エネミーズという空想小説

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数年前にエネミーズというタイトルの空想小説を作ろうとしたことがあります。

高橋ショウ氏の原作になります。イラストはSINOさん。

ストーリーは近未来の日本が舞台で、ある日突然異世界との空間がつながり、日本の上空にドーム状のエネルギーフィールドが作られ、外界とシャットアウトされてしまいます。

そして突如いたるところで異世界との窓が開き、そこから後にエネミーズと人々が呼ぶ無数のモンスターが首都を襲います。

自衛隊の半数は壊滅、しかしながら日本は若き自衛官たちにその望みを託します。

主人公の女子高校生さくらは防衛高校の隊員として、陸上自衛隊の新装備、36式装甲戦闘車のドライバーとしてその任務に就きます。

36式装甲戦闘車は異世界の技術を利用して作られた電気石を動力源とする一人乗りの6輪電気装甲車です。

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主砲にレーザー砲を搭載、ターレットには40mm自動擲弾と7.62mmのミニガンに短距離多目的誘導弾も搭載します。
またAPS(アクティブ・プロテクション・システム)を張り巡らし、敵の誘導弾の攻撃も防ぎます。

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この時代に陸上自衛隊が装備するアサルトライフルは28式小銃です。

口径は6.5mmと5.56mmのモジュラー切り替え式。アッパーレシーバーはアルミ製でロアレシーバーは樹脂製です。

アンダーマウントレールには25mmエアバーストグレネードを3発装填できるランチャーを搭載します。

 

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キャラ設定などもまあ、ある程度は出来上がっていたりしました。

 

ではなぜ、公開していないのかと言いますと、内容に少し納得がいかないと言いますか、もう少し面白くなりそうでならなさそうで。

それと2011年当時のご時世がら、首都が破壊されてしまうというストーリーが合わなかったというのもあります。

あと、WEBで長編小説を読むのが辛いかなぁということもありまして、今だ公開できないままでいます。

一応、第一話を以下に貼り付けますので、興味があるかたは少し読んでみてください。


 

■エネミーズ第一話 「異形」

静かで平和な住宅街。その一画にある公園。

笑いながら遊ぶ子供たち、少し離れた場所では母親たちが話し込んでいる。
どこにでもありそうな、ありふれた光景だ。

だが、ありふれていない光景……異様な光景もあった。
オーロラのようにユラユラと揺れている光。そんな光越しに青空は見えていた。

母親の一人が空を見上げ、
「いやだわ」 と言う。

「あの光、いつになったら消えるのかしら?」
母親の一人がそう言った時だった。

ドンッ!!

どこかから、何かが爆発するような低い音が響いた。
そう遠くない。すぐ近くと言ってもいい距離からだ。

母親たちの顔が険しくなる。そして急いで子供たちの元に走った。
自分の子供を抱え上げた母親の一人が言う。

「き、きっとあいつらだわ!」

母親たちはそれぞれ自分の子供を抱えたり、手を引いたりして公園から出る。災害が起きた時の避難所に指定されている公民館に向かおうとした時だった。

変化が生じた。
何も無い空間が、グニャグニャと歪んだように見えた。

母親たちは顔におののきの表情を浮かべ、少しでもその歪んだ空間から離れようと走る。

母親に抱きかかえられ、手を引かれている子供たちは何が起きたのか分からず、
「どうしたの?」 と聞く。

母親は子供の疑問に答えず、走り続けた。
一歩でも、1メートルでも、その歪んだ空間から離れるように。

歪んだ空間から離れるのは、公園にいた母子だけではない。
外にいた人々も悲鳴を上げて逃げ出す。

やがて歪んだ空間は《穴》と化した。空間に開いた《穴》……それの向こうに見えるのは、住宅街の光景などではない。

見えるのは、青々と茂って広がっている芝と美しい花々が咲いている花畑など……自然豊かな光景と、そして多数の動くもの。

それは、きれいに並んで行進していたり、飛行していたりしていた。
《穴》から、それらが出てきた時、住宅街にいた人々は悲鳴を上げる。

それは異形の存在であった。

先端に大きなブレード状の爪がある腕を持ち、ワシャワシャと動く6本の足を持ち、金属の甲殻で覆われた体を持つその姿は、まるで昆虫のようであった。空を飛んでいるものは、背中に金属の羽を6枚持っている。

