SRC MP5 CO2GBB シリーズ
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
JASG認定CO2ガスガン MP5 CO2GBB
2020年10月に JASG 日本エアースポーツガン振興協同組合への加盟を発表したバトンTradingから、 JASG 認定エアースポーツガン第1弾として、台湾 SRC社製 MP5 シリーズのCO2ガスガンが発売される。
早速その内容をレビューしていこう。
サブマシンガンの象徴的存在たるMP5
ドイツのH&K社が製造、販売している MP5シリーズは、その誕生から50年以上を経た2020年現在でも、数多くの軍隊や法執行機関で採用されている傑作サブマシンガン(以下、SMG)である。
1964年に開発がスタートし、その2年後にはドイツ連邦警察、国境警備隊等での採用が決定していたという驚くべき経歴を持つMP5だが、これはその基本構造が1950年代に完成した同社製 G3ライフルのものを踏襲しているためで、生まれながらにして成功が約束されていたサラブレッド的なSMGと言えるだろう。
拳銃弾を使用するSMGとしては珍しいクローズドボルト(ボルトが前進した状態)から弾丸を発射するMP5は、従来のオープンボルト方式では得られなかった高い命中精度を実現。
また、ローラーロッキング機構によるディレイドブローバック方式が弾丸発射時の反動を抑制するため、連射した際のコントロール性にも優れており、その性能の高さはSMGという銃器の戦術的価値を一変させた。
photo by coventrytelegraph.net
事実、1977年10月に起きたルフトハンザ航空181便ハイジャック事件において、ドイツ連邦警察の対テロ特殊部隊GSG-9が、機内への突入にMP5を使用して人質を見事救出。
また、1980年に起きた駐英イラン大使館占拠事件では、イギリス陸軍特殊部隊 SAS が MP5A3を携えて突入を行い、人質救出作戦を成功させている。
その作戦行動の様子が世界中にテレビ中継されたこともあり、MP5という銃はSMGを象徴する存在となった。
SEFトリガーグルーブを備えた70's モデル
その誕生から現在に至るまで、実に29種類以上のバリエーションを持つMP5シリーズだが、SRC社はCO2ガスガンとしての製品化にあたり、SEFトリガーグループを持つ 1970年代製造モデルをチョイスしている。
ラインナップは、A2、A3、SD2、SD3の4種類で、基本構造はすべて同一となっている。
MP5が最も華々しく活躍した時代のモデルだけに、この選択を歓迎するファンは多いことだろう。
銃身部にサイレンサーを備えたSD2、SD3 は1974年に導入された特殊作戦用のモデルで、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーによってベトナム戦争末期に投入された記録もあるそうだ。
上述の人質救出作戦もしかり、こうした背景を持った銃に特別な魅力を感じてしまうユーザーは少なくないはずだ。
懐古趣味に留まらない最新装備
ではまず、A2/A3からそのディティールをご紹介しよう。
銃口部分には大型のマズルブレーキが装着されているが、これは、スイスのB&T( Brugger&Thomet )社がMP5用に開発、販売している製品を再現したものだ。
主に強装弾(火薬を増やした弾薬)を使用した際のリコイルとマズルフラッシュを抑制するデバイスで、MP5のトライラグバレル用に設計されている。
1970年代には存在しなかったデバイスだが、側面のクイックデタッチレバーで着脱が可能となっており、その下からはMP5ならではのトライラグバレルが現れる。
現れたバレル先端のカバーを外すと 14mm逆ネジ仕様になっており、サプレッサーやトレーサーといった好みのマズルデバイスを装着することが出来る。
これも1970年代には無かった装備だが、トイガンユーザーとしては歓迎出来るアレンジだ。
プレス加工と溶接が織り成すリアルな質感
セミグロスブラックに塗装されたレシーバーは、プレス加工されたスチール板をブロックごとに溶接するという実銃同様の工法にて作られており、ダイキャストや樹脂成型では表現し切れない本物の質感に溢れている。
