を打ち上げ、独自の宇宙ステーションの稼働も間近に迫っています。
一方で航空関連でも、中国空軍は第4、第5世代の新鋭戦闘機を約1100機も保有するアジア最大の空軍に成長しました。
しかしながら、機体もエンジンも大半がロシア製をコピーあるいはライセンスで国産したものに留まっているのが実情です。民間旅客機は1機が就航して1機が開発中ですが、こちらは両機ともに搭載しているエンジンは欧米のエンジンです。
世界を見渡しても、戦闘機(機体)とエンジンの両方を自国で開発して量産化できた国は、これまで米英仏ロの4か国にすぎません。ロケットやミサイルを自国で開発した国は多いものの、航空エンジンを自国開発できる国は限られています。
この差がどこにあるかといえば、ロケットは数分間(長くて十数分間)の作動が確実にできればその使命を達成できますが、航空エンジンは1,000時間以上オーバーホールなしでの運用が一般的だからです。それほど航空機エンジンの開発は難しく、この耐久性こそが、世界でわずか4か国しか戦闘機用エンジンを開発できなかった理由であると、著者は指摘しています。
著者は元IHIのエンジン開発の研究者で、防衛庁防衛研究所で約1年間、研修した際に「中国の航空エンジン」について調べ始め、退職後、それをまとめられました。
目 次
推薦の辞(茅原郁生)
はじめに(榊 純一)
第1章 国産エンジン開発に苦しむ中国
第2章 各国のジェットエンジン開発
第3章 ジェットエンジンが中国に渡るまで
第4章 中国ジェットエンジン開発の始まり
第5章 呉大観─中国航空エンジン開発の先駆者
第6章 中国のジェットエンジン開発史
第7章 中国航空産業の歴史
第8章 ジェットエンジン研究体制の拡充
第9章 ジェットエンジンの技術レベルと今後の展望
参考文献
おわりに