昆虫のような姿をしているが、昆虫と違うのは、その大きさだ。
小さいものでも全長3メートル、大きいものではなんと5メートルのも全長があった。

金属の体を持つ巨大な昆虫……そうとしか呼べないような異形である。

《穴》から出てきた異形は、隊列を崩した。

羽を持たない異形は6本の足を動かして、《穴》から逃げる人々に迫る。
6枚の羽で空を飛ぶ異形は家屋に向かう。

地上の異形が、逃げる人々に近づく。どんなに速く走っても、異形の動きは速く、すぐに追いつかれてしまう。ブレード状の爪が付いている腕を振り上げ、一気に振り下ろす異形。

1人の人間が、大きな爪によって体を切断された。あちこちで、人が異形の爪によって斬り裂かれていく。

空を飛ぶ異形は家屋を破壊する。口らしき部分が左右に開き、そこから赤いレーザーが飛ぶ。レーザーが家屋を貫く。ガス管か何かに当たったのか、レーザーで撃ち抜かれた家屋は爆発する。

静かだった住宅街は、突然開いた《穴》から出てきた異形によって阿鼻叫喚の地獄と化した。
地を進む異形は爪だけではなく、空中の異形のように口らしき部分から赤いレーザーを放って人々を貫いていく。貫かれた人間の体は黒焦げになり、バラバラになってしまう。

家屋を破壊するのは、空中の異形だけではない。地上の異形も口から放つレーザーや高周波で振動している爪で家屋を次々と破壊していった。

住宅街の道は逃げ惑う人々でごった返す。
娘の手を引いて走っている母親に、誰かがぶつかった。母親の手が娘から離れ、娘は転倒してしまう。

母親はすぐに娘を助けようとするが、人の波によって押されて娘から離れてしまう。
人の波が途切れ、急いで娘の元に駆け寄ろうとした母親はハッとなった。転倒して泣いている娘の近くに、羽を持つ異形がいた。異形の口が左右に開く。

「真奈美!」

今にも異形のレーザーによって焼き殺されそうになっている娘の名前を叫んだ時だった、羽を持つ異形はどこからか飛んできた濃い青色のレーザーによって貫かれた。

 


 

■第2話 「 高校生自衛官」

住宅街に向かって、1輌の車が走っている。普通の車ではない。

鋼色の車体を持つその車は車輪が6つあり、ルーフには短い砲身が伸びているターレット(回転砲塔)が付いている。鋼色の車体には、《陸上自衛隊》の文字が刻まれていた。

陸上自衛隊の装甲戦闘車だ。かなりの速度で走っているというのに、その装甲戦闘車からはなぜかエンジンの音が聞こえない。

陸上自衛隊の装甲戦闘車は住宅街に入ると、人々を襲うとしている異形に対して攻撃を仕掛けた。

「奴らが出てくる前に《ホール》をふさぎたかったけど、遅かったか」

狭いコクピットの中でドライバーは舌打ちして、そう言った。
正面には住宅街が見え、人々を襲っていたり建物を破壊している異形たちの姿も見える。

体にぴったりとフィットしていて肩と肘それに膝にガードがあるツナギ状のオリーブドラブ色のスーツを着て、頭部全体を覆うタイプのヘルメットをかぶっているドライバー。

ヘルメットのバイザーが下ろされているので顔は見えないが、スーツの胸が押し上げられているので女性だと分かる。

「アルフォー、行くよ!」

ドライバーはそう言って右のレバーを前に倒し、アクセルペダルを踏み込んだ。ドライバーの声に応えるかのように正面のコンソールから、

「了解」 という機械的な声が響いた。

正面に見える住宅街が近くなる。左右の視界には一軒家やマンションなどが入った。ドライバーが操る車輌が住宅街に入ったのだ。

ドライバーはモニター越しに外の光景を見ていない。コクピットの正面と左右、そして上にはモニターがあるが、それらを通して外を見ているわけではない。

ドライバーは直接、外の光景を見ていた。だが、これは正確な表現ではない。ドライバーが見ているのは、カメラが捉えた外の光景をコンピュータが補正されたリアルなCGだ。

HMD ……ヘッドマウント・ディスプレイのバイザーがドライバーの網膜にCG化された外の光景を投影しているのだ。
コンソールとコントロールレバー、そしてフットペダルが見えなければ本当に外にいると錯覚するだろう。

