『永遠の翼 F-4ファントム』
小峯隆生著(柿谷哲也・撮影)
四六判404ページ 定価1800円+税
ベトナム戦争を戦い抜き、世界12か国で採用されたF−4ファントム戦闘機。半世紀にわたり日本の空を守り続けたF‐4EJファントム戦闘機は、あと2年で全機退役の予定です。航空自衛隊で最初で最後の複座戦闘機となったF‐4は、日本の防空を担う主力として活躍し、複座機ゆえに最大時には、空自のパイロットの多くをファントムライダーが占めました。
1971年7月25日、航空自衛隊のF‐Xに採用されたF‐4Eは、日本仕様のF‐4EJとしてマクドネル・ダグラス社による完成品(1号機と2号機)が輸入され小牧基地に到着しました。その後、近代化改修を経てF‐4EJ改となり、50年近く飛び続けています。その機体の頑丈さもさることながら、その背景には多くの人々の努力と熱意の結果であることが、インタビューを通じてよくわかりました。
全盛期に6個あったファントム飛行隊もいまは2個を残すのみ。第302飛行隊は2018年度内にF‐35Aに機種更新予定で、第301飛行隊がラスト・ファントムの部隊となります。カウントダウンが始まったF‐4の最後の姿を記録するため、ともにF−4パイロットであった杉山良行前空幕長、丸茂吉成現空幕長をはじめ、現役・OBのファントムライダー、整備員、偵察部隊、技術者ら数十人をインタビュー。さらに劇画『ファントム無頼』の原作者史村翔、漫画家の新谷かおるの両氏にも取材し、ファントムへの思いを語ってもらいました。取材を通じて『ファントム無頼』を読んで、パイロットを志した自衛官が多数いることにも驚きました。
ファントムと出会い、自らの誇りと喜び、苦労をともにした方々の思いと声を多くの国民に知ってもらえればと思います。これほど関わった人々に忘れえぬ記憶を残し、特別な愛着をもたらした戦闘機はほかにはありません。
『ファントム無頼』原作者・史村翔氏……「F‐4は機械じゃなくて生き物だよね。百里でコクピットに座った時、やっぱりベトナムで戦い抜いた獰猛な生き物だと実感した。ファントムに関わった人間にしかわからない愛着や魅力を忘れることはない。そう、お前は格好いい猛獣なんだ!」
作画・新谷かおる氏……「(いちばん格好いいのは)正面を少し斜め前から見た姿。エアインテークが大きく開いていて、その前のレドームの下の鼻先がボコッと出ていて、そして、キャノピーがスーッと後ろ側に湾曲していくライン。あれがいいですね。老兵は死なずですね。もし何かいただけるなら、照準器がいいです」
『永遠の翼 F-4ファントム』
目 次
はじめに 17
1 F‐4だから長く活躍できた──杉山良行前空幕長 23
2 F‐4の戦力を使い切る 29
3 航空自衛隊とF‐4ファントム 47
4 最後のファントムライダー 77
5 ファントム発進! 110
6 複座戦闘機乗りの心得 136
7 最強の飛行隊を目指して 151
8 空の守りの最前線 157
9 ファントムOBライダーズ 165
10 最後のドクター──列線整備小隊 200
11 F‐4を支えるメカニック集団 227
12 劇画『ファントム無頼』に込めた思い 261
13 今だから語れる非常事態 277
14 RF‐4偵察機──偵察航空隊の使命 301
15 写真を読み解く──偵察情報処理隊 328
16 創意工夫でやりくり──偵察航空整備隊 353
17 日本の空を支えて半世紀──丸茂吉成空幕長 371
18 永遠の翼「F‐4ファントム」380
おわりに 399
小峯隆生(こみね・たかお)
1959年神戸市生まれ。2001年9月から週刊「プレイボーイ」の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』(並木書房)ほか多数。日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。筑波大学非常勤講師、同志社大学嘱託講師。
柿谷哲也(かきたに・てつや)
1966年横浜市生まれ。1990年から航空機使用事業で航空写真担当。1997年から各国軍を取材するフリーランスの写真記者・航空写真家。撮影飛行時間約3000時間。著書は『知られざる空母の秘密』(SBクリエイティブ)ほか多数。日本航空写真家協会会員。日本航空ジャーナリスト協会会員。