SRC MP-40 CO2GBB 【JASG認定】
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
2020年11月に台湾で開催されたトイガンショー「MOA」での製作発表からおよそ9ヶ月。リアルな外観と快調な作動のMP5 CO2GBBシリーズで好評を博している台湾SRC社とバトンTradingが共同開発を進めていた、MP-40 CO2GBBの日本版モデルが、この秋ついに発売される運びとなった。
本製品もJASG自主規約に基づく認定検査に合格した安全なエアースポーツガンであり、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という万全のサポートが約束されている。
※サポートには商品添付の保証書が必須となり、購入後3ヶ月以上経過した場合でも、有料でのサポートが受けられる。
ドイツが生んだ革新的傑作サブマシンガン
出典:https://de-academic.com/dic.nsf/dewiki/926877
「シュマイザー」という呼称で広く知られているMP-40(Maschinenpistole 40)は、1940年にドイツで開発されたサブマシンガンである。
スタイリッシュでありながら、どこか凶暴な雰囲気を感じさせるそのフォルムは、一度見たら忘れられない強烈な印象を放っており、数々の映画やアニメ、ゲーム等で「悪役の使う銃」として使用されて来た。
特に第二次世界大戦を題材にした映像作品には必ずと言って良いほど登場しているため、MP-40という名称を知らなくても、その姿を見たことがあるという方は少なくないだろう。
個人的には、1971年放映のルパン三世第1シーズン初期オープニングでの射撃シーンが今も脳裏に強く焼き付いて離れないが、当記事をお読みの皆様もそれぞれに印象深いシーンがあるのではないだろうか。
主に固定式の木製銃床を備えていたMP-18やMP-28といった旧来のサブマシンガンに対し、エルマ・ベルケ社が1938年に完成させたMP-38は、状況に応じて全長を短縮出来る世界初の鋼管製折りたたみ式ストックと、ベークライト製のフォアグリップを取り入れており、まさに革命的な新兵器だった。しかし、主要部品のほとんどがスチールからの削り出しという贅沢な設計は製造コストが嵩むため、軍備拡張のための大量生産には向いていなかった。
MP-38 出典:http://smallarms.ru/article?arms=mp3840
この問題点を克服すべく、プレス加工とスポット溶接で容易に製造出来るよう設計変更され、1940年から生産が始まったモデルがMP-40となるわけだが、製造工程をより簡略化するためのいくつかのマイナーチェンジが加えられており、100万挺を超える量産品の中に細かいバージョン違いが存在している。
尚、上述した「シュマイザー」という呼び名についてだが、ドイツの銃器技師であるユーゴ・シュマイザー氏は意外にもこの銃の開発に参加していないという。
もっとも、氏が開発したMP-36がMP-38/40の原型になっているのは一目瞭然なので、その呼称もあながち間違いとは言えないだろう。
MP-36 出典:https://en.topwar.ru/113972-pistolet-pulemet-erma-emp-36-za-polshaga-do-mp-38-40.html
スペック
全長 | 623mm ~ 833mm |
重量 | 2,955g(本体のみ) |
銃身長 | 255mm (インナーバレル長) |
装弾数 | 6mmBB弾 31発 |
価格 | 64,800円(税別) |
発売日 | 2021年10月初旬 |
動力源 | CO2カートリッジ式ガス |
初速 | 最高:86.4m/s 平均:82.0m/s 最低:77.7m/s ジュール:0.672J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温25度 |
実銃の機能美を忠実に再現した迫力のフォルム