H&K社特有のドラム式リアサイトは、ロック機構こそ省略されているものの、その形状は忠実に再現されており、実銃通りドラムを回転させることで視野の広さが選択可能だ。
コッキングハンドルを引くと、SMGならではの小さいエジェクションポートが開き、ボルトフェイスから伸びたノズルが顔を覗かせる。
このノズルを保護するため、マガジンを交換する際にはコッキングハンドルを固定用ノッチに引っ掛けておく必要がある。
また、新しいマガジンを挿し込んだ後にコッキングハンドルを叩いて解除する「 HKスラップ 」も、コッキングチューブとハンドルがスチール製なので、破損を恐れず大胆に行うことが出来るのが嬉しいところだ。
シリアルナンバーによる徹底管理
トリガーグループは表面にシボ加工が施されたナイロンポリマー製で、S、E、F の刻印にはそれぞれ鮮やかな紅白のペイントが入っている。
セレクターレバーは実銃と同じスチールのプレス加工品で、素早く確実な操作を可能としている。
なお、ハンマーがコックされていないと、セレクターレバーがセイフポジションに入らないので注意したい。
トリガーの付け根部分を下から覗くと、JASG認定品の証であるシリアルナンバーが控えめな大きさで刻まれている。
この MP5に限らず、JASG認定エアースポーツガンとして販売されるすべての製品には固有のシリアルナンバーを刻印することが義務付けられており、これによって出荷時期から販売経路までを追跡出来る仕組みとなっている。
緑色のシールがJASG認定シール。日本の法律だけでなくJASG自主規約に準じた安全なエアースポーツガンの証となる。また、シリアルナンバーは商品の外箱と同梱の保証書にも記載されるという徹底振りで、安全なトイガンの普及を目指す JASG 日本エアースポーツガン振興協同組合の姿勢が窺い知れる。
A2は大型の固定ストックを備えており、あらゆる姿勢での安定した射撃を可能としている。
材質は軽さと強靭さを兼ね備えたナイロンポリマー製で、実銃同様ピン1本を抜くだけで簡単に取り外すことが出来る。
A3にはリトラクタブルストックが装備されているが、SRC社はバットプレート部分が薄い初期型ストックではなく、厚いラバーパッドを備えた第三世代のFタイプストックを採用している。
ここだけはオールドファンとして少々残念なところだが、使い勝手が優れているのは間違いなくこのFタイプストックだ。
ストック基部のレバーを左に倒すとロックが解け、ストックがスプリングの力で押し出される。
そのまま後方に引っ張れば、ストックが伸びきった状態でロックがかかる仕組みだ。
ストックのフレームに当たる部分はダイキャスト製なので、映画「ダイ・ハード」1作目のような無茶は控えた方が良さそうだ。
なお、全ての機種でストックを外すと、画像のようなリアルテイクダウンが可能となる。
激しく動作するボルト周りと、トリガーグループの内部に素早くアクセス出来るメンテナンス性の高さは、トイガンとしての優秀さを物語っている。
魅力的な純正アクセサリーとバリエーションモデル
A2/A3 対応の純正アクセサリーとして、表面にチェッカリングが入った、細身の初期型ハンドガードが発売されている。
SEFトリガーグループを持つ SRC MP5に装着することで、手軽にオールドスタイルが楽しめる魅力的なアクセサリーだが、ここまで来ると極初期型のストレートマガジンが欲しくなって来るから困ったものだ。
また、A2/A3 対応の RAS(レールアダプターシステム)も純正アクセサリーとして用意されており、ウェポンライトやバーチカルグリップの装着を楽しむことが出来る。
SD2/SD3は、ハンドガードを含む銃身周りが異なるバリエーションモデルで、その他の基本構造は上述した通り、A2/A3と共通になっている。
ハンドガード先端から真っ直ぐ伸びたSDシリーズ特有のサイレンサー( サウンドダンパー / Schalldampfer)は艶消し塗装が施されたアルミ製で、内部にはスポンジの筒が収められている。
ある程度の吸音効果はあると思われるが、CO2をパワーソースとした強烈なブローバックの作動音が鳴り響くため、サイレンサーとしての役割はほとんど果たせていないのが正直なところだ。