操縦の妨げにならぬよう、操縦に必要な物だけは見えるようになっている。

「ロック!」
ドライバーはそう言って異形たちに次々と視線を走らせる。

HMDヘルメットのバイザーに内蔵されているセンサーが彼女の視線を捉えた。

すると、異形たちに次々と黒い十字マークが表示されていく。

「主砲レーザー1秒、ミニガン2秒、擲弾4、誘導弾1! スイッチ1、指令!」
ドライバーが指示を出すと、やはり機械的な声が、
「了解」
と応えた。

ドライバーは右のレバーにある1と刻まれているスイッチを押した。

住宅街に入り込んできた鋼色の装甲戦闘車は、ターレットの短い砲身から濃い青色のレーザーを放つ。それと同時にターレットの上部に設置されている口径7.62ミリの6連装の機関砲……つまりミニガンと40ミリの擲弾砲を発砲した。

6本の銃身を高速回転させながらミニガンは1秒発砲した後に向きを変え、さらに1秒撃つ。1秒だけとはいえ、100発近い撤甲弾が放たれる。

撤甲弾は羽を持つ異形を2体穴だらけにした。穴だらけになった羽を持つ2体の異形は空中で爆発して四散する。

ミニガンの隣に並んでいる40ミリ擲弾砲は1発放つごとに向きを変えた。
4発放たれた擲弾は、4体の地を進む異形を粉砕する。

砲塔の側面には、四角いボックス状のユニットがあった。
四角いユニット……誘導弾発射装置から1発の誘導弾(ミサイル)が放たれる。
バシュッと発射炎を伴って飛び出した誘導弾は空中にいる異形に向かって飛ぶ。

誘導弾の直撃を受け、空中の異形が1体、爆発四散する。その爆発に、近くにいた羽を持つ異形が数体巻き込まれてやはり爆発四散した。

主砲であるターレットのレーザー砲から1秒だけ放たれた濃い青色のレーザーは、射線上にいる地を進む異形たちを次々と貫いていった。

大きな穴を穿たれた異形たちは動かなくなる。

住宅街を襲っている異形たちは、突然現れた鋼色の装甲戦闘車を敵と見なしたのか、人を襲うのや家屋を破壊するのをやめて、装甲戦闘車に向かってきた。
しかし装甲戦闘車に攻撃を仕掛ける前に、装甲戦闘車が放った撤甲弾や擲弾、レーザーの餌食になって爆発したり、動かなくなったりする。

鋼色の装甲戦闘車は住宅街の中を走り、次々と異形たちを倒していった。

この住宅街を襲っている異形は一見すると生命体のように見えるが違う。
機械の塊……ロボットなのだ。

体を覆っている甲殻は柔軟に動くが、金属だ。口のような部分にはレーザー発振機がある。
生命体のように見えるロボット……人間の敵対者。

「残りは……1体か」

擬似的な外の光景の中には、いくつものウィンドウが表示されている。そのうち一つはレーダー画面だ。
レーダー画面には金色の光点が一つ点滅している。異形の敵対者の反応だ。
ドライバーはコントロールレバーを操作して、その反応がある場所に装甲戦闘車を走らせた。