上述した通り、実銃のMP-40にはいくつかのバージョン違いが存在するため、今回SRCがモデルアップした製品の具体的な製造年次は不明なのだが、マガジンハウジング側面のリブの有無等から、いわゆる後期型としての特徴を再現しているのは間違いの無いところだ。
その点を踏まえ、丁寧に再現されたディティールを今回も銃口周りから見て行こう。
2段に別れたローレット加工が施された凝った造形のマズルキャップはスチール製で、実銃通りフロントサイト基部から突き出したスプリングの先端で押さえられている。
マズルキャップを取り外すと14mm逆ネジ仕様のスレッドが現れ、各種マズルアダプターの装着が可能となっているが、ここは実銃に倣って長めのサプレッサーを付けてみたいところだ。
露軍に鹵獲されたのであろうサプレッサー付きMP-40の非常に珍しい写真
出典:https://www.reddit.com/r/BattlefieldV/comments/
筒状のフロントサイトガードもスチール製で、ダイキャスト製のフロントサイトをしっかり保護してくれる。
尚、美しいテーパーがかかったアウターバレルもダイキャスト製となっており、トイガンとしての安全性を確保している。
アウターバレル下面に設けられたL字状のパーツは、建物の窓や走行車両の銃眼から射撃を行う際に、銃身をひっかけて依託するためのもので、現代で言うバリケードストップのような役割を果たしているものだ。
これはMP-38で既に導入されていた装備なので、80年以上も昔の発案ということになるわけだが、その先進性の高さには驚くばかりだ。
アウターバレル基部の見るからに頑丈そうなバレルナットも、実銃の形状を忠実に再現。
本体左側に突き出したスリングスイベルはダイキャスト製だが、実用に充分耐える強度は確保されている。
チャンバー上にあたるレシーバーの上面には、ドイツ陸軍の国家鷲章をモチーフとしたSRCオリジナルのエンブレムが刻まれている。
鷲というよりは鳩といったイメージのデザインだが、平和を象徴するメッセージが込められているような楽しいアレンジだ。
後期型の特徴である両側面のリブが再現されたマガジンハウジング部分は、実銃同様プレス加工とスポット溶接で作られたスチール製となっており、強度、質感ともに文句のない仕上がりを見せつけてくれる。
左側面に見える円形のパーツはマガジンリリースボタンで、その大きさと表面の滑り止め加工が優れた操作性を実現している。
マガジンハウジングを下から覗くと、シリンダー底面のCO2ガス取入口が見て取れる。
本製品はオープンボルト式なので、さほど神経質では無いものの、定期的にシリコンオイルを塗布した方が良いだろう。
専用のCO2マガジンは、スチール製のマガジンケース内にシリンダーを備えたマガジンフレームが収められている、同社製MP5用CO2マガジンと同様の構造。
マガジンケースはスチール製で、簡略化されてはいるものの、実銃マガジンの雰囲気が上手く再現されている。
装弾数については、実銃マガジンと同じ32発の装填が可能だが、マガジンと銃本体への負担を軽減するため、フルロード状態から1発減らして運用したいところだ。
マガジンリップはオーソドックスな形状で、付属のBBローダーを始め、市販のローダーでもスムーズな給弾が可能。
マガジン内のBB弾を撃ち尽くすと、上がりきったマガジンフォロワーにボルトが引っかかって止まり、弾がなくなったことを教えてくれる仕組みだ。
CO2 12gカートリッジのセット方法もMP5用CO2マガジンに準じたもので、マガジンケースから取り出したマガジンフレーム付属のシリンダーにCO2 12gカートリッジを先端側から挿入し、付属の6mm六角棒レンチで底部の蓋を一気に締め込む方式となっている。
この際、マガジンフレームの構造から、六角棒レンチの短辺側で回すことになるため、一気に締め込むには多少の慣れが必要だろう。
尚、MP-40専用CO2マガジンは、7,980円(税別)にて本体と同時発売される予定だ。