安定した動作を産み出す専用CO2マガジンとホップ調整機構
専用のCO2マガジンは、スチール製のマガジンケース内に、アルミシリンダーを備えたマガジンフレームがインサートされており、このフレームをケースから引き出してCO2 12g カートリッジの装填、交換を行う構造になっている。
CO2マガジンの心臓部とも言えるアウトプットバルブには、JASG の厳しい基準に適合する改造防止対策が施されており、ユーザーレベルでの分解が不可能なだけでなく、マガジンを高温で暖めても法定初速を超えることが無い安全設計となっている。
真冬のフルオート射撃はさすがに若干勢いが落ちるものの、セミオートであれば気温が10℃を下回る環境でも快調なブローバックが楽しめる上、BB弾の初速が極端に低下することも無く、CO2 をパワーソースとしたガスガンの力強さ、楽しさを実感させてくれる。
無論、ホップ調整機能も搭載しているため、BB弾の重さや外気温等に応じた最適な弾道を得ることが出来る。
ホップ調整ダイヤルはアウターバレル付け根部分の下側に設けられており、A2/A3 はハンドガードを外すことで、SD2/SD3 は、ハンドガードを前方にスライドさせることで、それぞれアクセス可能となる。
10月中旬の肌寒い環境において、適正なホップ回転を与えられたBB弾が CO2 ガスの圧力で撃ち出され、フラットな弾道を描いて飛んで行く様には、思わず感動を覚えてしまう。
バトンTrading がリリースする JASG 認定エアースポーツガン、SRC MP5 CO2GBB シリーズは、11月中旬には全国の有名小売店に並ぶ予定とのことだ。
購入後3ヶ月間の完全無料サポートがどこで買っても付いて来るというのだから、初めての長物 CO2 ガスガンとして入手するのにこれ以上最適なアイテムは無いだろう。
これまで、春夏以外は電動ガンに活躍の場を奪われていた感のある長物ガスガンだったが、CO2 というパワーソースを公式に得て、いよいよ季節を問わず迫力あるブローバックを楽しめる時代がやって来るようだ。
JASG に正式加盟して、ますます CO2GBB シリーズに力を入れて行くというバトンTrading には、今後も要注目である。
万全のサポート体制
本製品はJASG自主規約に基づく認定検査に合格した安心なエアースポーツガンであり、また、バトンTrading JASG 認定エアースポーツガンは、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という、万全のサポートが受けられるのだから、ユーザーが得られるメリットは計り知れない。
※購入後3ヶ月以上経過した場合でも、有料でのサポートが受けられる。
また、これまでの同社製 CO2GBB シリーズ同様、この製品も全国各地の有名小売店で販売される。なお、日本中どこで購入しても上述のサポートが受けられるが、同梱の保証書が無いと保証対象外になってしまうので、注意が必要だ。
スペック
全長 | 700mm(A2) 590mm ~ 730mm(A3) 785mm(SD2) 685mm ~ 920mm(SD3) |
重量 | 2,060g(A2) 2,635g(A3) 2,720g(SD2) 2,840g(SD3) |
銃身長 | 205mm(A2/A3/SD2/SD3) ※インナーバレル長 |
装弾数 | 6mmBB弾 35発 |
定価 | 53,800円(A2) 55,800円(A3) 59,800円(SD2) 61,800円(SD3) ※すべて税別 |
発売日 | 2020年10月下旬 |
初速 | 最高 84.5m/s 平均 81.8m/s 最低 79.1m/s ジュール 0.67J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温25度 |
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[ SRC ] MP5A2 CO2GBB
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