今回はロシアの民生カービン銃である、КСО-9 Кречет:KSO9-クレーチトについて解説したいと思います。
クレーチトとはロシア語でハヤブサという意味です。まずはその興味深い外観をご覧ください。
ロシア製の小口径自動装填式カービンがうたい文句ですが、一見するとSOPMODの印象が強いかもしれません。
しかし、よく見ると短機関銃の銃身を長くし、ストックを取り付けただけのものであるということがすぐにわかると思います。
この銃の原型になったもの、お判りでしょうか。
長い銃身をマガジンより少し前方で切って、ストックを外した図を思い浮かべてみてください。
そう、KSO9-クレーチトの原型はロシア製短機関銃のPP-91 KEDRなのです。PP-91 KEDRはかの有名なSVD狙撃銃の製作者であるドラフノフが開発した短機関銃です。
したがって、KSO9-クレーチトのスペックはPP-91 KEDRと同等です。もちろん、民間用なのでPP-91 KEDRとは違ってフルオートはできませんが。
データ:KSO9-クレーチト
口径 | 9x19mm |
全長 | 830mm |
銃身長 | 360mm |
弾丸なしの重量 | 3,2kg |
有効射程 | 150m |
装弾数 | 10発 |
このKSO9-クレーチトは2013年にロシアの猟銃ショーで初めて公開されました。用途は狩猟、自衛用とのことですが、ロシアでどの程度このような銃に需要があるのかは定かではありません。
確かに、外見はごついですから、かなり脅しにはなるでしょう。しかし、自衛用にしても、実戦での火力となると心細いと言わざるをえません。ロシアの犯罪組織はチェチェン戦争で軍から流出した突撃銃などの武器を多く所持していますから。
また、少なくとも、全長が長く、取り回しが悪い割には威力が小さい為、シベリアでの猛獣狩りには向かないと思われます。熊やトラは拳銃弾が遠くから数発命中した程度では死なないでしょう。
また、2013年にロシアの猟銃ショーではその異様な外見から人だかりさえできたKSO9-クレーチトでしたが、その際多くの人に細部のつくりが雑だということが指摘されたそうです。将来的に似たようなニーズを満たす欧米製の小口径カービンに駆逐されることも早晩予想されています。悲しいですね。
また、この銃の特徴であるマズルブレーキですが、ロシアであのように細く成型されたマズルブレーキが流通途中に壊れる確率は高いのではないでしょうか。
ですが一方でこのマズルブレーキを高く評価する意見もあります。実際に撃った体験によりますと、このマズルブレーキのお陰でリコイルはほとんど感じず、空気銃を撃っているような感じだそうです。確かに、スポーツ用の小銃としてはなかなか良いかもしれません。
そしてなんといっても素体は傑作短機関銃のPP-91 KEDR。機関部分の部品点数の少なさと故障の少なさはこの銃の大きな利点と言えます。
ストックやハンドガードに関しては実銃においても明らかにプラスチック製なので比較的製作のハードルは低いと思われます。ちなみに銃のプラスチック部分はすべてイスラエルの CAA Tactical製だそうです。
現在の価格は日本円で10万円ほどとなっております。
(文: ピョートル石倉)
引用・参考資料:
http://www.armoury-online.ru/articles/civil/ru/kso-9/
http://www.caa-il.com/ (CAA Tactical Webサイト)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:PP-91_Kedr_01.jpg