ボルトを内蔵するアッパーレシーバーもマガジンハウジング同様、プレス加工とスポット溶接で作られたスチール製となっており、実銃そのままの質感を再現。
セーフティノッチ前方の「S」の刻印も入っているが、構造上、ノッチに引っ掛かるところまでボルトがストロークしないため、無理な操作をしないよう注意したい。
エッジの立った四角いリアサイトベースもスチール製で、2段階切替式のリアサイトをしっかりと支えている。
実銃の話ではあるが、後ろ側のブレードが起きた状態は200mを、倒した状態は100mを、それぞれ狙うよう設定されている。
簡易的な作りではあるが、ストックを延ばしてしっかり構えれば良好なサイトピクチャーが得られるので、実用性に問題は無いだろう。
ボルトが前進位置にある状態でコッキングハンドルを本体側に押し込むことで、レシーバーの切り欠きでロックがかかる構造になっており、コッキングを行う際はコッキングハンドルを一段引き出してロック解除する必要がある。
これはボルトが前進した状態でマガジンを挿入している際、銃を誤って取り落したり、銃を持って車両等から飛び降りたりした際に、慣性で後退したボルトがマガジンから弾薬を拾ってチャンバーに送り込み、激発してしまうという、オープンボルト式サブマシンガン特有の暴発事故を防ぐために導入された安全機構を再現したものだ。
SRCのMP-40もオープンボルト式である以上、実銃と同じ状況での暴発は避けられないので、この安全機構を積極的に活用したいところだ。
CO2ガスガンとしての構造上、ボルトのストロークが実銃より短くなっているのは上述した通りだが、具体的には画像の位置でボルトがコッキング状態にセットされる。
この位置から12mmほどコッキングハンドルを引くことは出来るが、先にも述べたように、無理な操作は禁物である。
尚、コッキングハンドルはボルトに固定されており、射撃の際には勢い良く前後に動くため、構え方には注意が必要だ。
実銃ではベークライト製のロアレシーバーカバーは流石にABS樹脂製となっているが、ブラウンの成型色でそれらしい雰囲気を演出している。
コッキング状態でエジェクションポート内を覗くと、チャンバー外周を回転するロータリー式のホップアジャスターが確認出来る。
後方から見て反時計回りでホップのかかりが強く、時計回りで弱くなる仕組みだが、ホップを強くかけすぎると弾詰まりによるトラブルを引き起こす可能性があるため、実際にBB弾を射出し、弾道を確認しながらホップ調整を行うよう注意していただきたい。
実銃の話ではあるが、MP-40はバレルジャケットの類を装備していないため、射撃時に加熱する銃身を素手で保持することが出来ず、さりとてマガジンを掴めば給弾不良を引き起こしてしまう。ロアーレシーバーカバーの先端部の滑り止め用モールドが入った、フォアグリップに当たるこの部分を左手で掴んで射撃を行うのが、MP-40/38の正しい扱い方となっているのだ。
本製品は銃身が加熱するようなことは無いが、やはりマガジンを掴んでの射撃はトラブルに直結する可能性があるので、実銃同様に扱うのが正解だろう。
フォアグリップの下部中央に設けられた円形の金具は、上下レシーバーの結合を解くためのリリースノブで、ストックを展開した状態でこのノブを下(画像中赤い矢印の方向)に10mmほど引っ張ると、上下レシーバーが前後に分離する。
この際、銃口を下に向けた状態で不用意にリリースノブを引くと、銃身周りを含むアッパーレシーバーが何の抵抗もなく落下するので、メンテナンス以外では触らないよう注意しておきたい。
分解状態の画像で中央に写っている特殊警棒のような形状のパーツは、2段階に伸縮するスチールパイプの中にリコイルスプリングを内蔵した、MP-40特有のチューブ式リコイルダンパーを再現したもので、この製品に込められたSRC開発陣の並々ならぬ拘りが伝わって来る部分だ。
同じドイツ製のピストルであるルガーP-08を思わせる優雅な形状とアングルを持つグリップも、MP-40の大きな魅力のひとつだろう。
グリップパネルは樹脂製の別パーツとなっており、表面のモールドも後期型の特徴が正確に再現されている。