その途中、 「サクラ、右、《ホール》ダ」
とコンソールから機械的な声が聞こえた。機械的な声から、サクラ、と呼ばれたドライバーは右を見る。

視界に入るのは、何も無い空間に空いている《穴》だ。
《穴》からは多数の異形が這い出てこようとしている。

「ロック!」
サクラと呼ばれた彼女の視線が向いた場所に、黒十字のマークが表示される。

「誘導弾1! スイッチ1! 指令!」
「了解」

1発の多目的誘導弾が発射された。
発射された誘導弾は《穴》に向かって飛ぶ。そして、《穴》の向こう側に広がる地面にぶつかって爆発した。

すると一瞬《穴》がグニャリと歪んだかのように見えたかと思うと、すぐに《穴》は消えた。

「《ホール》ノ消滅ヲ確認シタ」

サクラと呼ばれたドライバーはホッと一息つき、残っている異形を倒すために装甲戦闘車を走らせた。

光点がレーダー画面の中央に近づく。異形に接近している証だ。
やがて、正面に異形の姿が見えた。

羽付きの、空戦型の異形だ。地面スレスレ……低空飛行している。
その異形は、何かを狙っているようであった。異形が狙っている何かも見える。

子供だ。異形はレーザーで女の子を焼き殺そうとしているのだ。

「主砲レーザー1秒、スイッチ1! 指令!」
ドライバーはバイザー越しに空中にいる異形に視線を向けるのと同時に言う。

「了解」
ターレットの主砲から濃い青色のレーザーが放たれて、空戦型の異形を貫いた。

HMDのレーダー画面から、光点が消える。

ドライバーは装甲戦闘車が停止させ、搭乗用のハッチを跳ね上げた。

装甲戦闘車から、ドライバーが降りる。そして、泣いている子供を抱き上げた。
子供を抱き上げた装甲戦闘車のドライバーはまだ若い。
どう見ても10代の半ばであった。

自衛隊に所属するような年齢ではない。だが、確かに彼女は《陸上自衛隊》と刻まれている装甲戦闘車のドライバー……すなわち自衛官であった。

「真奈美!」

娘の名前を呼び、母親が駆け寄ってくる。
10代なのに自衛官という不思議な少女は駆け寄ってきた母親に、

「大丈夫、膝をすりむいているだけ」
感情の無い声でそう告げて娘を差し出した。

母親は膝を怪我しているだけの娘の姿にホッとして、少女から娘を受け取った。そして。
「ありがとうございます」
と頭を下げる。

「お礼なんかいらない。国民を助けるのは当然の義務。それより」

10代の自衛官は、爆発音が聞こえてくる方に顔を向けた。

「この近くでまだ戦闘が行われている。早く避難所に避難して」
「はい! 本当に、ありがとうございました」
母親はもう一度頭を下げ、娘を抱えて避難所へと走った。

母子の背を見送った少女は、装甲戦闘車……36式装甲戦闘車によじ登り、搭乗口からコクピットに身を落とす。

バケットシートに腰を下ろした彼女……二等陸曹の階級を持つ17歳の自衛官、霧原さくらはシートベルトを締めて天井のスイッチを押しハッチを閉じる。

「アルフォー、この辺に《ホール》の反応は?」
さくらはヘルメットをかぶりながら問う。

「無イ。モウ、ココラ辺ニハ《ホール》ハ発生シナイ」
「そう。なら、戻るとしますか」

コンソールに手を伸ばすさくらに、
「通信装置ノ、スイッチヲ入レタラ、分隊長ノウルサイ声ガ間違イ無ク飛ンデクルゾ」
機械的な声はそう告げた。

「小言なんか、うるさくないわよ」
肩をするくめるさくらに、
「電気石(でんきいし)エンジンノ稼働音ノ方ガウルサイカ?」
機械的な声はそう言った。

それを聞いたさくらは「ぷっ」と小さく吹き出した後、
「あははははっ!」
と大きな声で笑った。それは感情のある笑い声であった。

「冗談が上手くなったじゃない、アルフォー」
「サクラノオカゲデナ」

さくらは通信装置のスイッチをオンにする。
その瞬間、
『おい霧原! 聞こえているか!? 霧原!』
ヘルメットに内蔵されている通信機から、少年の声が響いた。

『霧原! またGPS通信装置のスイッチをオフにしているのか!?』

さくらは溜め息をつくと、
「こちら霧原二曹」

さくらが応答すると声の主は、
『やっと応答しやがって! 今どこにいる!?』
と苛立ったような声で叫ぶように言う。

「近くの住宅街。《エネミーズ》が現れたから、それを倒した。今から戻る」
乗用車を一回り大きくしたほどのサイズの36式装甲戦闘車は機敏にUターンした。

『……お前、まさかまた要撃申請無しで攻撃したのか!?』

「そんなもの、しているヒマは無かった」
さくらは36式装甲戦闘車を走らせながら返す。

『てめっ! また問題行為起こしやがって! お前のそういう行動が、小隊全体の問題になるんだぞ!』

さくらは再び通信装置のスイッチをオフにした。
少年はおそらく、さくらが通信装置をオフにしたことに気付かずに叫び続けていることだろう。

さくらは、36式装甲戦闘車の速度を上げた。

 


 

とまあ、こんな具合で物語は始まります。

続きが気になるって方はお問い合わせからお便りください。

第3話以降を公開したいと思います。