尚、実銃MP-40のベークライト製パーツは、製造時期や製造メーカーによって色合いにかなりの違いがあり、何色が正解とは一概に言えない部分がある。
腕に覚えのある方は、プラモデル用塗料等でそれらしい塗装を施してみてはいかがだろうか。
スッキリとしたオーバル型のトリガーガードも、プレス加工によって作られた後期型の形状をしっかりトレースしているが、トリガー自体は実物よりやや短く、付け根部分もSRC独自の形状になっている。
おそらくシアー周りの構造の違いによるものと思われるが、ここはやむを得ないところだろう。
もうひとつのオリジナル要素として、ロアーレシーバー下面、トリガーガードの前方部分に小さいセーフティスイッチが設けられている。
上述したように、コッキングしたボルトをセーフティノッチに引っかけることが出来ないため、コッキング状態での物理的安全装置が必要となるわけだが、目立ちにくい部分に控えめなスイッチを設けている辺り、SRC技術陣の良心が感じられるところだ。
スイッチの動作は、グリップ側にスライドさせるとセーフティオン、銃口側にスライドさせるとセーフティオフとなる。
アッパーレシーバーを支えるように伸びたダイキャスト製のグリップフレーム後部にはスリングスイベルが設けられていると同時に、折りたたみストックの軸が貫通しており、ストック基部中央のボタンを押し込むことでロックが解除される仕組みになっている。
展開、収納は画像の通り半回転する形で行われるが、その際バットプレートに当たる部分を、展開時は引き起こし、収納時は折りたたむ必要がある。
バットプレートに当たる部分はスチールのプレス加工品だが、両側を支えるパイプ部分はダイキャスト製で、内側に軽量化と強度アップのための肉抜きが施されている。
ストックの軸を支えているグリップフレームがダイキャスト製なので、長く使用するうちにガタつきが生じるかもしれないが、その両方が鋼鉄で作られている実銃のMP-40も長期使用によるストックのガタつきが問題視され、木製ストックを備えたMP-41が作られたというのだから、トイガンとしてはやむを得ないところだろう。
オープンボルト式ならではのダイナミックな撃ちごたえ
今回のレビューは試作品を使用しているため、あくまで参考データではあるが、弊社の屋内ロングレンジで実射テストを行ったところ、0.2g弾使用時の適正ホップ状態で、30m先のEタイプシルエットターゲット(ハイパー道楽様寄贈)にワンマガジン31発を全弾叩き込めるだけの弾道安定性が確認出来た。
ただし、オープンボルト式CO2GBBが生み出すリコイルがあまりに強烈なため、ストックを展開して肩付けし、フォアグリップをしっかり保持していないと、弾道が乱れてまともに当てることが出来なかったことを付け加えておこう。
また、射撃モードは実銃通りフルオートのみとなっているが、発射サイクルが毎秒8発程度なので、指切りでのコントロールが楽に行える。
CO2 12gカートリッジ1本あたりの発射可能弾数は60~70発程度だが、ワンマガジンを一気に撃つとさすがに気化効率が低下するため、後半で勢いが衰えてしまう。
上述の通り指切りでのバーストコントロールは簡単なので、数発ずつに分けて撃つようにすれば、最後まで快調な動作が楽しめるだろう。
尚、マガジンの有無に関わらず、コッキング状態のボルトを前進させる際、無造作にトリガーを引くと銃を痛めてしまうため、コッキングハンドルを押さえながらトリガーを引いて、ボルトをゆっくり戻すよう心がけたい。
筋金入りのオールドファンが待ちに待った新製品、SRC MP-40 CO2GBB。
大迫力のフルオート射撃が満喫出来る快調な動作は勿論のこと、細かいディティールから内部構造までもリアルに再現された完成度の高さには、多くのマニアが狂喜することだろう。
武器庫、またはコレクションルームに迎え入れる準備を整えて、10月初旬の発売を楽しみにお待ちいただきたい。
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